■南中高度
・南中とは?
⇒太陽が真南にきた瞬間
・南中高度とは?
⇒南中時の地面との角度。
⇒季節によって変わる。
■冬の日射が豊富な太平洋側6地域
◆太陽の陽射しだけで「暖房いらずの間取り」に近づける
~リビングが南面で上下・左右が隣戸で囲まれた築30年のマンション~
(断熱等級3:1992年(平成4年)省エネルギー基準)
・朝から夕方まで『晴天』なら無暖房化も視野に入れる施策
①リビングの単板ガラス(アルミ窓:1.9m×3.1m(Fix窓、引違窓構成))を
⇒真空複層ガラス(熱貫流率Uw値:2.6W/(㎡k))に取替。
◆冬季の朝日の力(計測日:1月8日)
・リビング室温19.1℃(AM6:50)、20.5℃(AM8:00)
⇒採光型ハニカムブラインド22℃、二重レースカーテン23℃、真空複層ガラス面24.5℃
⇒室温より窓辺の表面温度が高い。(AM8:00)
⇒窓からの陽射しで暖かさを体感でき、既に適温ゾーンに入っている。(無暖房)
注)日出時刻:AM6:50
◆昼間の強烈な陽射しを『最大限』にリビングに取り込む事で
・朝から陽射しが和室の一部まで達し、床面への陽射しで足元は暖かさを実感。
⇒陽射し(=輻射熱)が『床暖房機器』の代替として機能する。
・リビングに陽が射している床表面平均温度
⇒AM9:00:25℃前後、PM1:00:31℃前後(1月8日)、PM4:00:23℃前後。
⇒PM6:00~PM11:00:21℃前後(エアコン23℃設定使用)。
・終日、リビングでサーキュレータを稼働させ(DCモータ:省エネ・静音型)
⇒上下温度の均一化対策を講じる事で
⇒リビングに接する和室とキチンもほぼ均一的に室温に近い温度で維持される。
⇒開放した和室・キッチンの『壁表面温度』を室温に近づける。
注)1月8日のリビング温度:AM8:00で20℃、正午で25℃、PM3:00で23.4℃、PM4:00で22.5℃。
②北面の室内(12℃前後)には熱源が無いので冬季は不使用。(子供が巣立った家庭なら)
⇒1日の生活ゾーンに入れなくと生活は出来る。
⇒外壁(コンクリート&タイル貼り)が蓄冷する。
③玄関(北面:12℃前後)に通じる廊下に引き戸を設置して、玄関を風除け室にする。
④廊下が閉空間になり、南面と北面の中間温度エリア(17℃前後)なる。
⇒廊下に接するトイレも寒さが和らぐ。
⑤脱衣室の一方のドアが南面の浴室、他方のドアはキッチン。
浴室の窓仕様は『熱貫流率が一番低い:1.0W/(㎡k)』日射遮蔽型のLow-E真空ガラス。
◆日射(ダイレクトゲイン)と開口部の熱損失との収支対策
・真空複層ガラス(熱貫流率2.6W/(㎡k))と採光型ハニカムブラインドの重ね使い
⇒夕日が沈む前にハニカムブライドを下ろして断熱性を高め、
⇒真空複層ガラスの熱貫流率2.6W/(㎡k)を更に低くして、熱損失を抑えることが出来る。
・ハニカムブラインドのU値を仮定(5.5と4.5の二ケース比較)
⇒リビングの窓辺(2.6W/(㎡k)+ハニカムブラインドの組合せで)の熱貫流率は
⇒概ね1.77~1.65W/(㎡k)を想定。
・リビング(2.6W/(㎡k)+ハニカムブラインド)、浴室(1.0W/(㎡k)+ブラインド)比較
⇒PM5:30/リビング温度は21℃、浴室温度は22℃。
⇒PM6:00/エアコン23℃設定で暖房開始。PM11:00までリビング室温23℃近くで一定。
⇒翌朝の最低リビング室温は19.1℃。
(屋外温度/0時:1℃、3時:-1℃、6時:-2℃、9時:3℃、12時:8℃、15時:9℃)
⇒WHOの「住宅と健康のガイドライン」の中で健康ために18℃以上を保つ水準をクリア。
注①)翌朝の浴室温度18.1℃(就寝時にブライドを開けた状態で)
注②)1月6日AM9:00/リビング室温20.5℃、浴室温度19.5℃。PM12:00/リビング23.5℃、浴室21.5℃。
PM3:00/リビング23.1℃、浴室22.4℃。PM4:00/リビング21.8℃、浴室21.9℃。
注③)リビングの床表面平均温度:AM9:00:25℃前後、PM1:00:31℃前後、PM4:00:23℃前後。
PM6:00~PM11:00:21℃前後(エアコン23℃設定使用)。
注④)計測日時:1月5日深夜~1月6日午後11時
注⑤)リビング湿度:日中は概ね41%前後、夜間は概ね45%前後。
注⑥)ハニカムブラインドを(組合せ想定熱貫流率Uw1.77~1.65W/(㎡k)下ろすと
⇒夜間、窓辺でも寒さを感じない。(リビング室温23℃近くで一定、床面21.5℃前後)
(ハニカムブラインドのPM11:00の表面温度:上部22.5℃、中間21.5℃、下部20℃)
注⑥)アルミサッシ枠部で結露が起きる。
⇒屋外側0℃、室内側20℃、湿度30%以上の環境条件にて。
■寒い冬には積極的に陽射しを取得~蓄熱検討~
◆少しの工夫の積み重ねで快適性を向上
・窓辺に接する床(縦方向に30㎝~50㎝程度)への蓄熱対策
⇒昼間の強烈な陽射しを床・壁に直接受けるので
⇒『窓際の床面』に蓄熱タイル等を置く(可変性)事で陽射しを蓄熱し、
⇒夜、陽が落ちてから
⇒ゆっくりと蓄熱タイル等から熱を放出してくれる側面と
⇒一方、窓辺の床面へのコールドドラフト現象で冷やされる側面も加味しても
⇒リビング全体では室温低下が穏やかになるのではと予想する。
注)南面浴室での夜間の室温傾向が蓄熱効果を感じさせる。
⇒タイル貼り(天井とドアを除く)、窓はLow-e真空複層遮熱型(Uw値1.0W/(㎡k))
・直接蓄熱方式を取り入れる
⇒居住空間の床・壁・天井等が蓄熱部位で、
⇒放射や対流によって直接的に熱の授受を行う方式。
・ダイレクトゲイン手法
⇒熱を吸収する面と放散する面が同一。
⇒床・壁・天井等、日射を受けた部分から熱を放散させる自然暖房の手法。
・日射のない曇り・雨等の悪天候の日
⇒太平洋側6地域の冬期における悪天候の日数は少ないが、
⇒過大な熱容量(タイル等の設置面積を広く占有すると)は逆に底冷え要因になる。
⇒『窓際』に蓄熱タイル等の蓄熱材の占有面積は少し設置するのが望ましいと思われる。
・太陽熱を貯える素材の違い
⇒木とコンクリートだったら
⇒コンクリートの方が一度暖まると冷めにくい特性をもっている。
⇒太陽光を多く取り入れて、熱を蓄える床部分には
⇒蓄熱タイルなど熱容量の大きな素材を一部取り入れるのが効率的。
◆比熱、密度、容積比熱について
【比熱】:物質1kg の温度を1℃(K)上げるのに必要な熱量。
・比熱が大きい物質
⇒温めるために必要な熱が多い。つまり、温まりにくい物質。
・比熱が小さい物質
⇒温めるために必要な熱が少ない。つまり、温まりやすい物質。
・比熱の値が大きい物質ほど
⇒温まりにくく、冷めにくい性質を持っている。
【密度〕:物質の単位体積あたりの質量。
【容積比熱】:体積あたりの必要熱量。
・「比熱」と、「密度」をかけあわせた数値。
⇒壁材や断熱材などの熱容量を表す際に用いられる。
・単位は
⇒容積比熱=kJ/㎥・K
⇒1㎥の物質の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量
・容積比熱が高いほど
⇒蓄熱性能が高いと言える。
・蓄熱性能が高い建材が使われている建物
⇒「冷えにくく、暖まりにくい」と言われている。
・冬場
⇒日射や暖房で一度暖まった蓄熱建材が、
⇒暖房を切ったあとでも室内にゆっくりと熱を放射し、冷えるのを抑える。
・夏
⇒蓄熱建材が、暖かい室内の熱を吸収し、室内の温度上昇を抑え涼しく保つ。
・蓄熱建材
⇒温度の上下変化を緩やかでゆっくりにし、冷暖房の需要を抑え、省エネに繋がる。
◆コンクリートの蓄熱特性(容積比熱:2,000kJ/㎥・K、有効厚さ0.2m)
・冬の日当たりが良い南面
⇒陽光の熱を自然に蓄熱し、冬は暖かくなる。
・冬の日当たりが悪い北面=蓄冷
⇒陽光は全く届かず、冷えた外気温を蓄え、冬は寒くなり過ぎる。
◆マンションの暑さ・寒さは位置によって違う
・上下左右前後(南北)の 6 面の内、前後(南北)を除き隣戸に囲まれていると
⇒隣接住戸が20 度前後の室温を維持しているなら、
⇒温度差がなくなるため、熱の移動(熱損失)は発生しない。
注)冬季晴天で南面リビングは前日PM11:00 から翌日PM6時頃まで無暖房。
・リビングの室温
⇒AM6:50で19℃、AM8:00で20℃、正午で25℃、PM3:00で23.4℃、PM4:00で22.5℃。PM6:00で20.5℃
・リビングの床表面平均温度
⇒AM9:00で25℃前後、PM1:00で31℃前後、PM4:00で23℃前後。
⇒PM6:00~PM11:00:21℃前後(エアコン23℃設定使用時間帯)。
・リビングの天井も室温近辺。
・一方、北面の室温は12℃前後。床表面平均温度も12℃前後。天井も12℃前後。
⇒自然の熱源(太陽の陽射し)の有無で室内温熱環境が大きく異なる。