■講演1「前立腺がんの検査・診断とリスク別治療戦略~過剰治療を避けるために~」
出典:NPO法人腺友倶楽部 / 一般社団法人日本泌尿器腫瘍学会 / 公益社団法人 日本放射線腫瘍学会 Mo-FESTA CANCER FORUM(モーフェスタキャンサーフォーラム)2024(男性がん総合フォーラム)
小路 直(東海大学医学部付属病院 腎臓泌尿器科教授)

■尿道括約筋
・尿を我慢できる筋肉
⇒前立腺全摘手術の際に傷つけないように細心の注意が必要
⇒尿漏れの原因になる

■勃起神経(緑色)

■前立腺内の血液は背骨(椎骨:ついこつ)の中を走る椎骨静脈を通って、心臓に還流
・前立腺がんの進行(悪化)に伴い
⇒椎骨静脈(青色)によって
⇒背骨に転移し易い
















■系統的生検の問題点
・がん組織細胞を外す可能性がある




■浸潤するがんのサイズ
・直径5㎜以上のサイズ
⇒MRIで見つかるようになった(2000年代初頭)
※MRIで識別できるがんサイズ:8㎜


■マルチパラメトリックMRI
・単純MRI(T2強調、拡散強調:DWI)に
⇒造影(Dynamic)MRIで経時的に血流を調べる
※ADC:細胞密度(黒ぽい部分)、DWI:水分子の拡散(白い部分)

■PI-RADSスコアの評価
・1~2:ほぼがんは無い
・3:悩む
・4~5:ほぼがん

■従来のアプローチ

■事前にMRIの積極的活用
・PI-RADSスコアの評価を参考に

■MRI超音波画像融合標的生検
・2022年4月、保険収載

■超音波診断
・がんの位置が分からない

・事前にMRIでがんの位置を特定(PI-RADSスコア:3~5)

■MRI画像と超音波画像を融合
・狙い(がん細胞)を定めて生検を行う

↓

↓
左図赤色部にがん細胞領域が特定される

↓
針の位置も記録される(再現性)


■3Dプリンターで実際の前立腺臓器を作成
・画像を見て、治療方針を打ち出す


■造影剤を使用した画像診断
・造影CT検査
⇒全身検査


■再発リスクを考慮したリスク分類


■前立腺癌診断ガイドライン2023
・中リスク、高リスク
⇒本気で治療しないといけない段階


・治療期間(ロボット支援下手術/外照射)

■外科的切除術
・前立腺全摘と精嚢全切除(点線部の範囲)
⇒尿道括約筋部と膀胱で吻合
⇒尿漏れ原因になる
⇒骨盤底筋運動で尿漏れを少し改善(朝、昼、夜に20回)




・縫合操作(膀胱と尿道括約筋間)



■前立腺全摘後の病理診断
・前立腺がんの分布タイプ
【現在】
・マルチパラメトリックMRI画像診断
・MRI超音波画像融合標的生検
⇒の組合せで
⇒ある程度前立腺がんのパターンが分かるようになってきている

■治療方針:多発タイプ

■治療方針:低悪性度タイプ

■治療方針:限局タイプ
⇒Focal Therapyへの展望~ 臓器温存へ:制約条件有り ~




■MRIで見えるがん:可視病変
・5年間で治療をしなくても良い割合の低下
⇒グリソンスコア3+3:72.3%
⇒グリソンスコア3+4:33.8%
※監視治療対象の前立腺がん患者は気が抜けない

■Focal Therapyの視点が生まれる
・手術・放射線治療以外に





・1個当たりの照射量(3㎜×10㎜)

↓

↓

■照射実験例(鶏肉で代替)

■内部の照射焦点範囲のみ熱変形
⇒がん組織領域のみに狙いを定めることができる

■Focal Therapyの適応(適応制約)


■再発率







■ホルモン療法




■ホルモン療法が効かなくなると
・抗がん剤治療


■MRI超音波画像融合生検とFocal Therapy~ 臓器温存への応用と今後の展望 ~
出典:https://pc-pc.org/wp/wp-content/uploads/moforum2019.pdf
京都府立医科大学泌尿器科 教授 浮村 理 先生 2019 年 11月24日(日)











■保険適応外:凍結治療(フォーカルセラピー)





<参考情報:①>
■MRI-経直腸超音波融合画像ガイド下前立腺生検とは
出典:鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野
https://www.med.tottori-u.ac.jp/urology/introduction/advanced/zenritsusengan/seiken.html
2017年8月に、超音波画像診断装置KOELIS TRINITY(株式会社アムコ)を導入しました。
山陰地区では初の導入となり、本邦では5施設目の導入となります。
本システムは前立腺がんの診断の際に、より正確な前立腺針生検をサポートするシステムとして開発された超音波画像診断装置です。

■前立腺がんの画像診断には、
・主に経直腸超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(核磁気共鳴画像)検査などがありますが、
⇒前立腺がんの局在診断についてはMRI検査が最も診断能力に優れています。
⇒しかし、MRIガイド下での前立腺針生検法は一般的な普及には至っていません。
・このため従来法では
⇒MRI画像を医師の頭の中でイメージしつつ、
⇒経直腸超音波検査を用いて前立腺針生検を実施していました。
・このような理由から、MRI画像で前立腺がんが疑われていても、
⇒超音波ガイド下の針生検では、
⇒がんを発見できない場合があったと推測されます。
・今回導入した超音波システム(MRI-経直腸超音波融合画像ガイド下前立腺生検)を用いることで、
⇒MRI画像を超音波診断装置内に取り込んで融合画像を構築することが可能となります。
⇒つまり、MRI画像にて前立腺がんを疑う部位を超音波画像と融合させることで、
⇒前立腺がんが疑わしい部位をより正確に組織採取することが可能となります。

■また、前立腺の動きや変形を自動的に補正した3D立体イメージとして表示することで、
⇒前立腺針生検の精密さと信頼性の向上が期待されています。
⇒本システムを用いたMRIと超音波画像の融合によるFusion 前立腺針生検法では、
⇒従来の超音波画像のみの前立腺針生検法と比較して、
⇒前立腺がんの検出精度の向上が報告されています。
・また、本システムでは超音波画像による前立腺の3D立体イメージを使用して、
⇒実際にどの部位の針生検が行われたかを立体的に表示して記録することも可能です。
⇒前立腺の3D立体イメージへのがんの局在をマーキングする機能により、
⇒ロボット支援前立腺全摘除術時における手術ナビゲーションに応用することも可能となり、
⇒将来的にはこれらの機能を利用して前立腺がんの局所療法への応用も期待されています。

<参考情報:②>

下図動画紹介時間


出典:「前立腺がん治療における手術の進歩と役割について」 社会医療法人 熊谷総合病院 泌尿器科 川島清隆氏
<参考情報:③>
■PSMA-PETの活用

■術後のフォローアップ

・再発
⇒生化学的再発(PSA値再発:上昇)
⇒画像検査(CT、MRI、骨シンチ)では検出できない段階

・PSMA-PET(保険外診療:自己負担/¥25万円)

・放射線治療を行うために
⇒生化学的再発(PSA再発)の段階では
⇒PSMA-PETでがん細胞を特定する必要がある
⇒IGRT(画像誘導放射線治療)の検討

・まとめ

※「生化学的再発(PSA再発)」:
⇒治療後にPSA(前立腺特異抗原)値が上昇することで再発を示唆する状態を指します。
⇒具体的には、前立腺全摘除術後にPSA値が0.2ng/ml以上に2回連続で上昇した場合、
⇒または放射線療法後にPSA最低値から2.0ng/ml以上の上昇があった場合に生化学的再発と診断されます。