⑤-4-2-9.MRI画像検査~DWIBS(背景抑制広範囲拡散強調画像)~

DWIBS(ドゥイブス)と従来のMRI、PET-CTとの違いとは

・DWIBS(ドゥイブス)はMRI装置を用いた検査です。

⇒強い磁場を発する装置に入り、身体へ電磁波を与えることで体内から発生する微弱な信号を読み取って画像化し、異常の有無を観察します。

DWIBS(ドゥイブス)では細胞密度が高く水分子の動きが悪くなっている部分が画像上で目立つように表示されます

<DWIBS画像例>

一般的に「MRI検査」と呼ばれる検査とDWIBS(ドゥイブス)の違いは、大きく撮像範囲の違いと考えて問題ありません。頭部MRI、胸部MRIといったように部分的な検査を行うのが従来のMRI検査、より高性能なMRI装置と高度な撮像方法によって、がんの検索が広範囲で可能となったのがDWIBS(ドゥイブス)です。

全身のがんを調べる検査としてDWIBS(ドゥイブス)と比較されやすいのが、PET-CTです。PET-CTは、がん細胞のような代謝に異常のある部分を目立たせた画像と、全身の断面画像を組み合わせてがんの発見精度をより高める画像検査です*2。ブドウ糖に似た性質を持つ「18F-FDG(フルデオキシグルコース)」という放射性薬剤を体内へ投与し、FDGが多く取り込まれた部位(糖代謝が多い部位)ほど画像上で強く光るように表示されます。PET画像に3Dのように立体的なCT画像を重ね合わせることで、がんをより見つけやすくしています。FDGは尿として腎臓から膀胱へ排出されるため、尿路系(腎臓、尿路、膀胱)は異常がなくても光って見えることが多いなど、適切な観察が難しい部位もあるほか*3、食道や胃、大腸、肝臓などの早期がんの発見が難しいといったデメリットもあります。

ドゥイブス(DWIBS)とPET-CTの比較

※1:経口造影剤を使用する医療施設の場合は当日食事制限あり
※2:腹部の臓器(膵管、胆管など)を詳しく調べる検査(MRCP)も同時に行う場合は経口造影剤を使用することがある

PET-CTは検査前に最低4時間の絶食が必要とされていますが*5DWIBS(ドゥイブス)は基本的に食事制限の必要はありません。ただし、医療施設によっては腹部の検査の精度向上を目的として、数時間前からの絶食を指示している場合もあります

DWIBS(ドゥイブス)のメリット、デメリット

全身のがん検査としてPET-CTと比較した場合のDWIBS(ドゥイブス)のメリットは、医療被曝がなく費用や時間も抑えられることなどから受診者にとって負担が少ない点です。

DWIBS(ドゥイブス)のメリット

  • PET-CTと同等の精度
  • 費用がPET-CTより安価
  • 薬剤投与(注射)がない
  • 放射線被曝がない
  • 検査時間が比較的短く30分〜1時間程度
  • 検査前の食事制限がない(医療施設による)
  • 糖尿病や腎機能が悪い方でも検査可能
  • 被曝のリスクがないので短い期間でも繰り返し受けることができる
  • PET-CTが苦手とする尿路系(腎臓、尿管、膀胱)がんの発見に適している

一方、DWIBS(ドゥイブス)のデメリットとして、MRIの注意事項に準じた制限がある、受診できる医療施設が限られているなどが挙げられます。

DWIBS(ドゥイブス)のデメリット

  • MRI装置を用いるため、ペースメーカーなどの体内金属があると検査不可の場合がある
  • 受けられる医療施設が限られている
  • 強い磁場の影響で、人によってはめまいなどの不快感が生じる場合がある
  • DWIBS(ドゥイブス)で発見された病変がすべてがんというわけではない(炎症なども検出するため、他の検査結果と総合してがんか否かを判断する必要あり)

DWIBS(ドゥイブス)のがん発見率は? PET-CTどちらもすべてのがんを発見できるわけではない

DWIBS(ドゥイブス)とPET-CTは、どちらも一度にほぼ全身のがんの検索ができますが、先述の比較表にあるように、それぞれ検査によって見つかりやすいがんと見つかりにくいがんがあります

DWIBS(ドゥイブス)は、PET-CTが苦手とする尿路系(前立腺、膀胱、尿管など)のがんや、子宮がんや卵巣がんなどの検出に有用とされています*4,*6

一方で、肺や胃などのがんは見つけにくいとされています。また、正常なリンパ節や炎症している部位などがん以外の異常も検出するため*6、異常が見られた場合はがんかどうかを詳しく調べる検査が必要になります。

DWIBS(ドゥイブス)は比較的新しい検査法であるため、がん発見率など精度についてはデータを蓄積している段階ですが、DWIBS(ドゥイブス)とPET−CTを比較した場合、がんに対する「診断能力に大きな差異はない可能性が高い」とする報告があります*7。また、子宮体がんや卵巣がんなどの転移を調べる検査としても、造影剤を使用したCTと比較し遜色ない結果が得られたとの報告もあり*6、有用性が評価されてきています。

医療施設の設備や体制等が整いDWIBS(ドゥイブス)が一般により広まれば、がん検診としての有用性が期待されますが、前述のようにすべてのがんが見つかるわけないため、DWIBS(ドゥイブス)さえ受けていれば安心とは言い切れません。自治体が実施するがん検診や企業の健康診断に付帯するがん検診も欠かさずに受けましょう。また、肺がんは胸部CT、胃がん、大腸がんは内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)検査といったように、MRI以外で部位ごとに適した検査を組み合わせることが、がんの発見精度の向上につながります。

DWIBS(ドゥイブス)の費用

がん検診としてのDWIBS(ドゥイブス)の費用相場は5~8万円医療施設や検査コースによって異なる

人間ドックなど、自由診療でDWIBS(ドゥイブス)を受診する場合の費用相場は5~8万円前後です。PET-CTの費用相場(10万円前後)と比べると安価に設定されている場合が多いです。乳がんのみを対象とした乳腺DWIBS(ドゥイブス)コースの費用相場は2~3万円前後です。

DWIBS(ドゥイブス)の費用は、医療施設によって異なります。その差はおもに、下記の事由が関連していると考えられます。

  • DWIBS(ドゥイブス)に加えて数種類の撮像法により検査を行っている
  • 最新のMRI装置を導入している
  • 画質向上に力を入れている
  • 専門の読影医が遠隔診断を行っている

費用が高くなる分、検査の質を向上させる工夫を行っている場合が多いです。DWIBS(ドゥイブス)を受ける際の医療施設の選び方については「DWIBS(ドゥイブス)医療施設を選ぶ4つのポイント」をご参照ください。

🔶DWIBS(ドゥイブス)は保険適用で受けられる?

人間ドックでDWIBS(ドゥイブス)を受ける場合は、原則保険適用にならず全額自己負担です。これは人間ドックが健康診断を目的としており、けがや病気の診断・治療ではないからです。人間ドックの結果で精密検査が必要になった場合、その後の検査費用等は保険適用となります。

なお、前立腺がんの骨転移を調べる目的でDWIBS(ドゥイブス)を受ける場合は保険適用になります*8

DWIBS(ドゥイブス)の医療施設を選ぶ4つのポイント

DWIBS(ドゥイブス)に力を入れている医療施設であるか

DWIBS(ドゥイブス)に力を入れている医療施設を見つける方法のひとつとして、「ドゥイブス・サーチ」の登録施設かどうかが挙げられます。ドゥイブス・サーチとはDWIBS(ドゥイブス)法の開発者である高原太郎医師がMRIによる無痛乳がん検診を普及させるために立ち上げた医療サイトです*9

ドゥイブス・サーチでは、「無痛MRI乳がん検診が実施できる全国の医療機関として、全国50ヶ所以上の医療施設が登録されています(2024年1月現在)。登録されているすべての医療施設は、一定の基準を満たしたMRI装置を使用していることや、高原医師本人による画像撮像法などの指導を受けていることに加えて、専門の読影医による遠隔読影が行われています。

登録医療施設のなかには全身DWIBS(ドゥイブス)に対応した医療施設もあります。詳しくはドゥイブス・サーチ(外部サイト)にて確認してください。

MRI画像の画質向上に力を入れているかどうか

DWIBS(ドゥイブス)はMRI撮像法の一種であり、画質は装置の種類や撮像条件によって異なります。日々画質の向上に努めている医療施設を選ぶ目安となるのが、日本医学放射線学会による「画像診断管理認証施設」かどうかです。

画像診断管理認証施設とは、日本医学放射線学会の画像診断管理認証制度によって認定された施設です*10。認証事項は被爆管理、MRI安全管理、全身MRIなど5つに分かれており、なかでも「全身MRIに関する事項」ではDWIBS(ドゥイブス)の基本であるDWI(拡散強調画像)を含む複数の撮像法が指針に基づいて行われていることなどが条件となっています(前立腺がんの骨転移探索を目的とする全身MRIのみが対象)。

経験豊富な医師が読影しているかどうか

DWIBS(ドゥイブス)は比較的新しい撮像法であることもあり、画像を読影する医師にはより専門的で高度な知識が必要です。熟練した医師が読影しているかどうか調べるときは、日本医学放射線学会認定の「放射線科専門医」が在籍しているかどうかチェックしましょう。

放射線科専門医は経験年数・研修・試験などいくつかの厳しい条件を満たした医師のみが持つ資格です*11。そのためDWIBS(ドゥイブス)画像についても専門知識に基づいた診断を行うことができます

出典:https://www.mrso.jp/mikata/862/

■造影剤なしで がん発見!がんが「光る」MRI拡散強調画像(DWI)の力

出典:https://www.youtube.com/watch?v=uZ_MrfLwHRw&t=39s

出典:https://kanamri.umin.ne.jp/43_1-2_PDF.pdf

拡散とは

<参考情報>

・金融工学で馴染みのある『ブラウン運動』

<参考情報>

・SN比

信号(シグナル)と雑音(ノイズ)の比を指し、

信号対雑音比(signal-to-noise ratio)とも呼ばれます。

※信号と雑音の差が大きいほど、信号の品質や機材の性能がよいことを意味します。

また、SN比が高いほど、伝送における雑音の影響が小さく、情報伝達が良いことを意味します。

<参考情報>

出典:https://www.tokushima-med.jrc.or.jp/file/attachment/693.pdf