■<空>の思想
・大乗仏教は、
⇒もろもろの事象が相互依存において成立しているという理論によって、
⇒空(śūnyatā)の観念を基礎づけた。
⇒空(śūnya)とは、その語源は「膨れあがった」「うつろな」という意味である。
⇒膨れあがったものは中がうつろ(空)である。
⇒われわれが今日数学においてゼロと呼んでいる小さな楕円形の記号は、
⇒サンスクリット語ではシューニャ(空:śūnya)と呼ばれている。
⇒それが漢訳仏典では「空」と訳されているのである。
・大乗仏教、とくにナーガールジュナを祖とする中観派(ちゅうがんは)の哲学者たちは次のように主張した。
⇒何ものも真に実在するものではない。
⇒あらゆる事物は、みせかけだけの現象にすぎない。
⇒その真相についていえば空虚である。
⇒その本質を「欠いて」いるのである(śūnyaという語はサンスクリット語においては「・・欠いている」という意味に用いられる)。
⇒無も実在ではない。
⇒あらゆる事物は他のあらゆる事物に条件づけられて起こるのである。
⇒<空>というものは
⇒無や断滅でなくて、肯定と否定、有と無、常住と断滅というような、
⇒二つのものが対立を離れたものである。
⇒したがって空とは、
⇒あらゆる事物の依存関係(relationality)にほかならない。
■ナーガールジュナの出現
・ナーガールジュナの思想の根本はこの<空>の思想である。
⇒これは、すでに大乗仏教の般若経典の中に空観(くうがん)ということが述べられていたが、
⇒それの発展したものである。
⇒般若経典は膨大なものであるが、
⇒その中では、ただ、空ということばが高らかに強調され、くり返されている。
⇒しかし、それを理詰めに議論するようなことはなかった。
⇒ところが、後に空の思想を積極的に理論的に説明する人びとが現われてきた。
⇒その発端となったのが、ナーガールジュナである。
・ナーガールジュナのことを漢訳の仏典では、「龍樹」と書く。
⇒「ナーガ」というのが「龍」という意味で、
⇒アルジュナというのは昔の英雄の名で、音写して「樹」としるした。
⇒およそ150-250年ごろの人と推定されている。
⇒また、ヒンドゥーイズムが盛んになる以前の人であるが、彼のはじめた学派は、その後ずっとヒンドゥー期を通じて存続した。
⇒インドではナーガールジュナの像の彫刻は何も残っていない。絵もない。
⇒ところが、日本には、想像にもとづいてつくったものが残っている(たとえば、金剛頂寺にある)。
⇒このナーガールジュナが空の思想を理論的に基礎づけた。
・大乗仏教とよばれるものは、
⇒みなかれから出発してのである。
⇒そのため日本では、
⇒かれは南都六宗・天台・真言の「八宗の祖師」と仰がれている。
⇒のちの仏教のいろいろな思想は、かれに負うところが非常に多い。
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