⑤-4-2-2-1.小線源治療~岡本先生に学ぶ(転記)~

■ヨウ素125線源の永久挿入による前立腺がん小線源療法

転記出典先:https://keisei-okamoto.net/

■『ごあいさつ』より一部抜粋

これまで、一人でも多くの患者さんを救い、幸せにしたいとの使命をもって長い間活動をしてきました。

前立腺がん治療に長く関わってきた立場から正直な気持ちをお伝えするならば、

確かに前立腺がんの治療法はご自身で決めるものですが、

そのための十分な情報が医療機関から提供がされている、とは言えないのが現状であり、

最初のスタートの時点から多くの患者さんが迷いと苦しみに放り出されている現状があるということを間近で、ずっとみてまいりました。

転移のない段階で前立腺がんと診断された患者さんやそのご家族の最大の希望は、

できる限り再発のない治療を受けたい

副作用なく確実に完治したい” だと思います。

つまり患者さんやそのご家族は、

なんとしても初回治療で再発を起こすことなく完治したい!

と願っておられるはずです。

前立腺癌治療に

敗者復活戦はありません

私は、前職滋賀医科大学において前立腺がん小線源治療に特化した小線源治療学講座の特任教授として多くの患者さんに小線源治療を行い、その数は1238例に達しました

この講座の設立目的は前立腺がん患者さんとご家族にとっての切なる希望である”再発のない前立腺癌治療の確立と普及”でした。

2020年から、京都宇治病院に籍を移し、さらに300例近い症例の治療を行い、私自身の小線源治療症例の経験数は1500例を超えました。

そして、2024年春から大阪において前立腺癌の診断と治療(特に小線源治療)に特化したクリニックである大阪前立腺クリニック(pioc.jp)を開設、小線源治療を開始しました。

■岡本が実践してきた前立腺癌小線源治療のこれまで

転記出典先:https://keisei-okamoto.net/brachytherapy-history

■岡本メソッドによる前立腺癌小線源治療の実績

私は2005年より限局性前立腺癌に対する密封小線源(I-125)の永久挿入療法(以下シード治療もしくは小線源治療と略す)を開始し、安全かつ再現性を持って高線量投与を可能とする独自の高精度小線源療法を開発し、Ten-step methodとして国際誌に公表しています (https://aapm.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/acm2.13224)
その治療効果に対する大きな信頼から、滋賀医科大学を辞する2019年末まで北海道から沖縄まで全国から多数の患者さんが私の小線源治療をもとめて来院されていました。

さて、これ以降私のおこなってきた小線源治療について詳しく説明いたします。

米国において小線源治療は前立腺癌に対する放射線療法として確立され、既に30年以上を経過し、転移の無い前立腺癌患者さんに対する根治的治療法として広く行われてきました。

小生はこれまで1500例を超える前立腺がん患者さんに小線源治療をおこなってきました。

その経験を通して、

小線源療法は

高い経験と技術を持っておこなえば

体への負担が軽いばかりでなく、

安全かつ有効性のきわめて高い治療法であり、

他の治療法でに比べて

圧倒的に完治率が高いというデータを

国際雑誌に発表してきました。

このホームページでは小生が長い年月をかけて構築してきた高精度小線源治療の長期観察データに基づくアウトカムを、国際雑誌において厳格な査読ののち受理・公表されたエビデンスに基づいて解説していきます

(学会で成果を発表することの意義を否定するものではありませんが、学会発表はその内容の科学的妥当性について第三者が、査定・レビューすることが出来ません。したがって最終的に国際雑誌において厳格な査読ののち受理・公表されたエビデンスに基づいて議論をしなければ、得られた知見や結論の妥当性に説得力を持たせることができないのです。

いっぽう前立腺癌の治療アウトカムに関する研究結果を査読のある国際雑誌に公表するプロセスは非常に長期間にわたる忍耐強い年月と多大な労力を要する作業であることもご理解いただきたいと思います)。

さて前置きが長くなってしまいましたが、

前立腺癌の治療でもっとも大切なことは

最初の治療で確実に再発なく完治させることです

なぜなら、初回治療で再発した前立腺がん患者さんは

再発後、救済療法を受けたとしても 

多くの場合、再発 再再発という道をたどるからであります

われわれの多数の治療経験や海外のデータから小線源治療は適切に他の治療と組み合わせることにより、悪性度の高い癌 (中間リスク前立腺がんや高リスク前立腺がん)であっても非常に高い根治率(非再発率)が得られることがわかっています。

ここでは小線源療法の内容と私が確立した小線源治療の特徴について説明いたします。

出典:https://keisei-okamoto.net/brachytherapy-history/

◆前立腺癌小線源治療の歴史

小線源療法とは小さな放射性物質を治療する局所に挿入して行う放射線治療を意味します。

英語ではブラキセラピー(brachytherapy)と呼ばれていますが、ブラキ(brachy)とは「近接した」という意味で放射線源と照射目標が短いことからこのように呼ばれています。

日本でも古くから、舌癌や婦人科の癌に対してラジウム、セシウム、金などの放射性物質を用いた小線源療法が行われてきました。

1970年代にアメリカで前立腺癌に対する(I-125)を密封した小線源(シード線源)を前立腺の中に挿入して照射を行う組織内放射線療法が開始されましたが

当時の方法は下腹部を切開し直視下に線源を留置して行う方法であり、

線源を目算で挿入していたため線源分布が不均一となり、効果が不十分で広く普及するには至りませんでした

◆超音波画像により正確にシード線源を挿入

その後、直腸に超音波端子を挿入する前立腺用の経直腸エコーが開発され、前立腺の超音波画像が鮮明に得られるようになりました。

これにより超音波画像を見ながら会陰部(肛門と陰嚢の間の股の部位)から前立腺内に針を刺して、そこからシード線源を挿入することが出来るようになりました。

皮膚切開を必要とせず、しかも前立腺に正確に線源を留置することができるようになって治療成績が飛躍的に向上したため、

1990年代になってI-125を用いた小線源療法は年々増加の傾向をたどっていました。

◆現在の前立腺がん治療の問題点

しかしながら世界的に見てもロボット手術や重粒子線治療など高額機器を使用する治療を推奨する趨勢が支配的となっています。

さらに質の高い小線源治療を実施するには

術者に高い技術が求められることから

日本でも世界でも高精度の小線源治療ができる施設が減少し、

また実施件数も減少傾向にあります

つまり前立腺がんを患った方々の願い(再発の少ない治療を受けたいという希望)を顧みず、

医療業界がハイテイク高額治療機器の導入・運用を優先するという潮流に支配されてしまっているのが現在の前立腺がん治療の現況です。

ハイテク機器を運用した治療の成績、特に非再発率が良好であればよいのですが

現実はそうとはいえません

Crookらが記した総説によればハイテク治療の急速な導入が続いているにも関わらずPSA検診で発見され根治治療を受けた前立腺がん患者さんのなんと40-60%が再発(そのほとんどが局所再発)をしていると報告されています(JM Crook et al., Transl Androl Urol 2018)。

このことはPSA検診を通じて前立腺がんと診断された患者さんとそのご家族にとっては誠に不幸な状況といわざるを得ません。

私は論文の中でも初回治療の大切さや再発によってもたらされる深刻な肉体的、経済的、心理的負担の問題を訴えてきました (Emergence of Quality Low-Dose-Rate (LDR) Brachytherapy: Ultimate Radiosurgery for Non-Metastatic Prostate Cancer (iomcworld.org)

◆独自に改良・発展させたリアルタイム術中計画法により、安全に高い放射線エネルギーを照射

 さて、小線源治療に関しては2004年以降、ニューヨークマウントサイナイ医科大学を中心に開発されたリアルタイムによる術中計画法により、きわめて高い精度で線源が前立腺に配置できるようになりました。

これにより、非常に高い放射線エネルギーが、安全に照射できるようになりきわめて高い治癒率が得られるようになっています。

私は前職滋賀医科大学時代にリアルタイム術中計画法を発展させて

独自の治療プログラム (Ten-step method)を開発し、

被膜外領域(癌が被膜の外へ浸潤した領域)や精嚢浸潤も治療することにより

難治性の前立腺癌症例を含め

多数の患者さんの治療をおこなってまいりました。

下記に岡本メソッドによるリアルタイムによる術中計画法による超音波画像と、治療後のX線フィルムを供覧します。

岡本メソッド (Ten-step method)では

近年多くの施設で汎用されているハイドロゲルスペーサーは使用しません

何故ならハイドロゲルスペーサ挿入そのものによる直腸穿孔の報告が散見されており

小線源治療を含めた前立腺癌治療に対する放射線治療による

直腸障害を防ぐ目的で普及が進んでいるハイドロゲルスペーサーの使用そのものにより、

重篤な直腸障害が発生しているという笑えない事故報告を見聞した小生の率直な疑問は

現代医療が、合理性のある筋の通った本来進むべき方向性から脱線しているんではないか?ということです。

その理由を以下に述べます。

多数症例の小線源治療の経験から会得した安全かつ精度の高い岡本メソッドにより

重篤な直腸障害が1500例を経てなお起こっていない、

つまり直腸障害に関して安全な外部照射併用を含めた小線源治療が確立・運用できている現在、

長期成績と安全性が不明なハイドロゲルスペーサーを導入・使用する合理的根拠が、まったくないからです

また岡本メソッド (Ten-step method)では、

近年多くの施設で汎用されている連結型シードも使用しません

連結型シードというのは先頭(最膀胱側)のシードの位置により、自動的に最後尾(前立腺尖部)のシードの位置が決まってしまういわゆるプレプラン法に用いるデバイスです。

術中の線量分布を見ながら一個一個の線源(シード)の配置を再考しながら最適の線源分布を目指す術中計画法(いわゆるリアルタイムインプラント)の完成形である(Ten-step method)に用いるデバイスとしては不適切であるからです

医療技術・手技の背景にある原理をしっかり考えず、

長期に渡る安全性と有効性の証明されていない新種のデバイスを反射的・無批判に採用する現代医療の傾向には危うさを感じざるを得ません。

患者さんの命を左右する医療技術を完成させるためには、

まず基本原理を徹底的に考察・理解したうえで、

それを実現させるための安全で精度の高い技術の習得・修練に

長い時間をかけて地道に取り組むことが肝要です。

そのような医療の基本倫理・哲学・求道を無視して、流行や時流に流され砂上の楼閣を築くことに執心することは決してあってはならないというのが小生の医療者としての信念です。

■前立腺癌小線源療法のリスク別非再発率について

◆低リスク前立腺癌に対する私の考え

グリソンスコアが3+3である低リスク癌は

治療を行わなくても、転移したり癌が進行して死に至る可能性が、極めて稀な前立腺癌と考えられています。

そのため下記に述べるように低リスク前立腺がんに対しては

基本 監視療法を採択し、

経過中 

再検査により治療の必要がある中間リスク以上にリスクが上がるようなら治療を考慮することとしています

小生は、たとえ高精度で安全性の高い小線源治療であっても、

不必要な治療・手術を患者さんに行うべきではないと考えるからです。

”治療の必要のない方に侵襲を伴う医療行為を行うことは、

例え治療により完治得られたとしても是とすべきではない” 

という信念に基づく方針です。

◆高リスク前立腺癌に対する私の考え

PSA20ng/ml以上、臨床病期がT3a以上、もしくはグリソンスコアが8以上の癌は

高リスク前立腺癌と呼ばれ、従来の治療方法では再発率が高く難治性の癌と考えられてきました。

しかし長期に渡る観察結果から、こういった高リスク前立腺癌に対しては、

小線源治療と外部照射を組み合わせた超高線量照射を行うことにより

治癒率を高めることができるというデータが

先のマウントサイナイ医科大学をはじめとする欧米の施設から公表されています(図1)。

図1: Prostate Cancer Results, Study Group の解析による高リスク前立腺がんに関する
欧米主要施設での治療法別データ

Grimm, P, et al., BJUI, vol .109 (s) pg. 22-29, Feb2012 欧米主要施設での治療別データより一部改変
外部照射のデータは3D-CRTもしくはIMRTで線量は72~81Gy
拙者監修:ブラキサポートから引用

◆高リスク癌および超高リスク癌に対するトリモダリティ治療

小線源治療と外部照射を組み合わせた超高線量照射は、

外部照射のみによる放射線治療に比較して遥かに高いエネルギーが照射できるというメリットがあります。

こういった超高線量照射にホルモン治療を併用すること(高リスク癌に対するトリモダリティ治療)で非常に優れた治療成績が示されています(図1)。 

                                                私はこれまで高リスクおよび超高リスク症例に対して長年にわたりトリモダリティ、すなわちホルモン治療+小線源+外部照射による治療 を行ってきました。

一定期間のホルモン治療が必要となるPSAが100ng/mlを超えるような超高リスクでも

小線源治療終了後、

原則6ヶ月以内にホルモン療法を休止とし

なるべくホルモン療法の副作用を必要最小限に留めるように配慮してきました

その成果を論文化することにより、

外部照射治療の主流であるIMRTや粒子線治療でおこなわれている治療後

2年以上継続される長期のホルモン療法は

岡本メソッドによるトリモダリティでは

まったく必要がないことをを国際雑誌の中で主張してきました。

いっぽう我が国でも高リスク症例に対して、

ホルモン療法、小線源治療と外部照射を用いたトリモダリティ治療を施行している施設は散見されますが、

問題はトリモダリティによって如何に高い線量を安全に投与できるか?という点が非常に重要になります。

私は既に数多くの高リスク症例を高線量のトリモダリティ治療で完治させてきました

8年近くみた私のデータでも欧米のデータ (図2)同様小線源治療を用いた超高線量照射は

外部照射単独 (強度変調放射線治療:IMRT)や手術療法にくらべて

再発率や局所コントロールという点で非常に優れた治療法です。

これまで高リスク前立腺癌 に対して私がトリモダリティ治療をおこなった結果

5年のPSA非再発率は95.2% で

再発症例は全例が診断時に同定できなかった遠隔転移(骨転移)による再発という結果でした(Journal of Cotemporary Brachytherepy, 2017):

さらに、この論文で対象とした症例はT3a より進行した精嚢浸潤のあるT3b, 膀胱浸潤のあるT4, また骨盤内リンパ節転移のある方、PSA>100といった、他施設では小線源治療の適応にならない超高リスク症例を相当数含んでいます     

High biologically effective dose radiation therapy using brachytherapy in combination with external beam radiotherapy for high-risk prostate cancer (termedia.pl)

具体的には、本論文が対象とした143例は

PSAの平均値が20ng/ml以上でありPSA値が100ng/mlを超える症例も含まれ、

ステージでいえばT3a以上 (T3a, T3b, T4) の症例が63%を占めています。

また骨盤内リンパ節転移を伴う症例も5症例含まれています(これらリンパ節転移を有していた5症例はいずれも、後に述べるような全骨盤への外部照射を併用したトリモダリティ治療を行うことにより再発なく経過しています:代表的なリンパ節転移を認める症例として骨盤内を占拠し精嚢浸潤を伴う局所進行前立腺癌症例T3bN1の完治例が本論文のFigure 2に提示してありますので御覧いただければ幸いです)。

さらに58%の症例が高リスク因子を2つ、もしくは3つ有する症例でした。

つまりこれらは私が治療手がけた高リスク症例のうちのトリモダリティ治療を行わざるを得なかった症例のデータであり、ホルモン療法を使わず小線源と外部照射の併用、もしくは小線源単独で完治している高リスク症例は含まれていませんので、すべての高リスク症例を集計して計算するとさらに非再発率は高くなるものと予想されます。

従って他施設の高リスク前立腺癌に関する治療成績と比較される場合は、各施設のデータにおいてどの程度の重症高リスク前立腺癌を調査対象症例に組み入れているかという症例背景の差異を考慮する必要があります。

小生は、他施設において小線源治療やトリモダリティ治療の適応外と判断された難治性前立腺癌症例の多くを完治に導いてまいりました(もちろんこれら困難な症例の中には診断・治療時には画像上わからなかった潜在的骨転移を有する症例が一定の割合で存在し、こういったケースでは治療後再発という経過を辿ってしまうことは止むを得ない現状です:上述の高リスク論文で再発した6症例は全例このような潜在的骨転移の存在が原因でした)。 

                                                              上述の2017年に国際誌に公表した高リスク症例のお一人でPSA>20ng/ml, T3a, グリソンスコア4+5であった方のインタビュー(下段)がありますので参考になさってください。

この方は小生のトリモダリティ治療後10年以上経過していますが、再発や、血尿・血便といった副作用もなく、元気に奥様とお暮しになっておられます。

このほか、膀胱に浸潤した前立腺癌はT4と分類され明確に完治した症例の報告は調べ得た限りではないのが現状ですが、全骨盤への外部照射を併用したトリモダリティ治療により精嚢浸潤(+)、膀胱浸潤(+)、骨盤内リンパ節転移(+)つまりT4N1症例の完治症例も国際誌に公表しています(Journal of Cotemporary Brachytherapy, 2021)。Prostate cancer with nodular bladder invasion (stage T4N1) cured by low-dose-rate brachytherapy with seminal vesicle implantation in combination with external beam radiotherapy of biologically effective dose ≥ 220 Gy: a case report (termedia.pl) 

 T3b やT4 は超高リスク前立腺癌に分類されますが、

病期分類がT3b やT4といった局所進行前立腺癌にトリモダリティ治療を運用する場合、

精嚢にシードを留置するという高度な技術が術者に求めれます

この技術を持ち合わせていない施設では

T3b やT4症例はトリモダリティ治療の適応外とされているのが現状であり

仮に小線源治療を運用しても

精嚢が治療されていない場合、前立腺癌が再発してしまいますので注意が必要です

また例え画像診断で精嚢浸潤なし、T3aと診断された場合でも、

精嚢近傍や前立腺底部(膀胱よりの前立腺)から前立腺癌が検出されている場合は、

ある程度のシードを精嚢に留置し、精嚢も治療しておくべきであるというのが小生の考えです。

こういった治療方針を徹底した結果、

過去10年以内に臨床再発と診断された症例において

精嚢に再発された症例は皆無です

以上を纏めますと、岡本メソッドによる治療戦略を適応することにより

これまでPSAが300ng/ml 超える症例や骨盤内リンパ節転移を伴った症例であっても

高い確率で、早期にホルモン治療から解放され、

排尿機能や性機能といったQOLが保たれた真の意味での完治を獲得されておられるわけです。

繰り返しになりますが、骨転移や臓器転移さえなければ

上述のような難治症例や骨盤内リンパ節転移を認める症例であっても、

岡本メソッドではホルモン治療の期間は

小線源終了後から6か月と短い治療で完治させることが出来るのが特徴です

また前立腺癌の中には

導管癌と呼ばれる極めて再発率および死亡率の高いまれな前立腺癌があります。

いわゆる難治性前立腺癌と呼ばれるものです。

私は局所進行をきたした超高リスク導管癌 (T3b症例)についても同様のメソッドを用いることにより、長期間の経過観察を経ても完全に根治できていることを国際雑誌に公表しました:(Journal of contemporary brachytherapy 2022)。Very high-risk locally advanced prostate ductal adenocarcinoma cured using low-dose-rate brachytherapy, with seminal vesicle implantation in combination with external beam radiotherapy at a biologically effective dose ≥ 220 Gy: two case reports with a long-term follow-up (termedia.pl)

一方、IMRTや重粒子線治療などの高額ハイテク外部照射治療では、

治療後も非常に長期間ホルモン療法を行うのが一般的ですが、

治療後長期のホルモン療法を行うことにより、さまざまな問題点が生じてきます

放射線治療終了後も2年から3年という異常に長い期間ホルモン療法を続けた場合

1) 治療後、低いPSA値が長期間持続していても、

単に長期ホルモン療法の影響で男性ホルモン(テストステロン)が回復していないことによるPSA抑制効果をみているに過ぎないことがあります。つまり治療後相当な年月を経て患者さんのPSA値が低く維持されていても真の治癒とは言えない場合が多く、

患者さんとや担当医にとって”本当に前立腺癌は完治したと言えるのだろうか?” というジレンマが生じます

2) さらに長期のホルモン療法による全身的副作用が、

患者さんにとって深刻な問題を引き起こす危険性があるという大きな問題があると考えます

放射線治療の場合、前立腺癌細胞を完全に死滅させられるかどうか(すなわち再発を起こすか起こさないか)は、

前立腺に照射する放射線の線量(Gy)で決定されますので

高い精度で高線量を照射できる小線源治療を使ったトリモダリティ治療は

むやみに長期間のホルモン療法を行わずとも安全に高リスク前立腺癌を完治・根治させることのできる治療といえまます

ちなみに上述した私のT4N1(膀胱浸潤があり、骨盤内リンパ節にも転移を認める)症例や導管癌の完治症例ではテストステロンが正常値に回復していることを確認した上でPSAが極めて低い値を示していることから真の完治すなわち根治が得られているといえるわけです。

もう一点、重要なことは、T4N1(膀胱浸潤があり、骨盤内リンパ節にも転移を認める)症例や導管癌の完治症例の最終PSA値は0.01ng/ml と非常に低い値であり、前立腺全摘手術の再発定義である0.2ng/mlより遥かに低い値を示しています。

このことは2017年に私が公表した高リスク論文(Journal of Cotemporary Brachytherepy, 2017) の中で取り上げているPSA=65ng/ml, T3bN1(精嚢浸潤と骨盤内リンパ節転移のある)症例でも同様です。

全摘手術と放射線治療のPSA再発率の差を議論する際に全摘手術のPSA再発定義(0.2ng/ml) と放射線治療のPSA再発定義(2.0 ng/ml) の差を問題にする研究者が少なからず存在します。

しかしながら、私の経験では、適切かつ高線量の小線源治療をおこなえばこのような難治性の前立腺癌はもちろん中間リスクの前立腺癌でも、

治療時点で隠れた転移さえなければ、

十分な観察期間をおけば全摘手術のPSA再発定義(0.2ng/ml) 以下に低下し、多くの症例におけるPSA値は最終的に測定感度以下まで低下します。

つまり岡本メソッドによる小線源治療では、最終的に全摘手術のPSA再発定義(0.2ng/ml) を遥かに下回る非常に低いPSA値に到達することを確認しています。

前立腺癌と診断されて悩んでおられる 患者の皆様とご家族に是非、理解していただきたいのは 以下に述べるポイントです。

1)放射線治療や手術療法の再発定義や、ホルモン療法や化学療法の効果が持続している状態で論文発表されている一見良好な非再発率という見せかけの数字に騙されないように注意しなければなりません

特に放射線治療後を起点に非再発率を算出している論文で

放射線治療後も

2から3年ホルモン療法が継続されている場合は要注意です。

 2) 診断時骨転移や遠隔転移がなければ

岡本メソッドによる小線源治療を受けられれば、

前立腺癌はPSAが100ng/mlを超え

骨盤内リンパ節転移陽性症例であっても

高い確率で再発の不安のない真の完治と根治(男性ホルモンの値が回復してもなおPSAの値が低値であること)が得られるというエビデンスが、複数の専門家による査読を経て受理された英文医学誌への公表論文を通じて国際的に認知されているという二つのポイントです。

もう一点、非再発率という

1)のポイントに関して言及するならば、治療終了直後の症例も解析対象に入れてしまうのと、最低の経過観察期間を治療終了から少なくとも2年とするのでは明らかに前者の非再発率が見かけ上、高く計上されてしまいますので、医学論文における非再発率の数値解釈には注意が必要です

https://keisei-okamoto.net/wp/wp-content/uploads/2021/11/BT_okamoto-yasui.mp4-00.02.41.979-00.09.13.652.mp4?_=1

◆中間リスク前立腺癌に対する私の考え

低リスク、高リスク以外の

転移のない前立腺癌は中リスク前立腺癌に区分され、

一般的にはPSAが10-20ng/mlもしくはグリソンスコアが7の癌がこのグループに相当します。


中リスク前立腺がんに関する欧米主要施設での治療法別データ

図2: Prostate Cancer Results, Study Group の解析による中間リスク前立腺がんに関する
欧米主要施設での治療法別データ

Grimm, P, et al., BJUI, vol .109 (s) pg. 22-29, Feb2012 欧米主要施設での治療別データより一部改変
外部照射のデータは3D-CRTもしくはIMRTで線量は72~81Gy
拙者監修:ブラキサポートから引用

小線源治療を含めた放射線治療を非転移性の前立腺癌に対する一次治療として選択する場合、

再燃に対しての治療法が

ホルモン療法に限られる事から

再発をおこさない治療を行うことがきわめて重要と考えられます

治療にあたって、私は再発をおこさないよう高精度の治療を行うことに細心の注意をはらっています。

中間リスク前立腺癌に関しては

基本的に放射線の線量さえ高く設定できれば

ホルモン治療なく確実に完治しますので

中間リスクにはホルモン治療をおこなうことなく小線源単独治療で対応しています。

◆高線量小線源単独治療

以上のような観点から、各リスクの前立腺癌については完治に至る十分な線量を照射できる治療法の選択を患者さんにアドバイスしています。

私が独自に開発した小線源単独治療のメソッドは、

他施設に比べて高線量(D90=195-210Gy: D90とは前立腺の90%に照射された線量を意味します)で治療をおこなっています。

この線量は外部照射相当で100Gyを遥かに超える線量に匹敵します

そのため中間リスクでも外部照射の併用なしで完治を得ることが可能です。

滋賀医大時代の初期症例では中間リスクに対して外部照射を併用するやり方を採択していましたが、

現在私は、ほとんどの中間リスクの患者さんに対して

ホルモン治療や外部照射の併用をおこなうことなく小線源のみで完治させています。

つまり中間リスクのうち前立腺全摘手術やIMRTなどの外部照射では、

再発率が高いとされるグリソンスコアが4+3の中間リスク群であっても7年の経過観察で非再発率99%というデータを国際雑誌に発表しています (Journal of contemporary brachytherapy 2020)    Journal of contemporary brachytherapy 2020:Clinical outcomes of low-dose-rate brachytherapy based radiotherapy for intermediate risk prostate cancer:

この論文において、小生は高い線量(BED=200Gy)で治療できるならグリソンスコアが4+3の症例であっても中間リスク前立腺癌においては、ホルモン療法も、外部照射も不要であることを実証しました。

下記に私が開発した独自の線源留置方法であるTen Step Method(いわゆる岡本メソッド)を用いた高線量小線源単独治療の線量分布を示します。

Ten Step Method による線量分布 赤のライン:前立腺被膜、ピンクのライン:240Gy、オレンジのライン:160Gy、ブルーのライン:144Gy. Okamoto K, J Appl Clin Med phys 2021より改編

この図では 岡本メソッドを用いて被膜のギリギリ内側に線源を丁寧に配置することにより、

ほとんどの部位で最低でも被膜外側5mm以上(~10mm) の領域が160~200Gyの線量で治療できていることを示しています。

この方法によりダビンチ手術に代表される前立腺全摘手術で

術後に被膜外浸潤断端陽性

(手術後の説明でこのような結果を受けた患者さんは術後長きに渡り再発の不安と葛藤せねばならなくなり精神的不安が長きに渡り襲いかかるので注意が必要です)と

診断されるような症例であっても

高線量の小線源単独治療により、局所再発の不安のない完治をもたらすことが可能なのです。

岡本メソッドによる小線源単独高線量治療を運用することにより、

グリソンスコアが4+3の中間リスク症例であっても

外部照射という通院、入院の手間なく、

さらにホルモン療法による高額医療費とホルモン療法の副作用なく完治できるので

体の負担が少ないことはもちろんのこと、経済的にも時間的にも非常に多くのプラス面が多くあります。

ただこの高線量照射は

十分な知識・経験と高い技術がなければ

強い副作用や傷害が出る可能性があり

どの治療施設でも実施できるわけではありません

小生は、小線源単独あるいは小線源と外部照射の併用のいずれの場合であっても

局所再発をゼロにするよう格段の配慮をもって治療にあたっています。

われわれは高リスク以外の前立腺癌については 

ホルモン療法を極力おこなわないという方針で治療しています。

その理由としてホルモン療法には

骨粗鬆症や心血管系への副作用以外にも

高脂血症、

耐糖能異常、

認知力低下、

骨髄機能低下などのさまざまな副作用があるからです

我々は中間リスクや大きな前立腺であっても極力ホルモン治療をおこなうことなく治療できる経験と技術を備えています。

この項目を纏めますと 岡本メソッドを使った小線源治療は中間リスクと高リスク、および超高リスク前立腺癌を完治させる治療法ということにになります。

すなわち限局がんのみならず局所進行がんや骨盤内リンパ節転移をともなった進行前立腺癌も完治の対象としています。

他の治療方法と比較した場合 こういった困難な症例においても、岡本メソッドによる小線源治療を運用することにより、圧倒的に高い非再発率すなわち高い根治率と完治率が得られることを、国際雑誌に公表しています。

■小線源治療の流れと実際

◆実際の治療は、どのように行われますか?

本治療の適応と判断された方には、治療の2週間前に来院していただき、外来にて治療のためのプレプランニングを行います。

すなわち尿道にカテーテルを挿入して、治療時と同じ体位をとり、放射線治療医と協力しながら経直腸エコーを用いて前立腺の形態を3次元的に解析してコンピューターに取り込みます。

このデータをもとにI-125シード線源の配置および使用線源数を決定します。

2週間後に線源が届きますのでそれにあわせて入院していただき翌日に治療を行います。


治療は下半身麻酔をかけた上で超音波の画像をみながら会陰部から筒状の針を刺入し (図3)、

その針を通してヨウ素(I-125)シード線源を挿入します(図4および5) 。

症例によって異なりますが、全部で50~150個ほどのシード線源が前立腺内に留置(手術時間は約60-90分)されることになります。

治療の翌日に挿入された線源の状態を確認するためCTスキャンを行い、こののち尿道カテーテルを抜去します。

その後は、ご自分で排尿していただくようになり、退院となります。

退院後は普通の日常生活を送っていただくことが可能です。外部照射を併用する場合は、約1ヶ月後から外来通院で開始いたします。

小線源治療に外部照射を併用する場合、特別な照射装置やテクニックが必要になるわけではありません。

なぜなら外部照射を併用する場合の最重要ポイントは小線源治療のクオリティだからです。

したがって前職の滋賀医大同様、私の治療を希望して来院される多くである遠方からの患者さんは居住区近くの外部照射施設を紹介して、小線源治療後そちらで外部照射をおこなっていただくようにこちらで手配をいたします(照射回数や照射方法については滋賀医大当時と同様、小生が正確に決定し、依頼します)。

■小線源治療を希望される患者さんへ

前立腺癌と診断された患者さんやご家族の願い・・・それは再発のない治療を受けたいということではないでしょうか。

これまで私は”再発をおこさない前立腺癌治療を行うこと”を最大の使命と考えて診療にあたってきました。

PSA検診により診断される前立腺癌のほとんどは骨などに転移がない非転移性の前立腺癌です。

私のこれまでの治療経験から申し上げるなら、

これらPSA検診で診断された非転移性の前立腺癌は

”治療により確実に治らないといけない、完治すべき前立腺癌なのです”

・・にも関わらず治療後の再発に苦しむ患者さんが後を絶たない背景には、

極めて明確な原因が存在するのです

はっきり申し上げれば、前立腺癌の治療後再発という不幸に苦しむ理由のほとんどが、

”再発率の高い治療を選択してしまった” ことにあるのです。

この点で、小線源療法は、

高い技術と精度をもっておこなえば

尿漏れをおこすことなく

局所再発ゼロというゴールを達成できる

きわめて有効な前立腺がん治療といえます

特に、これまでの1500例を超える治療経験から私の確立した小線源療法は、

他の治療方法に比べて圧倒的に再発の少ない治療であることがわかってきました。

私は、これまで培った高い経験と技術を礎に、

すべての患者さんが、

精度の高い最高水準の前立腺癌治療を受けていただけるよう、

一切妥協することなく細心の注意をはらって患者ファーストのポリシーで毎日の診療に取り組んでいます。

また一人でも多くの患者さんが、高水準で後悔のない、満足できる前立腺がん治療受けていただきたいと心より願っています。

2020年から、京都宇治病院に籍を移し2021年8月から小線源治療を再開し、これまで既に294例の治療を無事終了し、私自身の小線源治療症例の経験数は1500例を超えました。

そして2024年4月から大阪の地で大阪前立腺クリニックを開院し、7月から前立腺癌小線源治療をスタートさせ、既に60例の治療を行っています。

前立腺癌と診断され、当院での小線源治療をご希望される患者さんは、

担当の先生とご相談の上、紹介状と資料をお持ちになって受診してください。

ご遠方の方の、個別の医療相談も最大限に対応させていただきます。

ご質問、お問い合わせ、前立腺がんの治療法でお悩みの方や

セカンドオピニオンをご希望の方は、遠慮なく下記の担当医までメールでご相談くだされば幸いです。

お問い合わせ
石田記念大阪前立腺クリニックpioc.jp                                                     

大阪府大阪市旭区新森2丁目1−26

京阪森小路駅東出口を出て右折してすぐにあります。

前立腺小線源外来:毎週水曜完全予約制
理事長・院長 岡本圭生
連絡先メールアドレス:    keiseiok814@gmail.com

大阪前立腺クリニック案内地図 
※ お問い合わせにはメールでお返事をさしあげていますが、携帯電話からのメールの場合こちらからのお返事がブロックされて届かない場合があります。返信が届かない場合はメールのチェック機能をご確認ください。

●治療法の選択にあたり、知っておきたいこと ~再発のない治療を目指して~
https://www.youtube.com/watch?v=vrVvR7mg0XU

この講演の中で、小生は前立腺癌治療において初回治療で再発や重篤な副作用なく完治することがもっとも重要であることを強調しています。前立腺癌の診断が確定した場合、拙速に決断を急ぎ、再発率の高い治療方法を選択したり、治療により一生涯続く尿失禁を背負ってしまうといった後悔をする羽目にならないよう時間をかけて慎重に判断をされることをお勧めします。

●前立腺がんの治療で大切なこと:ブラキサポート(監修岡本)

前立腺がんの治療で大切なこと|ブラキ・サポート (brachy.jp)

●ラジオ日経│前立腺がんと診断されたら (音声のみです)

https://keisei-okamoto.net/brachytherapy-for-patients

第4回で副作用として『前立腺肥大』による尿排出(頻尿・尿閉等)問題を指摘されている

●前立腺がんフォーラム: 高リスク前立腺癌のトリモダリティ治療による完治症例が紹介されています。

動画プレーヤー

●高リスク前立腺癌に罹患され岡本の小線源治療を受け完治された方々が、その体験を語っておられますので視聴してみてください。

ハイリスク前立腺がんと向き合って 惠 宏敏 氏

Q&Aセッション【前立腺がんセミナー 患者・家族の集い 2017 大阪】

体験を語る 小線源療法(ホルモン療法+外部照射併用) 鈴木 基之 さん | キャンサーチャンネル

●岡本メソッド(10 Step Method)のビデオクリップ:英語ですが興味のあるかたは視聴してみてください。

動画プレーヤー

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●Business Journal│増加する男性の前立腺がん、再発率わずか 2%の画期的な治療法「岡本メソッド」
https://biz-journal.jp/2018/11/post_25481.html
●Business Journal│前立腺がん、手術後の非再発率 99%の小線源治療、画期的な「岡本メソッド」確立
https://biz-journal.jp/2020/04/post_149587.html