②暗反応(炭素固定反応)

明反応で生成されたNADPHやATPを用いて、二酸化炭素(CO₂)を還元し糖の有機化合物(C₆H₁₂O₆)を合成する反応である。

出典:高校とってもやさい生物
著者:真柳仁 出版社:株式会社 旺文社

反応場所は葉緑体の中のストロマという部分で起こり、暗反応(炭素固定反応)と呼ばれ、反応プロセスはカルビン回路(カルビン・ベンソン回路)という名前が付いている。

注:以前は光とは無関係に起こる反応から『暗反応』と呼ばれていた

この反応は二酸化炭素(CO₂)から直接糖等の有機化合物(C₆H₁₂O₆)が生成されるのではなく、いくつかの酵素反応で構成される複雑な回路反応過程で生成されている。

カルビン回路の入り口は、二酸化炭素(CO₂)がルビスコ(Rubisco)という酵素により、炭素が3つの炭素化合物になる反応から始まり、以下3つのステップを経る。

 尚、明反応で生成されたNADPHやATPは②と③のステップにて利用される。

出典:光合成とは何か―生命システムを支える力 
園池 公毅 (著) ブルーバックス新書 

①ルビスコによるCO₂固定⇒ホスホグリセリン酸(PGA)生成

②還元反応⇒生成されたPGAはATP&NADPH+H⁺と還元反応⇒グリセルアルデヒドリン酸(GAP)生成

③RuBP(リブロース1,5-ビスリン酸)再生経路⇒グルコース(C₆H₁₂O₆)の生成とリブロース‐5‐リン酸 (Ru5P)生成⇒Ru5P は ATP によりリン酸を 1 つ増やし RuBP を生成

出典:理科年表 生物部 光合成の炭酸固定反応(カルビン回路)
自然科学研究機構 国立天文台編

①ルビスコによるCO₂固定

CO₂はC₅(炭素が5個ある化合物)化合物リブロース二リン酸(RuBP)と結合し、C₆(炭素が6個ある化合物)化合物になり、直ぐに分解して、2分子のC₃(炭素が3個ある化合物)化合物のホスホグリセリン酸(PGA)になる。

出演:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
https://www.youtube.com/watch?v=0UzMaoaXKaM

CO₂(二酸化炭素)を取り込むときに、リブロースニリン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)という酵素を必要とする。

化学反応式:

C₅(RuBP)+CO₂→2C₃(PGA)

②還元反応

ホスホグリセリン酸(PGA)は、光リン酸化で出来たATPでリン酸化され、光化学系Ⅰで出来たNADPH+H⁺と反応して(還元されて)、C₃化合物のグリセルアルデヒドリン酸(GAP)と水に変化する。

出演:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
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化学反応式:

2C₃(PGA)+2NADPH+2H⁺→H₂O+2C₃(GAP)

注1:PGAはATPを消費しリン酸を1つ増やしたビスPAGになる。

注2:ビスPAGはNADPH+H⁺により還元されてグリセルアルデヒド‐3‐リン酸(GAP)を生じる。

注3:これらは総称してトリオース (3 炭糖)リン酸(TP と略称)と呼ばれる。

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出典:理科年表 生物部 光合成の炭酸固定反応(カルビン回路)
自然科学研究機構 国立天文台編

③RuBP(リブロース1,5-ビスリン酸)再生経路

GAPが、グルコース(C₆H₁₂O₆)を生成しながら残りはRuBPに戻る。

出演:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
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化学反応式:

2C₃(GAP)+ATP→C₆H₁₂O₆+C₅(RuBP)+ADP

注4:TP は4 つから 7 つよりなる複雑な中間物質を経てリブロース‐5‐リン酸 (Ru5P)になる。

注5:さらに Ru5P は ATP によりリン酸を 1 つ増やし RuBP を生成する。

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出典:理科年表 生物部 光合成の炭酸固定反応(カルビン回路)
自然科学研究機構 国立天文台編

カルビン回路が『持続可能』になる仕掛け

C₅(炭素が5個の化合物)リブロース二リン酸(RuBP)がカルビン回路の起点になり、最終的にはC₆H₁₂O₆の有機化合物(炭素が6個の化合物)を生成するが、このプロセスを持続可能になる為の仕掛けが必要になる。

出典:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
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仕掛けは、6C₅(RuBP)と6CO₂及び6Rubiscoによって持続性が実現できる。(イメージとしては1ライン生産を同時6ライン生産にする事で可能になる

①ルビスコによるCO₂固定:6C₅(RuBP)+6CO₂→12C₃(PGA)

②還元反応:12C₃(PGA)+12ATP+12NADPH+12H⁺→6H₂O+12C₃(GAP)12ADP+12Pi(リン酸)+2NADP

③RuBP(リブロース1,5-ビスリン酸)再生経路:12C₃(GAP)+6ATP→C₆H₁₂O₆+6C₅(RuBP)+6ADP+6Pi(リン酸)

出典:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
https://www.youtube.com/watch?v=0UzMaoaXKaM

6GAP(36個の炭素)からグルコース(C₆H₁₂O₆)を生成し、残り30個の炭素は、6C₅(炭素が5個ある化合物)化合物リブロース二リン酸(RuBP)に戻り、カルビン回路を持続可能にせしめる。

出典:自然における最小の工場:カルビン回路 ― キャシー・シミントン
https://www.youtube.com/watch?v=0UzMaoaXKaM
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https://www.youtube.com/watch?v=0UzMaoaXKaM
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カルビン回路全体の反応式

6CO₂+12NADPH+12H⁺+18ATP→C₆H₁₂O₆+6H₂O+12NADP⁺+18ADP+18Pi(リン酸)

出典:4章 エネルギーの流れと代謝

カルビン・ベンソン回路は

CO₂という無機物質を還元して炭水化物に同化する系なので外からエネルギーが供給されることが必要である。

このエネルギー源として NADPH や ATP が必要で葉緑体のチラコイド膜系で行われる明反応から供給される。

結局 1 分子の CO2 を固定するために、 2 分子の NADPH と 3 分子の ATP が必要である。

尚、光合成の反応をまとめると

12H₂O+6CO₂+光エネルギー →C₆H₁₂O₆+6O₂+6H₂O

反応系の12H₂Oは光化学系Ⅱ(PSⅡ)において水素イオン(H⁺)と電子(e⁻)を作り出し、酸素を気孔を通じて排出するのに利用され、

生成系の6H₂Oはカルビン・ベンソン回路(②還元反応)でPGAがGAPに還元される時に生成する水である。

出典:4章 エネルギーの流れと代謝