2012年7月に施行されたFIT制度(固定価格買取制度)は再生ネルギーの導入拡大、特に太陽光発電の急激な導入・拡大を促進しており、九州、東北地域においては系統接続制約の問題を生み出した。
他方、太陽光発電による供給力の増加による需給ミスマッチが意識されると共に、予想された出力制御が発生し、 2018年10月13日に九州電力による出力制御が初めて実施された。その日数は、10月と翌11月には各4日間 であった。
九州電力の資料(九州本土における再生可能エネルギーの出力制御について:平成30年10月10日)より『 九州本土における再生可能エネルギー の接続量』の推移を見てみる。
平成30年8月末時点で太陽光の接続量は807万kWと、平成24年末に比べ約7倍に増加。
この供給量(接続量)の推移は微分方程式で表現される『ロジスティック曲線』の推移を彷彿させる。
注:ロジスティック曲線 とは: 生物の個体数の変化の様子を表す数理モデルの一種である。ある単一種の生物が一定環境内で増殖するようなときに、その生物の個体数(個体群サイズ)の変動を予測できる。 ( Wikipedia より)
同資料によると、2018年5月3日(平成30年5月3日)13時における太陽光発電の出力が電力需要に占める割合は8割を占めていると指摘しており、火力発電の出力調整や揚水発電所の活用による調整余力もわずか30万kW程度しかない、厳しい需給状況であったと述べている。
現実化した出力制御に対して、出力制御の実施における『優先供給ルールに基づく再生可能エネルギーの出力制御』、つまり『出力の抑制等を行う順番』を確認する必要もある。
FIT制度改正(2015年1月)にて新たな出力制御ルールが設けられた内容を再確認する。
■出力制御の対象の見直し
・「30日ルール」の時間制への移行
平成27年1月の再エネ特措法施行規則の一部を改正する省令により
・指定電気事業者制度の活用による接続拡大
・一定の基準を超えて連系した太陽光発電設備には、電力会社からの出力制御の要請に無制限・無補償で応じていただくルールが定められた。
予想された『出力制御の発生』は、太陽光発電事業における収益計画の下方リスクとして考慮せざるを得ない。特に新規計画を検討される場合においては。
この収益下方リスクについては定量化する必要がある。
特に需給ミスマッチによる発生頻度についてシナリオの検討が必要になり、シナリオの前提になるモデルとして以下2種類を検討してみる。
①今後の供給量の推移を『ロジスティックス曲線(微分方程式)』分析でモデル化する。
②モンテカルロシミューションDCF法で分析している事例(太陽光発電における出力抑制が与える事業影響評価 : 国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター )を参考に検討してみる。
同事例による出力制御の発生頻度に関しての『確率モデル』は、幾何ブラウン運動 dS(t) / S(t) = μ・dt + σ・dz(t)を前提にしており、ブラック-ショールズ方程式の前提モデルと同じである為、モンテカルロシミュレーションで近似的に算出するロジックは書籍、ネットで広く紹介されており、これらを活用する。
同事例の事業影響評価 は、出力1,000kW の太陽光発電事業とし、各事業の実施にかかるコスト等の前提条件は、平成27 年度経済産業調達コスト算定委員会で示された想定コストで算出している。
モンテカルロDCFによるPIRR及びDSCRの分析結果は以下である。
以上、2種類の分析検討をサブメニューにて用意して検討を進める。
尚、当Webサイトのメニュー『プロジェクトIRR(EBITDAベース)』に記載している 固定価格買取制度(FIT制度)における2019年度の事業用太陽光発電(10kW以上500kW未満)の調達価格を14円/kWhとする委員長案 の数値を前提にPIRR、DSCRを再度検討してみる。
参考に九州電力の一つの見解を紹介する。