下記各リスク(群)内容の転記先:https://pros-can.net/01/01-2.html#301
■低リスク(群)
・前立腺がんで「低リスク群」と言われれば、
⇒がん=死という恐ろしいイメージを一新する良いチャンスかも知れません。
⇒治すつもりならほとんどの場合完全に治せるのですが、
⇒低リスク群では積極的な治療を必要としないがんもめずらしくないのです。
・鋭敏なPSAマーカーが用いられるようになってから、
⇒ごく初期で発見される小さな前立腺がんが増えてきて、
前立腺がんの生存率も良くなって来ているのですが、
⇒それは同時に、健康上何の影響も及ぼさない「ラテント癌」 の発見も増えていることを意味しています。
⇒50歳以上の健康な男性を死後解剖(剖検)するとすれば、
⇒ほぼ1/3から前立腺がんが見つかるそうで、
⇒これは直接死因になっていないがんをラテント(潜在)癌を知らずに抱えている男性がいかに多いかを示しています。
⇒がんの存在を知らないままなんの不自由もなく一生を終えてしまう方もめずらしくないわけで、
⇒ 病理的には存在が確認されるものの、
⇒健康上何の実害もないラテント癌に対して行われる無意味な手術は、
⇒近年手術全体の約2割を占めているのではないかと言われています。
⇒しかし、手術をすれば、たいてい何らかの副作用が残りQOLの悪化を招くわけですから、
⇒このような過剰治療は患者にとっては困ったことであり、
⇒もし、副作用の弊害を被らずに健康に過ごせる手立てがあるとすれば、
⇒それに越したことはないわけです。
⇒これまでの研究によると、余命10年以下と思われる高齢者(米国では70歳と考えるが、日本人場合は75歳程度と考えることが多い)なら、 低リスクがんであらば、無治療のまま忘れ去ってしまってもほとんど影響がないだろうと言われています。
<主な標準治療>(低リスク群)
・PSA監視療法
・小線源(単独)療法
・外部照射
・前立腺摘除術±リンパ節郭清

■中リスク(群)
・基本的には「中リスク」も
⇒さほど恐れる必要はありません。
⇒治療法にも多くの選択肢があり、
⇒ほとんどの場合で十分完治が望めます。
・手術と放射線療法では
⇒10年生存率に差はないと言われており、
⇒医師まかせでもおそらく命だけはなんとかなる、
⇒というのがこの「中リスク」でもあるのですが、
・問題はその10年が、
⇒がんから解放され精神的にも明るく過ごす10年なのか、
⇒再発を経験しホルモン療法を続けながらの鬱々とした10年なのか、
⇒その違いにはなんら触れられていないということです。
・中リスク程度であれば、
⇒PSA非再発率を比較した場合、
⇒手術ではせいぜい70~80%止まりですが、
⇒しっかりした高精度の外部照射あるいは小線源療法(外部照射併用が多い)であれば
⇒10年でも90%以上の非再発率が望めるようになってきました。
⇒どの治療法にも必ず一長一短があり、
⇒良い面ばかりを見て、
⇒マイナス面の検討を怠ると、思わぬ後遺症(副作用)を背負ってしまう恐れもなきにしもあらずです。
・がんと告げられた驚きとあせりから、
⇒とかく「命さえ助かれば」という短絡的思考に陥りがちですが、
⇒大切なのはまずはあわてないこと。
⇒そして冷静に、非再発率が高く、副作用の少ないであろう治療法を選ぶべきです。
・さらに言えば、同じ治療法でも
⇒技術レベルにはかなりの開きがあるので、
⇒できるだけ確かと思える医療機関を選ぶべきです。
・がんで悩んでいる最中は、
⇒治療後の生活までなかなか思いが行き届かない場合も多いと思いますが、
⇒治療後の時間の方が圧倒的に長いわけです。
・ 後に残る副作用の程度というのがいかに大切か、
⇒目の前のがんだけにとらわれず、
⇒被る可能性のある副作用と、どのように付き合えば良いのか、
⇒術後のQOLも十分に考慮した上で、 自らの意思で治療法を選択してください。
⇒これが出来るのは医師ではありません、
⇒ほかならぬあなた自身です。
⇒もしもあなたが精神的に追い詰められているとしても・・・
⇒私もそうでしたからやむを得ませんが・・・
⇒今しばらく、できるだけ落ち着いて、
⇒ご自分にとって最も良いと思われる治療法をじっくり選んでみてください。
・だいじょうぶ、精神的に苦しいのはほんの数ヶ月、
⇒ 繰り返しますが、それに引き換え、
⇒術後の副作用に悩むのはもっとはるかに長い年月です。
⇒慌てる必要はありません。
⇒きっと来年の今頃は、現在の心痛がうそのように思えてくることでしょう。
<主な標準治療>
・PSA監視療法(期待余命10年未満に適用)
・小線源(単独)療法
・小線源療法+外部照射±短期(4-6月)内分泌療法
・外部照射
・前立腺摘除術±リンパ節郭清

■高リスク(群)
・たとえ高リスクでも
⇒まだまだ完治が望めます。
⇒病期がT2b以下でも、PSA又はGSのリスクが高い場合、
⇒あるいは、病期がT2cであれば、PSA、GSは何であろうと「高リスク」に分類されます。
・ただ、注意しなければならないのは、
⇒「高リスク」の場合は、
⇒手術時の病理検査で新たに浸潤・転移が発見され、
⇒始めに(臨床時に)告げられた病期が
⇒一段上に変更される場合も少なくないということです。
・臨床病期がT2であっても、
⇒浸潤が見つかればT3a(超高リスク)に訂正され
⇒手術結果によって臨床時の病期判定が覆る例は、
⇒PSA、GSの値が大きいほどその確率も上昇すると言われています。
・手術で、再発の可能性が高いと判断された場合には、
⇒放射線療法との併用という判断に切り替わることもありますし、
⇒全摘の後、PSAが下がりきらない場合には、
⇒内分泌療法に頼るか、
⇒リカバリーとして放射線療法を行うかの選択を迫られます。
⇒日本では、高リスクであっても手術を勧められるケースが多いようですが、
⇒NCCN(米国)では放射線療法のほうが優先的に考えられています。
・前立腺がん診療ガイドライン2012年でも、
⇒エビデンスレベルは放射線療法に分があるとされていますが、
⇒実際には手術を受ける患者のほうが多いのが現実です。
⇒放射線治療医が少ないということもありますが、
⇒最初に患者と向き合う泌尿器科医の説明が不十分がことも、その原因の一つだと思っています。
・高リスクであれば、
⇒限局がんという説明を受けていても、
⇒限局がんではなく
⇒なんらかの浸潤や転移が隠れている確率のほうが 圧倒的に多いわけですが、
⇒それを説明せずに「切るのが一番確実」という説明をし、
⇒そのあげく多くの患者が再発に見舞われているという現状があります。
⇒専門医を信じて頼ることができれば、患者としてこれほどありがたいことはないわけですが、
⇒必ずしもそうとはいかないことも多いので、
⇒心ならずも一度は疑ってみる慎重さも必要でしょう。
⇒新車を買う時はあれこれ調べるくせに、
⇒がんの治療は他人まかせというのは、腑に落ちません。
⇒だれの命、誰の身体でもない・・・あなた自身の命と体なんですから。
<主な標準治療>
・外部照射+長期(2-3年)内分泌療法
・小線源療法+外部照射±短期(4-6月)or長期(2-3年)内分泌療法
・全摘除術+リンパ節郭清

<参考情報>
・リンパ節郭清
⇒拡大郭清すると40個も発見
・転移性陽性率の推移
⇒15.8%(2015年)

・高リスクにおけるリンパ節転移の率
⇒23.7%
・転移の平均的大きさ:1.8mm
⇒大半のリンパ節転移をCT検査で見逃している(再発因子)
※CTでは8mm以上でないと映らない

■中間・高リスク(cN1まで)の手術(再発リスクの低減を願い)
・拡大リンパ節郭清は行われるべき
⇒主治医に手術前に確認すべき
⇒医師によっては限局リンパ節郭清だけにしているケースもある
※高い手術スキルがないと拡大リンパ節郭清ができない
■超高リスク(群)
・T3a(局所浸潤)~T4(周辺臓器浸潤)の全てがこのカテゴリーです。
⇒PSAとGS、二つのパラメータの比較では、
⇒どちらかと言えば GSのほう(低分化がん)が要注意と考えられています。
⇒転移・再発がんは別格として、
⇒最も再発の危険度の高いこのクラスは、
⇒数年前までは完治が困難と言われていましたが、
⇒近年は放射線技術の進歩もあって、 完治も望めるようになってきました。
⇒このカテゴリーでの治療法の本命は、やはり放射線治療でしょう。
・高精度外部照射で言えば、
⇒画像誘導付きが望ましく、
⇒長期ホルモン療法の併用は必須です。
・治療成績は
⇒照射線量によって大きく変わります。
⇒線量は高いほど良い(再発率が低くなる)ことが分かっており、
⇒1回2Gyの多分割照射では、
⇒74Gy以下では心もとなく、
⇒76Gy~80Gyぐらいが望まれます。
・放射線治療の前に(ネオアジュバント)数ヶ月間内分泌療法を施すのはほぼ共通しているようですが、
⇒治療後にも(アジュバント)内分泌療法を継続するかどうかには、医療機関によって違いがあるようです。
⇒米国NCCNでは、(超)高リスク群においてはホルモン療法の長期(2~3年)併用が標準とされています。
・高精度外部照射に劣らないと注目度があがりつつあるのが、
⇒小線源療法、外部照射、ホルモン療法の3つを併せた治療法で
⇒トリモダリティと呼ばれているものです。
・小線源の弱点(大きな浸潤や微小転移には対応できない)を
⇒外照射に肩代わりしてもらうという消極的な意図のみでなく、
⇒小線源と外照射を重ねることにより、
⇒局所に、外部照射、あるいは小線源単独ではとうてい考えられないほどの超高線量を与えることができるのが特徴です。
・高精度の外照射では、
⇒直腸を避けることは可能だが、
⇒前立腺内の尿道をかわすことはやはり難しいので、
⇒前立腺内のブースト照射には一定の限界があるのですが、
⇒それを小線源で行うと、
⇒前立腺内の尿道をさほど気にせず、ブースト照射がうまくいくというメリットもあります。
・小線源療法のできる施設は140カ所ほどありますが、
⇒これがきちんと出来るのはせいぜい1~2割に留まっているので、
⇒施設(担当医)の選択が重要となってきます。
・画像診断で見つけられない(医療技術の限界)「微小な遠隔転移」が潜んでいる場合は
⇒完治は望めませんが、
⇒治療前からこうした神のみぞ知る事に思い悩んでみても所詮仕方が無いことです。
⇒「微小転移」があった場合、治療後もPSAは下がりきらず、内分泌療法をしない限りPSA値はそのまま上昇を続けます。
・局所浸潤がんなら、
⇒たとえトリプルハイリスクであっても、希望をすてず完治を目指しとことんがんばりましょう!
⇒リスクが高くとも、落ち込んでいてはいけません。
⇒ハイリスクと告げられた以上、
⇒始めは顔がひきつっても止むを得ないのですが、
⇒常に”笑顔”と”前向きの姿勢”が大事です。
・健康食品や民間医療で医学的根拠のあるものはまずありません。
⇒そんなものに飛びつくぐらいなら、
⇒にこにこ笑って暮らすほうがよほどましでしょう。
⇒笑いは免疫活性を刺激し精神状態を活性化すると言いますし、
⇒まかり間違っても決して毒にはなりませんから。
<主な標準治療>
・外部照射+長期(2-3年)内分泌療法
・小線源療法+外部照射±短期(4-6月)or長期(2-3年)内分泌療法
・全摘除術+リンパ節郭清
・ホルモン療法

■転移がん
上述の「リスク分類」というのは、限局がん・局所進行がんを対象としているので、
・転移がんは
⇒これらとは別の、さらにハイリスクな分類となります。
・もし画像検査で、
⇒リンパ節転移、骨転移、臓器転移が見つかれば、
⇒病期としては最も進んだ「転移性前立腺がん」という判定となり、
⇒これらは明らかに「別格」扱いとなります。
・こうなると、
⇒もはや局所治療での治癒は難しく、
⇒全身療法である薬物療法がメインとなりますが、
⇒ただし、すべてがそうと限られているわけではありません。
・転移巣がほんの少数にとどまっている、
⇒いわゆる「オリゴメタ(少数転移)」という状態では、
⇒放射線治療が有効な事例も少なくないので、
⇒もし、医師から内分泌療法を勧められても、そ
⇒れに甘んじるかどうか、今一度、じっくり考えてみても良いのではないでしょうか。
⇒さらに詳しくは、第4章のこちら「転移がん」をご覧ください。
<主な標準治療>
・ホルモン療法
・外部照射+長期(1-3年)内分泌療法:オリゴメタの場合


