特定健康診査・特定保健指導制度の下で
『生活習慣病の予兆』をいち早く発見し、生活習慣の改善に結びつけ為に
以下の健康診査項目が無料で実施されている(40歳~74歳までの国保加入者。実施回数:1年に1回)。
◆健康診査項目
- 質問項目
- 身体計測(身長、体重、BMI、腹囲)
- 理学的所見(身体診察)、血圧測定
- 血液化学検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
- 肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP))
- 血糖検査(ヘモグロビンA1c)
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
- 尿酸、血清クレアチニン、尿潜血
◆健康診査項目から『尿酸』について
・健診結果から『尿酸値が高い』と指摘を受けるが、
⇒それが直ぐに症状として現れず、尿酸値が高いままに放置し続けると、ある日突然激しい痛みを伴う痛風や、尿路結石を発症する。
⇒年に複数回程度の血液検査を個人的に実施する事とその検査数値推移を観察する事で、発症予防ガイドライン(薬の服用の有無)に基づいた対応も受診医療機関でなされる。
⇒更に『高尿酸血症』の基準値7mg/dLを超え始めると、高血圧、糖尿病、腎臓障害や肝臓障害の合併も起こしやすくなるために、それらの疾患発症を予防をするために『特定健康診査・特定保健指導制度』にて、関係する検査項目結果も照らせ合わせて生活習慣病の予兆発見が図られている。
■尿酸とは
プリン体という成分が肝臓で分解されて生じる老廃物である。
◆プリン体生成の3つの経路
Ⅰ.細胞の新陳代謝
・細胞の核(DNA)の成分であるプリン体が肝臓で分解されてできる老廃物(=尿酸)。
⇒人間の身体の中では、古くなった細胞は壊され、新しい細胞に生まれ変わる新陳代謝を繰り返している。
⇒以前と同じ細胞に生まれ変われるのは、細胞に存在する遺伝子情報を持つDNAのおかげである。
Ⅱ.エネルギー代謝(激しい運動)
・筋肉中のエネルギー源(ATP)の成分
⇒筋肉などを動かす際、細胞の中でATPがADPへ変換する時にプリン体が発生する。
⇒通常の運動では、生じたADPは再びATPへ変換され再利用される。
⇒しかし、激しい運動では多量のADPが生成されるために、全てのADPがATPに変換できず、
⇒残りのADPは分解されプリン体となる。
Ⅲ.食品からの摂取(全プリン体生成の約20%程度を占める)
⇒食品も細胞からできている。
⇒あん肝で代表される細胞数の多いものや細胞分裂の活発な食品(新芽の段階であるブロッコリースプラウト)ほどプリン体は多く含まれている。
⇒食品中のプリン体も(痛風予防としてプリン体摂取量は400mg/日以内の制限がガイドで提示されている)必要以上に摂り過ぎない事。
◆尿酸の検査目的
上記3つの経路でプリン体は『肝臓』で分解され尿酸が作り出されており、血液に混じって全身を回った後、『腎臓』で尿や便に混ざって排泄される。
従って、血液の中には一定量の尿酸が含まれている。
・血液中の尿酸量の値が一定値を超えると(男性:7mg/dLを超えると)
⇒余分な尿酸が体内の特定の場所(主に足の親指の付け根)に溜まって結晶化し、痛風のもとになる。
🔳核酸(DNAやRNA)
◆核酸の基本単位であるヌクレオチド
・リン酸、糖、塩基の3つから構成
⇒糖と塩基がくっついたものをヌクレオシド。
⇒ヌクレオシドにリン酸が着くとヌクレオチドになる。
・DNAとRNAの違い
⇒五炭糖(5個の炭素原子を含む単糖)の2番目のCに付くのがHかOHの違い。
⇒核酸に使われる塩基は4種類の内、3種類は同じ(A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン))でT(チミン)とU(ウラシル)だけが違う。
⇒DNAに使われる塩基:A、G、C、T。
⇒RNAに使われる塩基:A、G、C、U。
注1)プリン塩基:A、G。
注2)ピリミジン塩基:C、T、U。
注3)A(アデニン)とG(グアニン)をその構造の特徴から『プリン体』と呼んでいる。
注4)DNAの2重らせん構造:プリン塩基とピリミジン塩基がA-T、G-Cというように相手を決めてペアになるのを相補的塩基対と言う。
注5)相補的塩基対:この規則性がDNAの複製やRNAへの転写などの際に、情報を正確に書き写すという重要な働きをする。
注6)塩基の並びによって身体をつくるアミノ酸やタンパク質がどう作られるかを指令している。
注7)1 つのアミノ酸: mRNA の連続した塩基 3 個 1 組の配列によって規定され、この塩基配列をコドンと呼ぶ。
◆ヌクレオチドの合成
①肝臓でアミノ酸などから合成する「デノボ合成:de nove合成」
②食物からとった「核酸」を各細胞で再利用する「サルベージ合成(経路)」
の2つがある。
◆プリン代謝経路
・尿酸
⇒リーボス5リン酸を起点として、
⇒プリン体合成経路(デノボ合成:de nove合成とサルベージ合成)によってヒポキサンチン、キサンチンを経由し、
⇒キサンチン酸化還元酵素(キサンチンオキシドレダクターゼ:XOR)の働きによって尿酸が合成される。
⇒この酵素は尿酸を作る際に酸化に関るキサンチンオキシターゼ(XO)になり、活性酸素(スーパーオキシド:O₂⁻・)を生成する。
❖キサンチン酸化還元酵素(キサンチンオキシドレダクターゼ:XOR)
・身体の細胞状態によって2つの酵素に分かれる
①身体の細胞環境で酸化した油が『少なければ』
⇒キサンチン脱水素酵素によって尿酸が作られる
⇒この経路では活性酸素が作られないので
⇒痛風発作のような炎症を起こさない。
②身体の細胞環境で酸化した油が『多ければ』
⇒キサンチン酸化酵素によって尿酸が作られる
⇒この経路では活性酸素を多く作るので
⇒痛風発作を起こしやすくする。
・身体細胞環境に酸化した油を増やす代表的な食事摂取例
⇒揚げ物、炒め物、スナック菓子・加工食品に含まれている植物油脂
⇒酸化しやすい油が血中に多くなると
⇒活性酸素を多く作る
⇒キサンチン酸化酵素になっていく。
❖痛風を起こす他の要因
・断食等による『糖』を取らない時間がある程
⇒脂肪をエネルギー源にするので
⇒活性酸素を作る経路のキサンチン酸化酵素になって
⇒痛風発作が起こりやすくなる。
・激しいスポーツ(筋肉を激しく使う)
⇒筋肉のエネルギー源は『糖』
⇒トレーニング前・中・後に『糖(=炭水化物)』をきちんと取っていないと
⇒つまり、『糖』が切れる(足りなくなる)と
⇒脂肪をエネルギー源にする
⇒その脂肪の中に過去に取ってきた『酸化し易い油』が沢山含まれており
⇒それが血中で増加し
⇒活性酸素を作る経路のキサンチン酸化酵素に回っていく。
⇒同様に、アルコールも炎症を起こすので
⇒活性酸素を作る経路のキサンチン酸化酵素に回っていく。
出典:左図)https://metabostudy.hatenablog.com/ 右図)薬に頼らず痛風発作が防げる!尿酸値リセット 著者:細谷龍男
出典:https://www.kango-roo.com/learning/2102/
注a)ATP-CP系:ATP-CP系は、筋内のクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、ADPにリン酸を与えることでATPを再合成するという働きを担っている。
◆核酸の代謝
・細胞の核(DNA)の成分であるプリン体が肝臓で分解され、老廃物になる。
⇒いらなくなった核酸のプリン塩基(A:アデニンとG:グアニン)は、最終的に水に溶ける尿酸となって体外に排泄される。
⇒ピリミジン塩基は捨てられずアミノ酸のアラニン等に変えられて再利用される。
・尿酸は活性酸素種を消去する『抗酸化』物資でもある。
🔳尿酸の抗酸化作用
◆血液中の尿酸
・プリン体の最終代謝物の産物。
⇒尿酸自体は水に溶けにくく(排泄に大量の水を必要としない側面もある)
⇒血中濃度が高くなる(7mg/dLを超える始めると)と過飽和になり結晶を作る。
⇒それが関節に蓄積して『痛風発作』等の原因になる。
・一方、尿酸にはビタミンCより高い(6倍程度高い)抗酸化作用がある。
⇒具体的にはヒドロキシルラジカル・OH、一重項酸素¹O₂及びパーオキシナイトライトONOO⁻(スーパーオキシド:O₂⁻・と一酸化窒素:NO・反応生成物)といった、反応性の高い活性酸素種(ROS)を消去する。
⇒また活性酸素種から生成する脂質フリーラジカル及び脂質パーオキシナイトライトONOO⁻も効率的に消去できる事が知られている。