🔳活性酸素を除去する抗酸化物質を含有する野菜(ファイトケミカル=Phytochemical:植物由来)
■ファイトケミカルとは
◆植物が紫外線や害虫などから身を守りるために作りだす物資の総称
・植物の色素や香り、苦み等を構成する成分
⇒身体細胞に害を与える「過剰な活性酸素」を消去する抗酸化野菜が該当する。
⇒植物はファイトケミカル(=抗酸化物資)のおかげで『ガン』にもならないと考えられている。
・ガン生成因子の一例
⇒活性酸素が人間の遺伝子を酸化させて損害を与え
⇒正常細胞をガン細胞に変異させる事で、段階的につくられていきます。
注)・人間の身体(細胞内)には、活性酸素を消去する物質を作る働きが備わっている。
⇒抗酸化酵素SOD、グルタチオン、タカラーゼ等により活性酸素を無害な水に変換する。
⇒但し、抗酸化酵素は年齢と共にこの働きが低下し、活性酸素を処理できなくなる。
◆低下した抗酸化酵素の働きを補完する抗酸化物質を含有する野菜の摂取
・サラダ(生野菜)よりも『温野菜』のほうが効率的に抗酸化物質を摂取できる
⇒野菜を鍋等に入れて加熱すると
⇒細胞壁が破裂し
⇒細胞の中のファイトケミカルがスープの中に出てきて吸収しやすくなる。
・生野菜の細胞壁
⇒細胞をくるむ膜とそれを丸ごとくるむ細胞壁の二重構造になっています。
⇒一番外側の壁(セルロース)は非常にかたく、噛んでもすりつぶしても壊れません。
・人間の野菜消化力
⇒人間の体内では、セルロースを消化できないので、細胞の中の有効成分を吸収できない。
⇒野菜を食べた後の便を観察すると、野菜の細胞が未消化のまま、便に排泄されているのが確認できる。
⇒ファイトケミカルはサラダやジュースでは身体内で吸収されない。
・5分以上煮込むと
⇒成分がたくさん抽出され、ビタミン類、ミネラル類などファイトケミカル以外の有効成分も丸ごと溶け出すわけです。
⇒細胞内の有効成分は8割方スープに溶けだす。
⇒加熱すると生ですりつぶすよりも、抗酸化力が10~100倍にもなるのです。
⇒野菜スープにする事で、体内で発生する『活性酸素』をうまく抑制し得る。
⇒ガン予防も不可能ではない。
・ガン予防とは
⇒ガンの炎症を取り除く事であり、
⇒活性酸素を消去してくれる野菜スープがベストだとの考えに至った。
上記内容は 故前田浩・熊本大学名誉教授のインタビューから転用(副作用のない抗ガン剤の研究でノーベル化学賞候補に(2016年)。ウイルス感染で活性酸素が大量に生成、細胞や核酸(DNA)を傷つけることを世界で初めて明らかにした。1989年サイエンス誌で発表)
■前田 浩先生の発表資料:食品機能によるがん予防―特に野菜の重要性―(一部抜粋)
https://www.hosp.mie-u.ac.jp/epidemiology/_src/2177/AokiVol10_pc.pdf
⑵ 発がんの原因と予防と活性酸素の諸問題
筆者は、癌の治療法の研究以外に、微生物感染の分子病理学/炎症のメカニズムの研究を行ったが、後者の研究において、活性酸素(O2・―, ROS)の生成メカニズムを明らかにした。
その過程で、スーパーオキサイド(O₂)と一酸化窒素(NO)が
感染や炎症局所で同時に生成し、
その両者が次なる、O2・― (スーパーオキサイド) + NO の反応が急速に進行し、
パーオキシナイトライト(過酸化亜硝酸、ONOO―)が生成することを見出した。
これが極めて強力な変異原性(突然変異原性)を持つこと、
すなわち、これが DNA や RNA のニトロ化、DNA/RNA 鎖の酸化、あるいは切断を生ずることを明らかにした。
注)別発表資料『癌研究における分子生物学パラダイムの苦悩40年にわたる苦戦の経験から原点回帰へ』より
筆者(前田)らは1980年代後半にインフルエンザウイルスによる肺炎の原因をマウスのモデルで解析していた(6).われわれの興味はこの肺炎でマウスを死に至らしめている病原因子(分子)は何かということである.つまり,分子生物学的証拠の裏づけによって,病原分子(物質)を見極めるための研究である.
そのマウスを死に至らしめるウイルス性肺炎において,ウイルスそのものが病死の原因であれば,肺のウイルス量は致死的になるほど増加し,死期に至って最高値になるはずであった.
微生物学における最も基本的な「コッホの原理」で言えば,もしある病気の原因が,ある特定のウイルスであれば,その同じウイルスがその感染局所から必ず発見(同定)されるはずである.
しかし,驚いたことに,われわれのインフルエンザウイルス感染症モデル(マウス)の肺の局所を調べてみると,感染直後からウイルス量は漸増してくるが,死に至る極期にはウイルスは発見されないのである.それでは何がウイルスを殺した犯人(病原分子)かという謎が残った*5.
われわれは多面的に分子レベルで検討した結果、
肺胞中に活性酸素(O2・−)の過剰産生(正常の200~600倍も)が起こっていることを発見した.後に一酸化窒素(NO)という単純な分子も同時に過剰生成していることも見いだした(7, 8).
活性酸素分子(ROS*6)はおおむねランダムにDNAあるいはRNA上の標的分子(残基)と反応する(図1).
このような遺伝子の変異に加えて、細胞傷害・細胞死を引き起こし、さらにまた、生体は損傷を受けた細胞を修復するため、あるいは細胞自身の分裂・増殖を起すときにも DNA の復製のエラー(ミスコピー)を高率に引き起こすことが知られている。
細胞の増殖率が高いほど、DNA の復製が多くなり、変異細胞の生ずる確率が高くなる。その結果として、細菌や癌細胞の薬剤耐性株の形成の原因になり、その変異した細胞はがん細胞の発生につながっていることである。
つまり、炎症や化学物質による ROS やNO が生ずるような環境では癌化に向かってより高頻度に遺伝子 DNA の変異が進行することになると言える。
そこでこれら ROS などを中和することは、変異細胞の生成に対して重要な予防になると考えられる。
このような予防機能をもつ ROS や RNS を中和する食品成分を摂取するよう心がけることは、大変重要である。
以下、そのような観点から、野菜の摂取による、癌予防、メタボ疾患(糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、骨粗しょう症、肥満など)の予防を論じたい。また、食事の内容が大切なことは勿論であるが、運動もそれに劣らず重要であることを申し添えたい。
毎日の食事に野菜スープをとり入れることは、老化予防やさまざまな生活習慣病の予防に確実につながるといわれている。
老化をはじめ心臓病、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)やがんなどの生活習慣病には、活性酸素がかかわっている。
ファイトケミカルが溶け出した野菜スープをとることにより、活性酸素の害を効率よく退けることができるからです。
厚生労働省は、成人が1日にとる野菜の摂取量の目標を350gに置いています。この量は、スープにすれば野菜のカサが減り、やすやすと取ることができます。
また、おなかが満たされ、主食やおかずの食べすぎを防いで、ダイエットにも役立ちます。
さらにまた、野菜スープは毒性の強い油の活性酸素(過酸化脂質ラジカル)の害も防ぐと考えられます。
ウシやブタなど赤身の肉や、揚げ物、炒め物などの高脂肪食が大腸がんや動脈硬化、高脂血症(脂質異常症)の原因といわれています。
脂質の多い食事をとると、血液中の脂質が増えます。
脂質が活性酸素によって酸化されると過酸化脂質ができます。
内臓にたまった過酸化脂質は、赤身肉などに含まれている鉄と反応して脂質ラジカルに変化します。
脂質ラジカルは、活性酸素のなかでも、とりわけ寿命が長く、体内をぐるぐるまわり続け
て細胞に対する毒力として細胞やDNAを傷つけます。
大腸の便のなかで脂質ラジカルが慢性的に発生すると、大腸炎から、さらには大腸のDNAを傷つけ大腸がんを引き起こします。
野菜スープは、
この凶悪な脂質ラジカルも消去し、
遺伝子の損傷や細胞のがん化の促進(プロモーター作用)を抑えることを、
私たちは実験で証明しています(Carcinogenesis (2013)34, 2833)
注)ミトコンドリア内の電子伝達系で生成する活性酸素種:一重項酸素¹O₂、スーパーオキシドラジカルO₂⁻・、過酸化水素H₂O₂、ヒドロキシルラジカル・OHは酸素分子O₂(三重項酸素³O₂)の4電子e⁻還元過程で活性酸素が生まれる。詳細内容はタイトル『細胞に有害な活性酸素&無害化する抗酸化酵素』及び『抗酸化食品摂取&生活活動』で生活習慣病(主に糖尿病)の改善を図るにて記載
■関連情報例
・ファイトケミカル野菜例
・一酸化窒素NOが活性酸素に晒されると
⇒NOは血管を広げて血圧を下げるように働く。
⇒一方、活性酸素(スーパーオキシドO₂⁻・)があると
⇒一酸化窒素NOを消去させ、血管がぎゅっと縮まり、圧縮され血圧が上がる。
⇒O₂⁻・ (スーパーオキサイド) + NO の反応が急速に進行し
⇒ パーオキシナイトライト(過酸化亜硝酸ONOO⁻)が生成され、DNAを損傷する。
・抗酸化物質である尿酸、フラボノイド、ポリフェノール
⇒活性酸素(ONOO⁻)を消去し、
⇒NOの寿命が長くなり、結果として血圧が下がる。
🔳野菜スープは『慢性炎症』にも効く
◆細胞に糖を取り込むときに働くのがインスリンというホルモン
・体内に取り込まれた糖質(炭水化物)
⇒ブドウ糖に変換され、細胞に取り込まれてATPを産出する材料になる。
⇒しかし、ブドウ糖が大量に細胞に入ると、
⇒ATP産出でも消費しきれず余ったブドウ糖は『脂肪細胞』として体内に貯蔵される。
脂肪細胞が
活性酸素(一重項酸素¹O₂)により酸化され
『過酸化脂質=肥大化脂肪細胞』になる酸化メカニズムもある。
過食や運動不足を起因とした高血糖状態は
脂肪の蓄積を招き、
その脂肪細胞から出る炎症性サイトカインが
インスリン抵抗性を引き起こし、
糖尿病になる原因の一つと考えられている。
NF-κB:TNF-α、IL-6などの多くのサイトカイン(炎症促進性)の発現にも関与
TNF‐α:インスリンの働きを妨げ、血糖値を上げる
MAPキナーゼ(MAPK):代謝、増殖、分裂、運動、アポトーシス(あらかじめ予定されている細胞の死)など、細胞のさまざまな機能に関与