■概ね60兆個の細胞で構成される身体の特徴
生きるために、我々は絶えず呼吸をし、食物の形で栄養を摂取している。
この事は身体が絶えず作り替えられる事と関係する。
個体に寿命があるように、身体を構成している一つひとつの細胞にも寿命がある。
例えば、血液の流れに沿って『酸素O₂』を運ぶ赤血球の寿命は約120日と言われる。
老朽化し、機能しなくなった赤血球は、脾臓や肝臓で選別・破壊され、分解される。
にもかかわらず、血液中にある赤血球の数は大体一定である。
細胞分裂によって身体のあらゆる組織が一定の周期をもって、古い細胞から新しい細胞へと入れ替わりを続けていく。
ほんの少しずつ、毎日入れ替わっている。
これが新陳代謝と言われるものである。
◆年と共に低下する新陳代謝を活発にするには
新陳代謝のスピードは高齢になるほど低下していく。
古い細胞の老廃物等が身体に残りやすくなり、細胞を若々しく保つ事も出来なくなる。
・細胞が正常なサイクルで生まれ変わるために
細胞に必要な栄養や酸素が全身に行き渡り、老廃物等を速やかに回収される必要がある。
この働きを担っているのが血液である。
◆赤血球:ガスの運搬(酸素O₂と二酸化炭素CO₂の運搬)
・赤血球は骨髄で作られ、中心部がへこむ円盤状の細胞。
・酸素と結合するヘモグロビンを入れる。
・骨髄で核を失うので正常赤血球には細胞核がない。
・大きさは約7.5μm(マイクロメーター)(7.5mm/1000)で、変形性がある。
・赤血球は全身に酸素を届け、その寿命は120日。
・古い赤血球は変形性を欠き脾臓や肝臓でマクロファージによって破壊溶血される。
健康診断等で血液検査をする価値は、血糖値(HbA1c)等の各種検査評価にて身体の現状を基準範囲に照らし合わせて確認出来る事にある。
◆血しょう:栄養素や二酸化炭素CO₂の運搬、不要な物質の運搬
・養分の運搬、二酸化炭素CO₂等の不要な物質の運搬。
◆血液の働き(運搬・調整・免疫・止血)
◆マクロファージの働きの一例
・血管内の異物(余分なコレステロール)を排除する
マクロファージは異物を食べる免疫細胞。
但し、その際に様々な化学物質が放出されて血管の壁を傷つける。
・免疫細胞(自然免疫)の一つ
・自然免疫と獲得免疫
■新陳代謝がスムーズに働く為に
・血行が良い事と血液が元気である事で
免疫力・治癒力が十分に正常に働いて
体内に侵入する異物(病原菌・ウイルス等)や
体内で発生する老廃物を処理・排出し、
細胞分裂が円滑に営まれる事で
細胞組織の再生や新陳代謝が行われる。
・血行が良くないと
身体の隅々まで効率的に『酸素』や『栄養』を送り届ける事が出来ず、
新陳代謝が停滞する。
赤血球(ヘモグロビン)が元気でないと
『酸素』をキャッチしてしっかりと運搬できなくなり、
新陳代謝も低下する。
■『酸素』と『栄養素』を細胞に届ける仕組み
◆1.外呼吸(肺呼吸)と内呼吸(細胞呼吸)
・外呼吸(肺呼吸)
空気を吸ったりはいたりしている呼吸は外呼吸。
呼吸器官を使って、身体の外にある『酸素O₂』を取り入れ、「二酸化炭素CO₂」を身体の外
に出す働きが外呼吸である。
口や鼻から吸った空気は気管を通り、肺に入る。
気管は、枝分かれして気管支と呼ばれるようになる。
気管支の先端部分は肺胞と呼ばれる。
肺胞を通る毛細血管では、空気中の『酸素O₂』が血液中に取り入れられる。
また、同時に、血液中の「二酸化炭素CO₂」が空気中に吐き出される。
◆内呼吸(細胞呼吸)
・細胞の1個1個が、エネルギーを作り出すために行う呼吸。
身体をつくっている細胞は、血液によって運ばれてきた『酸素』と『養分』を使って、
生きていくための活動をするエネルギーを作り出している。
その際に出る「二酸化炭素CO₂」と「不要物」は、細胞の外に出され、
血液などによって運ばれ、身体の外に出される。
(注)不要物
・水:血液で腎臓・汗腺に運ばれ、尿・汗として排出される。
・アンモニア:細胞内でタンパク質が分解されると出来てしまう有害な不要物。
血液で肝臓に運ばれ、尿素に変えられて腎臓で尿として排出される。
・血中で二酸化炭素CO₂はイオンとして存在する
肺に運ばれるまでの間は赤血球内の炭酸脱水酵素の働きで水H₂Oと反応し、
重炭酸イオンHCO₃⁻と水素イオンH⁺に解離する。
これらが肺に運ばれ、そこで再び二酸化炭素CO₂に合成されて体外に排出される。
◆2.消化と吸収
・消化
食物を体内に吸収できるように細かくする。
消化官:食物を消化し、その養分を身体の中に取り入れる働きをする器官。
口→食道→胃→小腸→大腸→肛門に終わる1本の長い管。
唾液線→膵臓→肝臓にも繋がっている。
食物は消化管の運動によって細かくされる。
・消化酵素
そのままでは体内に取り得れる事ができない
炭水化物(デンプン)、タンパク質、脂肪などを分解して、
体内に吸収しやすい小さな物質にする。
<酵素の構造>
酵素には多くの種類があるが、それぞれ構造が異なっており、特定の物質としか反応しない。
酵素と反応する物質を基質といい、酵素は基質と結合する事で基質を分解するなどの反応を起こす。
例:だ液中のアミラーゼは、基質であるデンプンと結合する事により、デンプンを麦芽糖に分解している。
・消化液
いくつかの消化器官から出される液。
消化液によって噛み砕けた食物の粒を小さくする事で、水に溶ける養分になり、
血液中に吸収する事が出来るようになる。
血液中に吸収できれば、
血液成分の血漿が全身に養分を届ける事が出来る。
①だ液:炭水化物(デンプン)を分解する消化酵素(アミラーゼ)を含む。
②胃液:タンパク質を分解する消化酵素(ペプシン)や塩酸を含む。
塩酸には、ペプシンの働きを助け、食物を殺菌する働きがある。
③胆汁:肝臓で作られて胆のうに蓄えられ、小腸の上部の十二指腸に出される。
消化酵素を含まないが、脂肪の粒を細かくして、脂肪の分解を助ける。
④すい液:すい臓で作られ、十二指腸に出される。
炭水化物(デンプン)・タンパク質・脂肪を分解する数種類の消化酵素を含む。
⑤小腸の壁の消化酵素:炭水化物(デンプン)・タンパク質を最終的に分解する。
・養分の分解
①炭水化物(デンプン):ブトウ糖に分解される。
②タンパク質:アミノ酸に分解される。
③脂肪:脂肪酸とモノグリセリドに分解される。
・養分の吸収とその行方
消化された養分は主に小腸で吸収される。
①毛細血管に吸収される養分
ブドウ糖、アミノ酸、無機物は、水に溶けて毛細血管に入る。
ブドウ糖とアミノ酸は、まず肝臓に運ばれる。
②リンパ管に吸収される養分
脂肪酸とモノグリセリド柔毛の表面から吸収された後、再び脂肪になりリンパ管に入る。
リンパ管はやがて血管と合流し、脂肪はここで血管に入って全身に運ばれる。
大腸の働き
小腸で吸収されなかった残りの水分や無機物の一部を吸収する。
■代謝
食物を口から摂取すると、三大栄養素のうち、
・炭水化物は単糖(ブドウ糖)に
・タンパク質はアミノ酸に
・脂肪は脂肪酸に
低分子のものに砕かれて体内の臓器に運ばれる。
それらはエネルギーとして使われるか、体内に取り込まれて身体を形成する元になる。
消化器官から吸収した栄養素、または一旦体内に貯蔵した栄養素を
エネルギーや生命の維持に必要な物質に変える作用を代謝と言う。
代謝で大きな役割を担っている臓器が肝臓である。
栄養素の多く(淡水化化物、タンパク質等)は肝臓に集められ、必要に応じて静脈から心臓を通って全身に運ばれる。
一方、脂質(脂肪)はリンパ管から静脈を通って同様に全身に運ばれる。
🔳三大栄養素と五大栄養素の関係
栄養素の中でも、エネルギー源となる『糖質』・『脂質』・『タンパク質』を3大栄養素と
言う。
・糖質
エネルギー源として使われる。
糖質は脂質の代謝にも関与する。
摂りすぎた糖質は、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵される。
【ごはん、パン、麺類等の主食になるものや、イモ類、砂糖に多く含まれる】
・脂質
少量でも高カロリーの効率の良いエネルギー源。
1gの糖質またはタンパク質の持つエネルギーは4kcal。
1gの脂質は9kcal のエネルギーを発生する。
貯蔵脂肪としてエネルギーの貯蔵にも役立っている。
この他脂質には、細胞膜を構成する等がある。
摂りすぎると肥満や動脈硬化などの生活習慣病になる可能性が高かくなる。
【肉類、魚類の他、乳製品等に多く含まれる】
・タンパク質
筋肉や内臓、皮膚、爪、髪等を構成する主要な栄養素。
その他、代謝に欠かせない酵素を作ったり、
生命を維持するために重要な働きをする。
摂りすぎたタンパク質は肝臓で分解され、
グリコーゲンや脂質に変換されてエネルギー源になるが、
腎臓の機能低下を引き起こす可能性もある。
また、糖質の摂取量が足りない時には、分解されてエネルギーとして消費される。
このため、糖質の不足はタンパク質の本来の機能を奪う事になる。
【肉類や魚類の他、卵、大豆製品、乳製品に含まれる】
・五大栄養素の役割
糖質、脂質、タンパク質以外にビタミン、ミネラル。
車に例えると
①タンパク質:筋肉や骨、歯、血液等の身体を作る⇒ボディーに相当
②糖質・脂質:エネルギーになる⇒ガソリンに相当
③ビタミン・ミネラル:身体の調子を整える⇒オイル・潤滑剤に相当
🔳物質の代謝:異化(分解)と同化(合成)
細胞の生命活動を維持する為には、エネルギーが必要。
人間を含む生物は、この活動に必要なエネルギーを『物質の代謝』によって獲得している。
◆代謝
細胞内あるいは生体内で起きる化学反応で、
代謝経路を構成する多くの酵素によって触媒されている。
代謝は呼吸(肺呼吸と細胞呼吸)が深く関わっている。
まず、食物の形で摂取した物質を呼吸によって取り入れた酸素で酸化させて、エネルギー
(ATP)を取り出し、同時に成分を分解する。(異化)
分解された成分(タンパク質→アミノ酸)は、次に遺伝子の働きよって、再び身体に合う
ように作り変えられる。(同化)
◆物質代謝(糖質の代謝)
異化反応(分解)と同化反応(合成)に大別される。
・異化:複雑な物質をより単純な構造に分解し、変化させていく。
その過程で沢山のエネルギー(ATP)が蓄えられる。
・同化:単純な物質を合成し、複雑な物質にする。
異化で蓄えられたエネルギー(ATP)を使って
低分子(例:アミノ酸)の物質を高分子(例:タンパク質)の物資に再合成する。
・異化反応(分解)とは
大きな分子(ブドウ糖:C₆H₁₂O₆)を分解して小さな分子(二酸化炭素CO₂や水H₂O)に
する代謝過程である。
この過程では、大きな分子(ブドウ糖)の内部に貯蔵された化学エネルギーが放出され、
⇒化学反応を進行させるエネルギー
⇒筋肉の運動エネルギー
⇒体温を維持するエネルギー
等に利用される。
例えば人間の体温が36.5℃前後に維持されているのは、
全身の大半の細胞が『細胞呼吸』(C₆H₁₂O₆+6O₂+6H₂O→6CO₂+12H₂O+38ATP)
を行い、熱エネルギーが放出されている事による。
・TCA回路(クエン酸回路)は三大栄養素の代謝をリンクさせる回路である。
但し、エネルギー変換されるが、熱エネルギーに変換をするのではなく、ATPというエネル
ギー通貨が作られる。ATPは高エネルギー物質である。
この時のエネルギーの転換をスムーズに行うために
異化反応(分解:ブドウ糖C₆H₁₂O₆+酸素6O₂+水6H₂O→6CO₂+12H₂O+エネルギー
38ATP)により放出されるエネルギーを、
一旦、ATPの形で蓄え、
必要に応じて消費する。