■卸電力市場の異様な価格の動き
◆電力卸市場(スポット価格取引)での超高騰期間が長期化し、同時に超巨額インバランス料の支払い発生が起きた
・取引価格高騰で1兆5,000億円が電力小売業者(約800社)から大手電力会社に移動
◆値幅制限が無い市場
・ストップ高・ストップ安機能が無し
◆市場で悪さを働いても刑務所送りにならない市場
・価格暴騰を長期に渡り放置
・米国SECの機能を担うべき組織は余りに貧弱である(電力・ガス取引監等視委員会)
⇒電力の適切な取引の確保を図るため必要があると認めるときは,電気事業者に対し,必要な勧告をすることができる。(電気事業法66条の12第1項より)
・金融商品取引法違反で逮捕されたカルロス・ゴーン
⇒小菅の東京拘置所に勾留
◆日本卸電力取引所(JEPX)におけるスポット価格の推移
■卸電力市場価格を参照するFIP
・指標自体が未熟で、使い物にならいない事が露呈した
⇒FIP制度設計の再見直しが急務
■スポット市場の見直し動向
■限界費用入札の考え方
・固定費(発電所建設費等)に関わる部分については、発電会社は入札価格に含めない
⇒限界費用より少しでも高い価格で落札できればプラスの利益(生産者余剰)が得られ、それを固定費の回収にあて、赤字を減らすことが可能である
・卸電力取引所取引の価格形成と短期限界費用
【前提】
市場が完全競争状態にあり、かつ 相対取引との裁定がないと仮定した場合
⇒各時間帯の需要に対応した短期限界費用で需給均衡が成立すると考えられる
≪短期限界費用の定義≫
・卸電力取引市場においては発電時の可変費用(燃料費、廃棄物・排煙処理などの操業可変費)と需給逼迫時の混雑費用の合計で構成される。
≪短期限界費用による価格形成と固定費回収≫
・短期限界費用は基本的に発電費用のうち可変費用だけが対象である
⇒減価償却費、帰属利払費や修繕費など発電費用のうち固定費用については賄えないように見える
⇒実際には各時間帯での需要に対応する価格と当該価格より低い発電設備の短期限界費用の差分が存在するため、当該差分の収入で固定費用が回収されることとなる。
■東電の限界費用曲線の推移(2021年3月期~2018年3月期)
◆東電の四半期決算データを活用し、4年間の限界費用曲線比較(経常利益ベース)から分かる事
・実際売上高と限界費用曲線(MC)の『交差点の水準』を比較すると極端な差は無い
・収益上限点売上高(これ以上の売上高は赤字に転落する点)と限界費用曲線(MC)の『交差点の水準』を比較すると極端な差は無い
・上記各水準のバラツキは極め狭い範囲に収まっている
注:上記図で比較した各年度期の『限界費用曲線(MC)と平均総費用曲線(ATC)』及び『収益上限点売上高と実際売上高』に関する詳細な分析内容(SCP分析)は、メニュー『東電の総費用曲線を微分する=限界費用(MC)を算出』にて記載していますのでご確認願います。