筋肉を使って糖を消費する:糖尿病予防

🔳運動(有酸素運動)はインスリンとは異なる経路で血糖値を低下させうる

「何故 糖尿病が起きるか」

・YouTube動画【炭水化物は太らない理由】の三つの問題提起

⇒人間の身体は元来太らないようにできている。

⇒科学的に証明されている事実。

⇒糖質が体で処理されるメカニズム!糖尿病も実は遺伝じゃない。

京都大学名誉教授 森谷敏夫 先生の動画対談内容を以下に紹介する。

【炭水化物は太らない理由】科学的に証明されている事実。糖質が体で処理されるメカニズム!糖尿病も実は遺伝じゃない。【京都大学名誉教授 株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役 森谷敏夫 先生】

食事摂取により、身体部位の何処でどれ位の割合で糖質(炭水化物)は取り込まれるのか?

具体的には「筋肉と脳」で糖質がエネルギーとしてどれだけ使われているのか?

糖尿病の実験・人の研究で有名なデフロンズ先生(DeFronzo)の研究事例から、

炭水化物(ブドウ糖)のエネルギーは

優先的に脳で20%が消費され、

筋肉で70%の糖質を大量に消費する。

・その他臓器で10%消費されている(通常の健康な人の割合構成)

と紹介されている。

出典:左図)月刊糖尿病 2015/1 Vol.7 No.1                            右図)https://www.nutas.jp/category/knowledge/id1956.html

2型糖尿病患者(生活習慣病患者)は

筋肉で糖質を消費する割合が30%前後(健康な人は70%を消費)となっており、

糖を取り込む機能が大幅に低下していると指摘されている。

但し脳は健康者と同様に20%を消費。

血液中のブドウ糖を細胞に運ぶのが「グルコーストランスポーター:GLUT4」で、これを動かす原動力が

『インスリン』であったり

出典:月刊糖尿病 2015/1 Vol.7 No.1

・運動してエネルギーを使った時にエネルギー不足であると『筋肉がシグナルを発してブドウ糖を取り込む』。

⇒この動きはインスリンとは独立したメカニズムで働き、筋肉がいくらでもブドウ糖を取り込む事ができると指摘されている。更に筋肉は立ったり座りたりする際に「糖と脂肪」を燃焼させる臓器でもあると述べらている。

注Ⅰ)グルコーストランスポーター(GLUT4):血糖が筋組織細胞内に入るためには、細胞内部に存在する糖輸送体タンパク質(GLUT4)の助けが必要となる。

注Ⅱ)GLUT4は主に脂肪細胞、骨格筋、心筋に認められ、インスリンがないとき細胞内に沈んでいるが、インスリンにより細胞膜上へと浮上してグルコースを取り込む。

注Ⅲ)このGLUT4を細胞膜上へ導くシグナルとして、

『インスリンシグナル』と、

『インスリンに依存しないAMPK=AMPキナーゼ』を介する経路

 が知られている。

出典:左図)https://sprint-condition.info/category22/category23/entry411.html
出典:左図)https://metabostudy.hatenablog.com/                       右図)薬に頼らず痛風発作が防げる!尿酸値リセット 著者:細谷龍男

注Ⅳ)AMPKは細胞内のAMP/ATPとADP/ATPの比率をモニターするエネルギーセンサー。

出典:https://www.kango-roo.com/learning/2102/

注a)ATP-CP系:ATP-CP系は、筋内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADPにリン酸を与えることでATPを再合成するという働きを担っている。

出典:https://build-up.jp/health/3854/

注b)解糖系(乳酸系):グリコーゲンがピルビン酸へと分解され、そして乳酸へと還元される一連の反応経路を解糖系と呼び、この時に発生するエネルギーがATPの産生に用いられる。

出典:https://tricraft-jp.com/energy-atp/  

注c)有酸素系:ピルビン酸や、脂肪が分解し遊離脂肪酸から生成されたアセチルCoAがミトコンドリア内でTCA回路に取り込まれ、複雑な過程を経て処理される。その後、電子伝達系に入り、そこで多くのATPが再合成される。

出典:左図)https://ameblo.jp/soulcook/entry-12038819337.html

2型糖尿病患者(生活習慣病)が10人中1人(世界的にも日本においても)の割合まで増えた理由として、

糖質の摂り過ぎと言うより

運動不足(筋肉を動かさない=糖を消費しない)が理由であると森谷先生は判断されている。

ご飯(炭水化物=ブドウ糖)を減らしても、筋肉を使って運動しないので糖質(ブドウ糖)が少し余る。

そうするとインスリンがすい臓から分泌され、その糖が身体の中にグリコーゲンとか脂肪として蓄えるが、普段から運動不足の人は万年運動不足(筋肉でブドウ糖を取り込む機能が大幅に低下している)なので、十二分に糖質を消費できない身体になっており、その度にすい臓を酷使しインスリンを分必して悪循環を起こさせ、数年後にはすい臓は疲弊していき、十二分なインスリンが分泌できなくなったり、インスリン抵抗性によりインスリンの効きが悪くなってくる。

出典:https://ycl.jp/diabetes/page-71/

以上のプロセスを経て2型糖尿病を発症する。

筋肉を使って糖を消費する事に関して、NASAの宇宙飛行士事例紹介は印象に深く残った。

宇宙飛行士が2週間の無重力フライトから帰ってくると、糖負荷テスト(糖尿病の検査)が実施され、糖尿病の患者よりも圧倒的に悪くなっている。

出典:宇宙に生きる NESW LETTER 2018 04 宇宙からひも解く 新たな生命制御機構の統合的理解 A01 力刺激と代謝、宇宙飛行士と寝たきり老人の接点を分子生物学的に解明する 

無重力状態にいると筋肉が全然使われないので、超運動不足を宇宙飛行士は経験するのである。

血液中のブドウ糖を細胞に運ぶ「グルコーストランスポーター」の数が半分以下になっている。

出典:左図)月刊糖尿病 2015/1 Vol.7 No.1                           右図)https://mainichigahakken.net/health/article/post-1183.php

同様に通常の人でも運動不足が長く続くと宇宙飛行士のように「グルコーストランスポーター」の数が半分以下になると指摘されている。

2型糖尿病の根源として

森谷先生は運動不足に焦点を当てられている。(炭水化物=ブドウ糖の70%は筋肉で消費)

『筋肉を動かす』その時々に脂肪も燃やすし糖質をいくらでも使う。

筋肉は『大量に糖質と脂肪を燃焼する』臓器であると指摘されている。

筋肉が糖を取り込む際、インスリンを全く必要とせず、別のやり方でグルコーストランスポーターを動かせるとの見解(AMPキナーゼの経路)は、新たな視点提示であり、薬にたよらず2型糖尿病の改善活動への強い動機にもなる。

出典:左図)https://yoshimasa-naika.jp/diabetic/shidou45.html                  右図)https://mainichigahakken.net/health/article/post-1183.php

注)運動(筋収縮)はインスリン情報伝達系とは別の経路で、 筋細胞内への糖取り込みを促進することが明らかにされ、その経路にAMPK(=AMPキナーゼ)の関与が考えられている。

 尚、Tarazan 2019.05.06「エネルギーを知らない馬鹿者が多すぎる」運動医科学の権威に、叱ってもらう の対談で森谷先生はAMPキナーゼについて以下のように述べらている。

https://tarzanweb.jp/post-188214?heading=6

カラダに取り入れた糖の7割は筋肉で使われます。運動することでAMPキナーゼという酵素が活性化し、筋肉の細胞に糖を取り込むグルコース・トランスポーターという輸送体が働きます。その結果、インスリンに頼らずに糖代謝ができるんです。

ところが糖尿病に陥ると筋肉がなまくらになってインスリンにすべてを頼らざるを得ない。それで膵臓が疲弊してしまいます。また、運動不足の人も同じようにインスリンにばかり頼ることでグルコース・トランスポーターが減り、糖をうまく代謝できなくなるんです。

(対談相手の質問)運動不足で筋肉の性能が落ちるんですか! そのAMPキナーゼとかグルコース・トランスポーターを働かせるにはどんな運動をしたら!?

なんでもいいんです。歩くだけでも。1か月くらいのウォーキングやジョギングでグルコース・トランスポーターは1.9倍くらい増えるといわれています。筋トレは運動後も糖の取り込みが起こるから、なおいいですけどね。

(森谷先生)食わずに運動しないから太るんだ! とちゃんと読者に伝えてや!

この文脈からNEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis=非運動性熱産生)を紹介されている。これを『生活活動』と定義されており、『身体を動かす』(立ったり、座ったり、階段を上がったり等)為に必ずエネルギーを必要とすると述べらている。

つまり筋肉がエネルギーを消費するので、生活活動を増やす事は筋肉機能を落とさずに済む事になる。

椅子に座る時間を減らす事は、糖尿病の予防だけでなく筋肉への刺激になると述べらている。

これらの情報に出会った事により「運動(有酸素運動)による糖尿病予防」を継続していく事が想像以上に意義深い事が分かる。

 尚、肥満と関係が深く、糖尿病の原因の一つでもある「内臓脂肪の蓄積」として、

出典:左図)https://plan-age.com/archives/1492                        右図)https://www.ryudai2nai.com/doc/20150624.pdf

脂肪細胞が

活性酸素(一重項酸素¹O₂)により酸化され

『過酸化脂質=肥大化脂肪細胞』になる酸化メカニズムもある。

出典:左図)https://sakuradayori.org/nutrition/3761/ (一部改変)                     右図)https://nagoya.heart-center.or.jp/div04_7_archive/div04_7_180401.html

このメカニズムを理解する為に

・細胞にとって有害な『活性酸素(一重項酸素¹O₂等)』の発生プロセスと発生箇所の確認

・活性酸素も生活習慣病の一因となる事例紹介

出典:上図)http://plaza.umin.ac.jp/manabe/projects/inflammation/
右下図)https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1342.html

◆免疫の二面性:自己免疫疾患(炎症性サイトカインの放出)

・本来守るべき自身の正常な細胞や組織を『異物』として認識し、攻撃する事で病気を発症させる。

出典:https://www.kao.com/jp/healthscience/report/report063/report063_01/

注:自己免疫疾患に関する詳細な内容は、サブタイトル「生活活動量(メッツ)と三大栄養素バランス+ファイトケミカル」の後半部にて記載。