・詳細内容はメニュー 『光合成の知見を積極的に活用する』のサブメニュー『③光合成速度:光量子束密度』にて記載。
■植物に必要な光と人間が感じる明るさの『指標=光の単位』の違い
光合成はメニュー『明反応(光合成電子伝達反応)』で述べたように電子の働きによる。
この電子を励起させるのは光量子(電子の粒)なので、光量子のエネルギーの単位で、光強度を表示しないと、光合成に対する光の効果を正しく評価する事はできない。
一方、人間の目の感度に合わせた明るさの単位が照度である。単位はルクス(lux)である。尚、照度は人間にとっての光の感じやすさを表した指標であり、植物の光合成速度を測る指標ではない事に注意を払う必要がある。
この為、植物栽培における光環境の評価には照度ではなく、光量子束密度(μmol/m⁻²/s)が用いられる。
■3.遮光率(作物選定と計画地面積に対するパネル被覆率 )検討
・営農型太陽光発電設備下での栽培試験結果 事例
(宮崎大学農学部の研究圃場に営農型太陽光発電設備を設置し、下部の農地で栽培試験を実施した調査報告書より)
⇒ 実験区は設備によって遮光しない対照区、パネル角度を水平(0°)に固定した固定区、太陽高度に垂直になるようにパネル角度を変化させた可変区の計 3 区を設けた(図20)(被覆率は62% ) 。
注1:決定係数Rの数値情報は記載されていない。
注2:回帰直線の求め方と予測の仕方は、メニュー「AI(深層学習)の概要を学ぶ」のサブメニュー『DNN(Deep Neural Networkを学ぶ』の第2ステップ : 最小二乗法 (近似解)の計算プロセス(DNNの前段階学習)にて記載。
体験的(週末家庭菜園を実践中)には、メニュー『生育予測モデルの方程式~AIへの展開』で述べたロジスティック曲線の方が、データと予測の当てはまり具合に関してよりフィットするのではと感じている。 (個人的な見解)
尚、同報告書では、これらの作物では栽培期間は延びるものの、収量は十分に得られることが明らかとなった。ただし、ミズナは収穫適期を過ぎると抽だいして商品価値がなくなるため、収穫時期を逃さないように注意が必要であると記載されている。
尚、詳細な内容は下記URLにて紹介されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jircl/07/0/07_127/_pdf/-char/ja
<どのような作物が適するのか>
植物には強い日照を好むもの(陽生植物)と、そうではないもの(陰生植物)がある。
陽生植物の代表はサトウキビやトウモロコシ等。
陰生植物の代表はコンニャクやサトイモ等。
ただし、それぞれの区別は絶対的なものではなく、連続している。
コムギよりもダイズが、ダイズよりもイネがより陽生植物の性質が強い。これは、ある一定以上光の強度を高めても光合成の速度が増えなくなる点(光飽和点)に基づいた分類だ。
光飽和点以上の光を与えても作物の成長が速くなることはない。
耐陰性での分類を以下の図にて紹介。
現在、光飽和点の高低(弱・中・強耐陰性植物)と照度単位klx(晴天の直射日光約100klx、日陰は約10klx )の関係から大よその遮光率を推定しており、極めて漠然的である。
一般的に利用されている遮光率に対応する農作物品目の目安は以下である。
<遮光率:目安>
・20%~30%:水稲、トマト、スイカ、果樹
・30%~50%:キュウリ、サツマイモ、大豆、たまねぎ、牧草
・50%~80%:ミヨウガ、アシタバ、サカキ、キノコ、ミツバ、フキ。(品目は限られる)
・『施設園芸学分野における太陽光発電の可能性と課題』の報告書を再掲示
これらの作物では栽培期間は延びるものの、収量は十分に得られることが明らかとなったと記載されている。
栽培期間に注目して、以下の着眼点より遮光率を導けないかと仮説を立てる。
今後、農業分野にIoT&AIの組合せ活用事例が多くなると予想され、内的成長率 r で遮光率の評価もできるのではと思う。(個人的な見解)
例えば、IoTで入手したデータより対照区の r が0.25(遮光率0%)で成長すると仮定する。その際、固定区の r は0.2(遮光率62%)、可変区の r は0.15(遮光率70%)に対応すると裏付けられたなら(一定幅のバラツキが有る:σ)、以下の近似的な等式が導けるのではないか?。
真の光合成速度≒内的成長率 r≒遮光率(近似的な等式)
メニュー『生育予想モデルの方程式~AIへの展開』より再掲示
又栽培期間の違い(対照区:71日、固定区:103日、可変区:111日)を回帰直線で求められているが、この分析評価を出荷価格データと関係付ける事で、供給量が多くなる対照区の出荷価格帯(値崩れ)に対して、相対的に供給量が少なくなる可変区の出荷価格帯は上方シフトできるのではないか?
出荷価格帯の対応策として営農型太陽光発電設備は簡易的な施設園芸へと進化する事にもなり得ると思うが。
・14品目の指定野菜
⇒キュウリ、キャベツ、サトイモ、ダイコン、タマネギ、トマト、ナス、ニンジン、ネギ、ハクサイ、ピーマン、ジャガイモ、ホウレンソウ、レタス
・ 日本では農林水産省が、消費量の多いものを指定野菜として定め、作る大きな産地を国が指定産地という制度で安定生産する仕組。
⇒こうした仕組みは地域農業の安定的な成長を促し全国で約900の産地が指定されて野菜が生産されている。
今日、時代を前に推し進める動きとして、AI(深層学習=DNN、CNNは判断機能)&IoT(データ生成機能)、ブロックチェーン(信頼性の担保をするデータベース機能)の活用が農業生産現場で利用され始めている。