■■エネルギーと代謝
・代謝:生体内での化学反応。同化と異化に分けられる。
■■同化:無機物から有機物を『合成する』反応。
エネルギーを吸収する。例:光合成(グルコースC₆H₁₂O₆の合成反応)
二酸化炭素+水+光のエネルギー →グルコース+酸素+水
6CO₂ +H₂O →C₆H₁₂O₆ + O₂ + 6H₂O
➡化学反応式
6CO₂ +12H₂O →C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂O
<化学反応式の書き方>
Ⅰ.左辺に反応物、右辺に生成物を書き、左辺と右辺を矢印→で結ぶ。
Ⅱ.左辺の原子数と右辺の原子数が等しくなるように、化学式の前に係数をつける。但し、係数は最も簡単な整数比になるようにし(分数は不可)、係数1は省略する。
<化学反応式の作成手順>
①左辺に反応物、右辺に生成物を書き、左辺と右辺を矢印→で結ぶ。
6CO₂ +H₂O →C₆H₁₂O₆ + O₂ + 6H₂O
②反応前にある原子数と反応後にある原子数を数えて、表を作成。
③基準となる物資を決め、その物資の係数を1と置く。(登場する物質の内、一番複雑なもの)
➡C₆H₁₂O₆の係数を1とする。
C₆H₁₂O₆の係数を1と決めたので、上記赤丸部の数値を固定する。
④右辺のH原子の数(12+12=24)を揃える為に、左辺のH₂O分子の係数を12倍にする。
⑤左辺のO原子の数(12+12=24)を揃える為に、右辺のO₂分子を6倍にする。
◆光合成の4段階反応(明反応:1~3、暗反応:4)
反応1(明反応):光エネルギーを獲得⇒クロロフィル(光合成色素)の活性化⇒電子(e⁻)放出
反応2(明反応):水を分解して酸素を発生。電子伝達系(PSⅡ、PSⅠ)を介してNADPHを生成。
・Mn₄CaO₅クラスター
Mn₄CaO₅クラスターは『水分子』から電子を奪い取り、2分子の水から4つの電子を奪い取られると、水が分解され、1つの酸素分子を生じる。
水の酸化(酸素の発生)
反応式 2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻
・水の分解とNADPH生成を化学式で表すと次のようになる。
2H₂O →4H⁺ +4e⁻+O₂
NADP⁺+H⁺+2e⁻→NADPH
尚、炭素固定反応である暗反応(6CO₂)でグルコース(C₆H₁₂O₆)1分子の生成を想定すると、この過程でH₂Oが12分子消費され、O₂が6分子生成される。(下記()内の反応式)
(12H₂O→24H⁺ +24e⁻+6O₂)
(注1:グルコース(C₆H₁₂O₆)1分子をつくる為に24個の電子を移動させている)
(12NADP⁺+12H⁺+24e⁻→12NADPH)
(注2:NADPHは、NADP⁺に一つの陽子(水素イオン:H⁺)と二つの電子(2e⁻)がくっついたものである)
上記二つの式をまとめると。次の化学式になる。
H₂O+NADP⁺→NADPH+H⁺+1/2 O₂
12H₂O+12NADP⁺→12NADPH+12H⁺+6O₂
反応3(明反応):ATP合成酵素によって、ATPを合成。
チラコイド内腔では、2分子の水分解で4つ増えたプロトン(4H⁺)と更にシトクロムb₆/fから2個のプロトン(2H⁺)が送り込まれ、水素イオン濃度が高くなり、濃度勾配が発生する。
また、ATP合成酵素が葉緑体ではチラコイド膜に存在しており、水素イオン(H⁺)が濃度勾配に従ってATP合成酵素を通って移動する時にATPが合成される。
・光リン酸化
ADP+Pi(リン酸)→ATP
光合成で生成されるNADPHとATPの生成比率は2対3になる。
12H₂O+12NADP⁺→12NADPH+12H⁺+6O₂より
18ATPが生成される。
まとめると
12H₂O+12NADP⁺→12NADPH+12H⁺+6O₂+18ATP
反応4(暗反応):ATP等(NADPHを含む)のエネルギーを用いて二酸化炭素からグルコース(C₆H₁₂O₆)生成。
明反応で生成したNADPHとATPを利用し、二酸化炭素を還元して糖質(C₆H₁₂O₆:グルコース)を合成する反応である。この合成は『カルビン回路』という代謝経路で行われる。
暗反応はストロマに存在するカルビン回路を形成する『酵素群』によって反応が行われる
カルビン回路は大きく分けて、次の3ステップから成る。
①炭酸ガス固定→②還元反応→③リブロース1,5-ビスリン酸再生
①炭酸ガス固定
CO₂が5炭糖(5-C=リブロース1,5-ビスリン酸:Ribulose bisphosphate(RuBP))に取り込まれる。
Rubisco(リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)に触媒され、6炭糖(6-C)になる。
6炭糖(6-C)は不安定であるため速やかに2分子の3炭糖(3-ホスホグリセリン酸:PAG)になる。
【糖の炭素数】D-リブロース-1,5-ビスリン酸 (RuBP, C5) + CO2 → 2分子の3-ホスホグリセリン酸 (C3×2)
【光合成の反応式:同時6ラインのイメージ前提で】6CO₂ +12H₂O →C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂O より
6molのCO₂を使用する事から同時6ラインが同期しているイメージで
6-リブロース-1,5-ビスリン酸 (6RuBP, C5) + 6CO2 →12分子の3-ホスホグリセリン酸 (C3×12)
12分子の3-ホスホグリセリン酸 (12PGA:C3×12)を生成。
②還元過程(反応)
明反応で生成されたATPを用いてPGA(3-ホスホグリセリン酸)が1,3-ビスホスホグリセリン酸に変換される。(PGAはATPを消費し、リン酸を1つ増やした1,3-ビスホスホグリセリン酸になる)
【糖の炭素数】3-ホスホグリセリン酸 (C3) + ATP → 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + ADP
【光合成の反応式:同時6ラインのイメージ前提で】
12PGA+12ATP→12 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + 12ADP+12Pi
続いてこれがグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼで明反応で生成されたNADPHが運んできた水素イオン(H⁺)を二酸化炭素に固定する。
運んできた水素イオン(H⁺)と電子(2e⁻)がNADPHから剥ぎ取られるので、NADPHは元のNADP⁺に戻り、
注3:水素を化学反応させる事を『還元』という。
【糖の炭素数】1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + NADPH → グリセルアルデヒド-3-リン酸 (C3) + NADP⁺+ Pi
【光合成の反応式:同時6ラインのイメージ前提で】
12 1,3-ビスホスホグリセリン酸 (C3) + 12NADPH → 12グリセルアルデヒド-3-リン酸 (C3) +12NADP⁺+12Pi
12グリセルアルデヒド3-リン酸(12GAP、別名12G3P)が生成される。
注:上図のモデルは3CO₂から6ATP&3ATP、6NADPHで計算している。
6CO₂で計算すると倍の12ATP&6ATP、12NADPHになる。
③リブロース1,5-ビスリン酸(RUBP)再生過程
12C₃(12GPA=12G3P)から2C₃(2GAP=2G3P)でC₆H₁₂O₆が生成され、残り10C₃(10GPA=10G3P)0=30carbonsは以下の反応が行われる。
具体的には、3、4、6、7炭糖間で一連の縮合・転移反応が行われて5炭糖が生成される。
最後に5炭糖であるリブロース5-リン酸(Ru5P)になる。
さらに Ru5P は ATP によりリン酸を 1 つ増やし
ホスホリブロキナーゼの触媒でリン酸が付加されてCO₂の受けてであるリブロース1,5-ビスリン酸になる。
【糖の炭素数】リブロース5-リン酸(Ru5P) + ATP →リブロース-1,5-ビスリン酸 (6RuBP, C5) + ADP+ Pi
【光合成の反応式:同時6ラインのイメージ前提で】
6リブロース5-リン酸(Ru5P) + 6ATP →6リブロース-1,5-ビスリン酸 (6RuBP, C5) + 6ADP+ 6Pi
これで再生されカルビンサイクルが完結する。
◆◆カルビン回路のまとめの化学式
6CO2 + 12NADPH + 12H+ + 18ATP
→ C6H12O6 + 6H2O + 12NADP+ + 18ADP + 18Pi(リン酸)
注4:明反応で生成された18ATPはカルビン回路の②還元過程(反応)で12ATPが消費され、③リブロース1,5-ビスリン酸(RUBP)再生過程で6ATPが消費される。
■■異化:有機物を無機物へ『分解する』反応。
エネルギーを放出する。例:呼吸(グルコースC₆H₁₂O₆の分解反応)
グルコース+酸素+水→二酸化炭素+水+エネルギー(最大38ATP)
➡化学反応式
C₆H₁₂O₆ + 6O₂ +6H₂O →6CO₂ +12H₂O +38ATP
この式を見ると、光合成の生成物が呼吸の反応物になっていて、呼吸の生成物は光合成の反応物なっている。
注:光合成 6CO₂ +12H₂O →C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂O
よって光合成と呼吸がバランスよく行われている限り、物資は円滑に循環する。
◆仕組み:
呼吸の過程は、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系に分けられ、各過程で様々な酵素が働き、ATPが合成される。
酵素はそれぞれ決まった物資としか反応しない。
①解糖系
・呼吸の場:細胞質基質
・1分子のグルコース(C₆H₁₂O₆)を2分子のピルビン酸(C₃H₄O₃)に分解(異化)し、2ATPと2NADH₂を生成。
この過程は何種類もの酵素によって進められる反応で、解糖系と呼ぼれる。
・異化で放出されたエネルギーの一部がATPとして取り出される。
・脱水素酵素によってグルコースから水素が奪われ、補酵素のNADに渡される。
②クエン酸回路(TCA回路)
・呼吸の場:ミトコンドリア基質(マトリックス)
・2分子のピルビン酸が分解し、2ATP、6CO₂、8NADH₂、2FADH₂を生成。
・脱水素酵素、脱炭酸酵素を使用
③電子伝達系
・呼吸の場:ミトコンドリア内膜
・ATP合成酵素によるATP合成。
⇒解糖系とクエン酸回路で生じた高いエネルギーをもつ電子が、ミトコンドリアのクリステの内膜を通るときに34ATPが生成される。
⇒10NADH₂由来:30ADP+30Pi→30ATP
⇒2FADH₂由来:4ADP+4Pi→4ATP
・電子を最終的に受け入れる物資:O₂(酸素)⇒2H+2e+1/2O₂→H₂O
最終的に電子は水素原子に戻り、酸素(O₂)と結合して水になる。
◆ATP(アデノシン三リン酸)
糖(リボース)+塩基(アデニン)+リン酸×3 から成る物資。
『エネルギーの通貨』として、代謝のエネルギーのやり取りを行う物質。
高エネルギーリン酸結合を切断し、ADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分かれる際にエネルギーを放出する。