

■MRI超音波画像融合標的生検
・2022年4月、保険収載

■超音波診断
・がんの位置が分からない

・事前にMRIでがんの位置を特定(PI-RADSスコア:3~5)

■MRI画像と超音波画像を融合
・狙い(がん細胞)を定めて生検を行う

↓

左図赤色部にがん細胞領域が特定される

・針の位置も記録される(再現性)


・画像を見て、治療方針を打ち出す

■MRI-超音波画像融合標的生検
出典:【オンライン医療講演】前立腺がん最新の組織検査〜ターゲット生検〜 医療法人徳洲会 南部徳洲会病院




■検査中でも前立腺は動く
・患者の体動やプローブの押し付けで
⇒前立腺は変形する
⇒更に、腸内ガスが降りてきたり、便の移動の影響も(放射線治療の際に問題になる)
⇒標的のズレを修正し、標的を外さない(臓器自動追跡)


■腫瘍の採取困難領域

■問題解決(腫瘍の採取困難領域)


■従来、針が届きにくい部位(採取困難領域)も生検が出来る


■効果(メリット)

<参考情報>
・トリニティMRIフュージョン標的生検
⇒MRIと超音波画像を融合させて前立腺内の病変部位を特定し、生検を行う技術。
⇒前立腺がんの診断に有用なツールとして、保険適用されている。
【保険適用】
- 2022年度の診療報酬改定で保険適応されました
- MRI-超音波融合画像ガイド下前立腺生検(MRI/US fusion guided biopsy)という名称で保険点数が定められています
【使用機器】
- トリニティ(仏 コエリス社製)の生検システムを使用します
- MRI/US 弾性融合技術と独自のセンサーレス画像ベースの臓器追跡技術(OBT Fusion®)を組み合わせています
■従来の前立腺生検の問題点
従来は8 ~12箇所の無作為抽出法(系統的生検:図1)による生検が標準とされてきましたが、
MRIの進歩に伴い、生検前のMRI情報に基づいたtarget生検(MRIでがんが疑われる病変を狙って生
検する方法)が普及しつつあります。
ただ、当初施行されていたcognitive fusion(経直腸超音波を用いた前立腺生検施行時に、MRIでのtargetをおおよその病変を頭の中で超音波画像と融合させる方法:図2)でさえも、
⇒小さな病変やtargetの部位によっては正確なtargetingができない症例が存在します。

出典:https://www.okamoto-hp.or.jp/oka2/about/pdf/chiren_25.pdf
※従来の前立腺生検では標的病変が小さかったり、
⇒ターゲットが前立腺腹側にあるため生検困難と思われる症例や、
⇒再生検が必要と判断された患者様も
⇒このMRIフュージョン生検法により正確に組織採取・診断が可能となりますので、適応の患者様がいらっしゃいましたらご紹介の程宜しくお願い致します。
※当院ではこのMRIフュージョン生検を経会陰的に施行する為、麻酔科管理のもと2泊3日の入院で行っております。
⇒所要時間は30分程度で、これまでに80例ほどの症例を経験しました。
⇒通常の生検に比べてやや煩雑な準備工程がありますが、
⇒2022年度の診療報酬改定により正式に保険適応となり、
⇒従来の生検に比べ約5倍の点数が認められた事によりこれも解決しました。

■前立腺肥大があると
特に前立腺肥大症を伴う大きな前立腺の場合(前立腺肥大症があると前立腺癌になりやすいわけでは決してありません)、
⇒従来法では病変部を正確に採取することがより難しくなります。
⇒当科で行っているMRIとエコーを癒合した画像を用いた生検(フュージョン生検)では、かなりの精度で病変を採取することができます。

※生検針が、がん組織に当たらなかった場合のイメージ図:この場合、「がんではない」という診断結果になってしまいます
本当にがんでなければよいのですが、
⇒引き続きPSAが高値で2次検査で再びがんの疑いが出てしまうと、
⇒複数回前立腺生検を受けることになり、
⇒ようやく前立腺がんが見つかった時には症状が進んでしまっていた、という事態も考えられます。

■検査スケジュール例

■MRI/超音波画像融合生検の実際の費用
■2泊3日の検査入院(経会陰式にて/上記『検査スケジュール例』と同じ)
・検査:8,210点
・包括評価診療(DPC):12,647点
・麻酔:1,004点
・病理診断:840点
・医学管理等:630点
・その他:492点
小計:23,823点
※一部負担金:¥48.340円
※入院時食事療養費:¥2,910円
※食事自己負担額:¥2,040円
■総点数:24,168点
◆総医療費:¥244,590円
・自己負担額(20%):¥50,380円
・保険等負担額:¥194,210円
■MRI/超音波画像融合生検結果
■標的箇所を含む15本の針生検を実施
・がん組織は無し
⇒6ヵ月後PSA検査(経過観察)
【標的生検前のPSAの推移】
・検査前日(検査前日入院):5.0
・検査3ヵ月前:7.0
・検査9ヵ月前:6.0
・検査13ヵ月前:5.4
・検査17ヵ月前:4.5
※検査3ヵ月前(標的生検打診)の14ヵ月間でPSAの数値が2.5上昇(上昇傾向が継続)。
※検査3ヵ月前に実施したMRI検査で5段階評価の3(どちらとも言えない)。
※4年半前に系統的生検を実施(14本、がん組織は無し。事前MRI評価で4(疑いあり))。
※過去4年半のPSA数値の推移:4.5と5.5の間をノコギリの歯のように推移。
中間時点で一度、PSA7程度に上昇したが、4ヵ月サイクル(経過観察)の検査で4.5と5.5の間に戻る。
【標的検査をする前に取り組んだ生活習慣の見直し】
・昼間(朝食、昼食以外)の時間帯は出来るだけ椅子に座らず、立ってPC作業等を行う
⇒PSA検査前の2週間は自転車(サドル部による刺激)に乗らないようにとの情報を知り
⇒検査前日までの約2ヵ月程度実行
⇒今後半年間は継続(次回PSA検査まで)

<参考情報:岡本 先生(石田記念大阪前立腺クリニック)のアドバイス>
■小線源療法退院後の注意事項
・治療後1年以内は次の項目に注意してください。
1)日常生活について
仕事や趣味、運動など退院後早い時期から始めることができますが、
排尿困難をはじめとする急性期合併症の症状や程度には個人差があるため、体調に合わせて行うことが大切です。
治療後1ヶ月程度は飲酒や柑橘類、カフェイン、香辛料などの過剰な摂取は控えてください。
また、長時間の座位も
前立腺のむくみを悪化させる要因となりますので、
職業上座位の時間が長い人には
時々立ったり歩いたりするようにしてください。
自転車やバイクの乗車、乗馬のような会陰部を圧迫する動作は、しばらくの間は、控えてください。
治療後9ヶ月~3年の間には、まれに血便や尿意切迫などの症状がでることがあることがあります。
症状が出現した場合でも多くは治療を要しないことが多いですが、
症状の強い時には医師に相談するようにしてください。
【標的生検をせざるを得ない背景】
・4年半前に実施した系統的生検による『がん組織採取の見逃し』があったかもしれないとの一抹の不安感を払拭できないから
⇒事前(4年半前)MRI評価で4(がんの疑いあり)
・検査3ヵ月前(標的生検打診)の14ヵ月間でPSAの数値が2.5上昇(上昇傾向が継続)
⇒検査3ヵ月前MRI評価が3(どちらとも言えない)であった為、検査をパスする選択はできない
・高齢(いつがんが発見されてもおかしくない年齢)


<参考情報>

・特定病院でのPI-RADS分類比較例(一般化はできない)

・PSA20ng/mL以下のケース

■マルチパラメトリックMRI
・単純MRI(T2強調、拡散強調:DWI)に
⇒造影(Dynamic)MRIで経時的に血流の変化具合を調べる
※ADC:細胞密度(黒ぽい部分)、DWI:水分子の拡散(白い部分)
※DWI:Diffusion-Weighted Imaging(拡散強調画像)の略。
⇒これはMRIの撮像技術の一つで、水分子の拡散運動の違いを画像化する方法。

【参考情報:画像診断による検出腫瘍サイズ(リンパ節の場合)】
・CT検査:8㎜以上の腫瘍サイズを検出することが可能
・MRI検査では約8mm以上のリンパ節転移を検出することが可能
・PET-CT検査では約4mm以上のリンパ節転移を検出することが可能
■MRI/超音波画像融合生検でわかる事


■病理学的指標(再発しやすいガン細胞かの確認)
・Gribriformといわれる
⇒顔つき悪いガン細胞
・IDCP
⇒前立腺にガン細胞がさぁっと入り込む

■全摘手術前に既に転移
・IDCPありの再発率
⇒3年後:48.6%
⇒5年後:55%

■グレード5(グリソン分類:超高リスク)場合でも再発が高まる因子




■断端陽性
⇒前立腺の切断部の端部にガン細部がある
・生検ガン陽性率≧47.2%
⇒生検で10本の針の内5本がガン細部あり

■グレード5の予後不良比較
・断端陽性と生検ガン陽性率≧47.2%の両方の因子を持っている場合
⇒全摘手術前に転移を起こしていると推測される




■再発(PSA値上昇)リスクを事前に最小化する
■根治を指針にしないと判断が揺れる
⇒再発の可能性の要因を事前に把握しておく事
⇒短期的に副作用に意識がいきがちであるが、
⇒安らかな生活を送る上で、再発の心配の度合を減らす事が大事
■生検後の診断確定画像検査の限界
・CT検査(リンパ節転移):8㎜以上の腫瘍サイズ
⇒リンパ節ガンの平均サイズ:1.8㎜



・骨シンチで表示できる転移には限界(転移の見逃し)がある
・DWIBS法は8.5mm以上のリンパ節転移を検出するのに適しているとされています。
・超音波検査では約5mm以上のリンパ節転移を検出することが可能
⇒ただし、検出精度は使用する機器や技術、検査を行う医師の経験によっても異なるため、より小さな転移を見逃す可能性もあります。
・MRI検査では約8mm以上のリンパ節転移を検出することが可能
・PET-CT検査では約4mm以上のリンパ節転移を検出することが可能

※全身MRI(WB-MRI/DWIBS):保険適用
※PSMA-PET(保険外診療:自己負担/¥25万円(税込))
⇒小さな病変を検出できる
⇒具体的な行動・意識決定が出来る
※CT、骨シンチでは検出できない小さな病変

・前立腺特異的膜抗原

■PSMA-PET検査
・初期病気診断をより正確に
⇒再発部位をより正確に診断
・PSMA-PETによるPSAの値<0.5未満
⇒再発の発見率:約40%
注:再発の閾値(手術:0.2,放射線:2.0)
※PSMAーPETとは前立腺ガン特異タンパク質を検出するPET検査

・事例
・CTではリンパ節転移が発見できず
⇒PSMA-PETでは矢印部の転移部位を発見
※全医者が待ち望んでいる検査



■放射線治療の選択肢が取れる
・ガン細胞の部位が特定できる
⇒ガン細胞の部位が特定できなければホルモン療法になる






■生検による高リスク前立腺ガン評価格差
⇒診断医間格差
⇒生検の再現性
※ダウングレード、ダウンステージもあり、
一方、リンパ節転移が隠れている
■治療方針:高リスク・超高リスク
⇒拡大郭清(リンパ節転移を取り除く)を行うべき
※日本では医者まかせ
■中間・高リスク(cN1まで)の手術
(再発リスクの低減を願い)
・拡大リンパ節郭清は行われるべき
⇒主治医に手術前に確認すべき
⇒医師によっては限局リンパ節郭清だけにしているケースもある
※高い手術スキルがないと拡大リンパ節郭清ができない
※診断の問題点・治療の問題点を含めて主治医と要確認が必要だ
※高リスクにおけるリンパ節転移の率
⇒23.7%
※転移の平均的大きさ:1.8mm
⇒大半のリンパ節転移をCT検査で見逃している(再発因子)
※CTでは8mm以上でないと映らない