空海の多様性:⑦立体曼荼羅(東寺)~編集工学視点:松岡正剛氏の発想を手助けにして~

■空海の祈りの形~立体曼荼羅~

◆東京国立博物館 東洋館 TNM & TOPPAN ミュージアムシアター

・期間:2024年7月17日~2024年10月14日

⇒訪問日:20204年9月20日

⇒下記ミュージアムシアターの訴求ポイントを実体験し、大満足

出典:https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=12&id=11128

TNM & TOPPAN ミュージアムシアター

VR(バーチャルリアリティ)による新しい文化財鑑賞方法の体験

⇒超高精細4K映像を映し出す迫力のスクリーンが提供する文化財の姿を

⇒あざやかに映し出し、かっての姿の再現や、まるで実物に触れられるかのような空間を楽しむことができる。

⇒ナビゲーターによるライブ上演でVR作品を楽しめる。

出典:https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=list&cid=12

■VR作品『空海 祈りの形』

下記内容は同Webサイトからの転記

https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=12&id=11128

弘法大師 空海が、言葉では表現できない究極の教えを伝えるために作り上げた「祈りの形」とは。

空海は804年に唐に渡って密教を学び、正統な後継者となって日本にその教えを持ち帰りました。

823年に東寺を帝より託された空海は、

密教の教えの中心となる建物を講堂と位置づけ、その建築に取りかかります。

空海が講堂内部に作り上げたのは、

言葉では表現できない究極の教えを伝える世界観

密教彫刻の最高傑作である東寺講堂の立体曼荼羅の魅力を

VRで解き明かしてゆきます。

・立体曼荼羅配置図

出典:https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=12&id=11128

大日如来を中心に五智如来
ごちにょらい

大日如来に対面して

右側に、金剛波羅蜜多菩薩
こんごうはらみったぼさつ
を中心にした五大菩薩
ごだいぼさつ

左側に、わが国にはじめて紹介された不動明王を中心にした五大明王
ごだいみょうおう

須弥壇の四方には、四天王、そして梵天
<
帝釈天
たいしゃくてん
が警護するように配されています

弘法大師空海は、大日如来を中心とした二十一尊の仏さまを講堂の須弥壇に登場させました。曼荼羅の中心に大日如来が描かれているように、東寺の中心に大日如来を安置して、寺域を巨大な曼荼羅にレイアウトしたのです。

須弥壇の四方には、四天王、そして梵天
<
帝釈天
たいしゃくてん
が警護するように配されています。

     金剛界曼荼羅        胎蔵界曼荼羅

密教の教えをわかりやすく表現したのが曼荼羅です。

曼荼羅には、胎蔵界曼荼羅
たいぞうかいまんだら
金剛界曼荼羅
こんごうかいまんだら
があり、それぞれ、理と智慧
ちえ
という教えを伝えています。

出典:https://toji.or.jp/mandala/ 東寺Webサイト

※金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅:真言密教における二つの重要な曼荼羅で、それぞれ異なる側面を表現している。

金剛界曼荼羅

  • 金剛界曼荼羅:大日如来の智慧を象徴している。中央に大日如来を配置し、周囲に四如来や菩薩が配置されている。
  • 9つの「会」と呼ばれる区画に分かれており、悟りに至るまでの段階を表している。
  • その構成は、時計回りに回ることで悟りを開いた仏が民衆に教えを説く道筋を反時計回りに回ることで凡夫が悟りに向かう道筋を表している

胎蔵界曼荼羅

  • 胎蔵界曼荼羅:大日如来の慈悲を象徴している。中央に大日如来を配置し、同心円状に院を配しているのが特徴。
  • 12の「院」と呼ばれる区画に分かれており、各院には特定の仏や菩薩が配置されている。
  • 大日如来の慈悲が放射状に広がり、教えが実践されていく様子を表している。

両界曼荼羅

  • 両界曼荼羅:金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅を対にして掲げるもので、真言密教の教えを総合的に表現している。
  • 金剛界曼荼羅が智慧を、胎蔵界曼荼羅が慈悲を表し、両者は一体となって仏教の真理を示している。

これらの曼荼羅は、仏教の深い教えを視覚的に表現し、修行者が悟りに至るための道しるべとなるものである。

■東寺講堂二十一体の神仏に見る”生命圏”の構図

転記先URLは以下

https://www.mikkyo21f.gr.jp/kukai-ronyu/kitao/post-245.html

八二四年、東寺造営の長官に補任された空海は、その翌年に、「東寺講堂図帳」(今日でいう設計図面)を作成している。

その講堂の中に、密教の説く、

自然界に輝きをもたらしているいのちの “知(意識)のちから”

その”知のはたらき”の理念・原理と、

そのいのちの宿る生物の身体を、発生・成長・制御している “生体エネルギー”のはたらきと、

それらのいのちの生存の場である自然界を動かしている”道理”とによって

成り立つ世界(今日で言う”生命圏”)」を立体的に模式展示するためであった。

この展示館は、八三九年六月十五日に開館した。空海没後四年を経た年であった。着手が八二五年であるから、十四年の歳月を要して、展示計画が完成したことになる。

◆内部、神仏配置
(A)「如来」グループ(中央ゾーン)
如来とは”いのちのちから”の意。いのちのちからとは”知(根源意識)のちから”を示す。(根源意識とは、内外の神経細胞によって直接的に捉えた生存環境や接触対象からの自然で無垢な情報の集積とその処理から成るあるがままの意識。ヒトにおいては無心にして感得する知の恵みの意識)


①大日如来(中心位置)
「生命力」〔法界体性智〕(いのちそのものの存在の輝き)                     ⇒自然界のいのちの存在とその輝きによる知のちからを示す。


②阿シュク如来(後方、右位置)
「生活力」〔大円鏡智(だいえんきょうち)〕(無心にして生きられること)                     ⇒清らかな鏡に万象が映じるように無心にして生活することのできる知のちからを示す。


③宝生如来(前方、右位置)
「創造力」〔平等性智(びょうどうしょうち)〕(相互扶助によって生かされているいのちの平等性)           ⇒自然と調和することによって、平等となるかたちを生みだすことのできる知のちからを示す。


④阿弥陀如来(前方、左位置)
「学習力」〔妙観察智(みょうかんざっち)〕(知覚力によって感知している世界の本質とその伝達と共有)                                             ⇒あらゆる存在のありさまを観察し、その本質を共有することできる知のちからを示す。


⑤不空成就如来(後方、左位置
「身体力」〔成所作智(じょうそさち)〕(からだによって行なう、無心の行為)                  ⇒無心の行為によって、生きとし生けるものに敬意をもってはたらきかけ、その個体としての生の輝きを発揮する知のちからを示す。

(B)「菩薩」グループ(右側ゾーン)
菩薩とは”いのちの知のはたらき”の意。いのちの知のはたらきとは、すべての生物が”知(根源意識)のちから”により自然の中で無心に共生することができる、あるがままの”いのちのはたらき”を示す。また、金剛とは”原理”の意


①金剛波羅蜜菩薩(中心位置)
「生命の原理」生命圏の存在そのものの宇宙における唯一無二のはたらきによって、あらゆる生物が生きていることを示す。(地球上に生命圏が形成されなければ、生命の存在はなかった)
②金剛サッタ菩薩(後方、右位置)
「生活の原理」すべての生物は生命維持の根幹”呼吸”のはたらきによって、その生存環境を自然界に築き、連鎖、循環し、生きることができることを示す。
③金剛宝菩薩(前方、右位置)
「創造の原理」作りだされた万物のかたちは、環境を”因”として、共通の物質(固体・液体・エネルギー・気体・空間)が収斂した”果”であることによって、すべての生物が対等の生産(衣食住の相互扶助)のはたらきを為すことができることを示す。
④金剛法菩薩(前方、左位置)
「学習の原理」すべての生物は、その”知覚”と”知(根源意識)のちから”によって、モノ・コト・空間の<色彩とかたちとうごき・音のひびき・臭い・味・感触・法則>の違いを観察し、その適性(本質)を判断する学習能力を持ち、それらを記憶し、伝達しあうことができることを示す。
⑤金剛業菩薩(後方、左位置)
「身体の原理」与えられた持ち分の”知覚”と”運動”の能力により、すべての生物がその身体のもつ個性によって、住み場所となる空間(環境)に於いて活動し、生命圏の一員としての”役”を担うはたらきを為していることを示す。

(C)「明王」グループ(左側ゾーン)
明王とは”身体の発生と成長、制御を司る生体エネルギー”の意。(そのエネルギー、今日の科学によって知ることのできる”ホルモン物質”のはたらきに相似する)


①不動明王(中心位置)
「精力エネルギー」(〔視床下部ホルモン〕体温調節・下垂体ホルモン調節・個体維持欲求・情動行動の中枢としてのはたらきに相似)を示す。
②降三世明王(前方、右位置)
「成長エネルギー」(〔下垂体ホルモン〕副腎皮質・甲状腺・性腺の制御、成長ホルモン分泌のはたらきに相似)を示す。
③軍荼利明王(前方、左位置)
「環境適応エネルギー」(〔甲状腺ホルモン〕細胞代謝・呼吸量・エネルギー産生の促進、変態促進のはたらきに相似)を示す。
④大威徳明王(後方、左位置)
「気力エネルギー」(〔副腎ホルモン〕糖バランス・電解質バランス、性ホルモンの分泌、アドレナリン等ストレス反応調節のはたらきに相似)を示す。
⑤金剛夜叉明王(後方、右位置)
「骨格形成エネルギー」(〔副甲状腺ホルモン〕カルシウム・リン酸の調節、すなわち、身体を支え、強いちからの源となる骨格形成調節のはたらきに相似)を示す。

(D)「天」グループ(左右端と四隅に配置)
①梵天(右側)
「天地と言葉の創造神」
②帝釈天(左側)
「自然の運行の支配神」
<方位の守護神>
①多聞天(右隅奥)*毘沙門天ともいう。
「福徳を司る神」<北方>
②持国天(右隅前)
「国土の秩序を支える神」<東方>
③増長天(左隅前)
「五穀豊穣と万物の成長・繁殖を司る神」<南方>
④広目天(左隅奥)
「異文化、異言語を理解する神」<西方>

以上の、

いのちの”知のちから”「五智如来」と

そのちからが繰り広げる”知のちからのはたらき”「五菩薩」と、

あらゆる生物の身体を制御している”生体エネルギー物質”「五大明王」のはたらきによって

世界は融通無碍に形成され、限りなく彩られている。

その世界は神々「天」に託された”自然の道理”となる普遍的な願いによって守られている。

この”生命圏”の構図を立体的に展示したところ、それが東寺講堂となる

こうして、空海の構想した世界観は、二十一体の神仏像のすがたとその方位をもつ配置によって、京の都の一角を占める東寺の講堂の中に出現した。

その今日の世界観に結びつけることのできる空海の示すマンダラ世界は、エコロジカルな世界を希求する時代においてこそ、ますますの輝きを増すものであると思う。

(今日尚、誰もが、その時代を越えた”空海のメッセージ”を古の都に行けば見ることができるのだ)

■講堂:立体曼荼羅

出典:https://shishi-report-2.hatenablog.com/entry/touji-mandara

◆密教における如来、菩薩、明王の関係

関係性

  • 如来悟りを開いた最高の存在であり、仏教の教えを広める役割を持っています
  • 菩薩如来を目指して修行中であり、他者を救済することに専念しています
  • 明王如来の教えに従わない者を厳しく導く存在であり、如来や菩薩が優しく教えを説いても従わない者を力強く救済します

変身と同一性

密教の教えでは、如来が菩薩や明王の姿を取ることができるとされている。これは、如来が様々な方法で人々を救済するため。例えば、大日如来が不動明王の姿を取ることがある。このように、如来が菩薩や明王に変身することは、教えを広めるための手段と考えられている。

同一の存在か?

如来、菩薩、明王はそれぞれ異なる役割と特性を持っていますが、究極的には同じ悟りの境地を目指しています。したがって、如来が菩薩や明王に変身することができるという点では、ある意味で同一の存在とも言えるが、それぞれの役割や特性を考慮すると、異なる側面を持つ存在とも言える。

このように、如来、菩薩、明王は密教において相互に関連し合いながらも、それぞれの役割を果たしている。

如来(にょらい)

如来は、仏教において最高の存在であり、悟りを開いた仏のことを指す。代表的な如来には、釈迦如来、阿弥陀如来、大日如来などがある。如来は真理を悟り、他者に教えを説く役割を持っている

菩薩(ぼさつ)

菩薩は、悟りを目指して修行中の存在であり、他者を救済することを使命としている。代表的な菩薩には、観音菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩などがある。菩薩は如来に次ぐランクであり、慈悲深い心を持ち、多くの姿で人々を助ける。

※菩薩に金剛が付加されている理由

金剛が「硬い」「不壊」を意味し、仏教の教えや悟りの堅固さを象徴しているから。具体的には、金剛波羅蜜菩薩、金剛法菩薩、金剛宝菩薩、金剛業菩薩、金剛薩埵菩薩(こんごうさったぼさつ)の五菩薩が配置されている。

これらの菩薩は、五智如来が人々を救済するために化身した姿とされ、それぞれが特定の智慧や徳を表している。例えば、金剛波羅蜜菩薩は智慧で人々を仏道に導く役割を持っている。

このように、金剛を付加することで、菩薩たちの役割や特性を強調し、仏教の教えの堅固さを示している

明王(みょうおう)

明王は、如来の教えに従わない者を厳しく導く存在。恐ろしい姿をしており、如来や菩薩が優しく教えを説いても従わない者を力強く救済する。代表的な明王には、不動明王、愛染明王、隆三世明王などがある。

出典:https://ourage.jp/popular/166013/ 不動明王と4体の明王

四天王

仏教における四方を守護する四柱の神々。それぞれの役割と守護する方角は以下

  1. 持国天(じこくてん)東方を守護し、乾闥婆(けんだつば)や毘舎遮(びしゃしゃ)を眷属とします。
  2. 増長天(ぞうちょうてん)南方を守護し、鳩槃荼(くばんだ)や薜茘多(へいれいた)を眷属とします。
  3. 広目天(こうもくてん)西方を守護し、龍神や富単那(ふたんな)を眷属とします。
  4. 多聞天(たもんてん)北方を守護し、夜叉や羅刹を眷属とします。多聞天は毘沙門天(びしゃもんてん)とも呼ばれ、七福神の一柱としても知られています。

四天王は、須弥山(しゅみせん)の中腹に位置し、仏法を守護する役割を担っている。

四天王は帝釈天(たいしゃくてん)に仕え、仏教の教えを悪から守るたに活動している。

帝釈天(たいしゃくてん)

帝釈天は、元々インドの神話に登場する雷神インドラが仏教に取り入れられたもの。

帝釈天は天界の最高位に位置し、四天王を従える天主として知られており、仏教の二大護法善神の一つであり、仏法を守護する役割を果たす。

  • 役割:仏教の教えを守り、仏陀の説法を支援する存在。また、戦いの神としても知られ、悪を打ち破る力を持っている。
  • 象徴:白象に乗った姿や、金剛杵を持つ姿で描かれることが多い。

梵天(ぼんてん)

梵天は、インドのバラモン教における創造神ブラフマーが仏教に取り入れられたもの。

梵天は宇宙の根源を象徴し、仏教においても非常に重要な存在。

  • 役割:仏陀が悟りを開いた後、その教えを広めるように勧めたことで知られている。梵天がいなけっれば、仏教が広まることはなかったかもしれない。
  • 象徴:通常、四面四臂(顔が四つ、手が四本)の姿で描かれ、蓮華や水瓶を持つことが多い。

<参考情報:空海の死生観-生の始めと死の終わり-(土居先生講演より転記:仏陀と大乗仏教&密教の見取り図)より一部抜粋>

梵釈(ぼんしゃく)

帝釈天と梵天は、しばしば対で描かれ、「梵釈」と呼ばれる。彼らは共に仏教の教えを守護し、仏陀の脇侍として重要な役割を果たす。

注)ecoの視点から梵天(ぼんてん)を眺める:天地と言葉の創造神

注)ecoの視点から帝釈天(たいしゃくてん)を眺める:自然の運行の支配神

出典:https://kousin242.sakura.ne.jp/wordpress016/%E7%BE%8E%E8%A1%93/%E7%BE%8E%E8%A1%93%E5%8F%B2/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%BE%8E%E8%A1%93/%E5%A5%88%E8%89%AF%E6%99%82%E4%BB%A3/%E6%9D%B1%E5%AF%BA%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2/