







■知っておきたい、前立腺がんの薬物療法
熊本大学泌尿器科 助教 倉橋 竜磨 2025年9月7日 前立腺セミナー2025熊本
出典:https://www.youtube.com/watch?v=K9gfEnsbMC8


■治療の基本はアンドロゲン遮断療法
・前立腺がんは
⇒アンドロゲン(つまり男性の性ホルモンであるテストステロン)を元に増殖するので
⇒それをしっかり遮断してあげる事が非常に大事になってくる
・昔は手術(外科的去勢)
⇒両方の精巣を摘出
・現在はLHRHアナログ(内科的去勢:注射)
⇒手術と同等の効果を発揮する

・血液中のテストステロンの目標値
⇒50ng/mL未満に抑える事が大事
⇒できるなら20ng/mL未満に抑える事が理想
⇒去勢抵抗性の定義に関って来るので
⇒定期的にチェックする必要がある


■内分泌治療薬
・抗アンドロゲン薬(古典的)
⇒第一世代
・アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)
⇒現在においては中心的に使用されており、2種類ある
⇒第二世代抗アンドロゲン薬
⇒CYP(シップ)17阻害薬

■第二世代抗アンドロゲン薬の仕組み
・アンドロゲン(テストステロン)が
⇒前立腺がんの細胞の中にあるアンドロゲン受容体とくっついて
⇒それが前立腺がんの細胞核の方に入り
⇒DNAの転写というのに影響を与え
⇒がんの進展等に影響してくる
■第二世代抗アンドロゲン薬はこれを複数のポイントでブロック(阻害)してくる
・一つ目は、細胞の中に入ったアンドロゲン(テストステロン)が
⇒アンドロゲン受容体という所にくっつくのを止めてくれる(阻害する)
⇒非常に強力的に止めてくれる
※第一世代の抗アンドロゲン薬はこの段階しか効かない
・二つ目は、アンドロゲン受容体が
⇒細胞の核に入る所とか、
⇒核に入った後にDNAと結合して悪さをする所を阻害する
⇒以上3つのステップ(下図の①→②→③)で
⇒アンドロゲンに起因する前立腺がんの悪さを止めてくれる
※第一世代の抗アンドロゲン薬と大きく異なる

■CYP(シップ)17阻害薬の仕組み
・アンドロゲンとの結合ではなく
⇒アンドロゲン(テストステロン)遮断療法を行い
⇒主に止められるは
⇒下図の一番左側の精巣からのアンドロゲン(テストステロン)の分泌が阻害される
⇒一方で、男性の身体にはアンドロゲン(テストステロン)を分泌する所がいくつかある
⇒例えば、腎臓の上に有る副腎(下図三角形の部分)、前立腺そのものや、前立腺がん自体が
⇒アンドロゲン(テストステロン)を分泌する
⇒これらの所から分泌されるアンドロゲン(テストステロン)が
⇒結局前立腺がんと結合して悪さをする
・CYP(シップ)17阻害薬は
⇒身体の中で合成される経路を阻害して
⇒更に、身体の中のアンドロゲン(テストステロン)を下げる事で
⇒抗腫瘍効果を発揮する薬
⇒その過程でCYP(シップ)17(下図丸い緑)酵素が働くので
⇒この酵素をブロック(阻害)して治療効果を発揮する
※第二世代の抗アンドロゲン薬と少し効果が異なる

・各アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)の特徴
・エンザルタミドの服用時間
⇒倦怠感対策として
⇒朝食後から夕食後に変更で
⇒寝ている時間帯を活用して、比較的使いやすくなった
・アビラテロン
⇒CYP(シップ)17酵素を阻害するのでアンドロゲン(テストステロン)以外にも
⇒身体に必要なステロイドというホルモンを作るのに作用しているので
⇒これが阻害されてしまことで電解質の異常とか肝機能の異常が出てくるので
⇒それを内服のステロイドで補う必要がある

・月額各アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)の治療費用
⇒高額療養費制度の活用(以下製薬は保険適用されている)

<参考情報>
・高額療養費制度

・4回目から多数回該当
⇒医療費の負担減


注:■ 4回目以降の回数制限(Copilotの回答)
ただし、直近12か月の中で「3回」が維持されている必要がある → 古い月が12か月を超えるとカウントから外れ、4回目扱いでなくなることもある
制限なし(何回でも適用だが、間違えないように下記例を理解する事)
・例で理解する
- 2025年6月・9月・12月に高額療養費が支給
- 2026年1月 → 4回目で多数回該当(限度額が軽減)
- 2026年7月になると、2025年6月分が12か月を超えてカウントから外れる → カウントが2回に戻るため、多数回該当が解除される
出典:サブタイトル/⑤-3. 高額療養費制度~ガンと診断された時~

■抗がん剤

■タキサン系抗がん剤の仕組み
・がん細胞が分裂する際に作られる
⇒微小管に直接作用する
⇒微小管は
⇒細胞が分裂する際に必ず必要になるが、
⇒分裂の最後にこれが脱重合して消えるが
⇒これを消えないようにするのが
⇒タキサン系抗がん剤になる
・通常細胞分裂してがん細胞が増えて行くが
⇒上手く分裂しないので
⇒不完全な状態で細胞の分裂が止まってしまって
⇒そういった細胞は死滅する(下図の右下図)事で
⇒がん細胞をやっける
※内分泌療法が効きずらいタイプであっても
⇒これは効き方が全く違う形になるので
⇒それ以外のがんに効果が期待できる

<参考情報:Copilot回答>
細胞分裂(特に終期〜細胞質分裂)では、分裂のために作られた微小管の多くが「中央紡錘体(central spindle)」や「ミッドボディ(midbody)」という構造を形成し、その後ほとんどが分解されて消えます。
分裂の最後に何ができて、どう消えるのか
1. 後期(anaphase)後半〜終期(telophase)
- 姉妹染色分体が両極に到達すると、極微小管(interpolar microtubules)が中央で束になり「中央紡錘体(central spindle)」を形成します。
2. 細胞質分裂(cytokinesis)
- 中央紡錘体の中央部にタンパク質が集まり、ミッドボディ(midbody)と呼ばれる構造ができます。
- ミッドボディは、2つの娘細胞を最終的に切り離す「アブシジョン(abscission)」の足場になります。
3. 分裂完了後(アブシジョン後)
- ミッドボディは役目を終えると、
- 片方の細胞に取り込まれて分解される
- 細胞外に放出される(midbody remnant) のどちらかになります。
- この過程で、微小管は脱重合(depolymerization)して消失します。
■タキサン系抗がん剤の副作用
・好中球減少症
⇒100%起きる
⇒身体の白血球(好中球)が減少する
・重症化予防
⇒G-CSE製剤で
⇒白血球を作るのを刺激して予防する事ができる
⇒これにより入院でしか治療出来なかったが
⇒外来の投与が可能になったが
⇒抗がん剤を注射して24時間以上経たない注射できないので
⇒2回連続して通院をしなくてはいけなくなるので
⇒最近ではボディ―ポット(下図の右図)を
⇒抗がん剤投与した日にお腹に貼り付けて
⇒24時間後にG-CSE製剤が自動注入し、
⇒注入後にボディ―ポットを取り外し、捨てれば良いので
⇒通院をする必要がなくなった


■PARP阻害薬(分子標的薬)
・投与の前提条件
⇒遺伝子変異を伴う前立腺がんに対してのみ使用が認められている
※日本では下図2種類の薬が使用可能である

・PARP阻害薬が使用可能な前立腺がんの遺伝子変異
⇒BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子を持つ患者のみ使用できる
⇒両遺伝子変異を合わせて前立腺がん患者全体の18%程度
⇒これを疑われる方は遺伝子検査を推奨されている
※BRCA遺伝子変異はこれ以外に膵がん、乳がん、卵巣がんがあるので
⇒家族でこれらのがんの既往がある方(生殖細胞変異)がおられる場合は注意が必要

・BRCAというのが
⇒DNAが2本壊れた時に修復する遺伝子になる
・PARP阻害薬というのは
⇒もう一つの修復経路である
⇒DNAが1本しか壊れなかった時にそれを直す因子となる
・BRCAの変異で
⇒適切な遺伝子修復ができないという状況で
⇒PARPだけが残っていると
⇒細胞ががん化したり、進展したがんが進行するけれど
⇒もう一つの修復経路であるPARPというのも阻害してあげる事で
⇒がん細胞において、細胞を細胞死に導く事で効果を発揮する
⇒故に、BRCA変異がある場合しか効きずらい

<参考情報:Copilot回答>
BRCA と PARP阻害薬の関係(核心)
BRCA1/2 は 相同組換え修復(HRR) に必須の遺伝子です。 PARP は 一重鎖切断(SSB)修復 に関わります。
BRCA が壊れて HRR が使えない細胞に PARP阻害薬を投与すると:
- PARP阻害 → SSB が修復されない
- 複製時に SSB が DSB(二重鎖切断)へ悪化
- BRCA欠損細胞は DSB を修復できない
- がん細胞が死ぬ(合成致死)
■PARP阻害薬の副作用
・貧血(46-62%)
⇒血液を作る骨髄細胞の修復を阻害する為に起きる


・去勢感受性前立腺がん:CSPC
⇒最初の薬が効いている
・去勢抵抗性前立腺がん:CRPC
⇒最初の薬が効かなくなる
※ほとんどの方がアンドロゲン除去療法が入っている

<参考情報>




■去勢感受性前立腺がん:CSPCの治療アルゴリズム(手順)
・診断された時、患者に対してどういった薬を始めるか
⇒新規アンドロゲン遮断薬(ARSI)/抗がん剤ドセタキセルの投与の適切性(耐えられるか)を総合的に検討
・強い薬なので耐えられない場合(不適切)
⇒アンドロゲン除去療法で
⇒比較的に副作用が少ないアンドロゲン遮断療法のみとか
⇒場合によってはビカルタミド(第一世代抗アンドロゲン薬)の使用を考える
・強い薬であるが耐えられそうである場合やしっかり治療をした方が良い場合(適切)
⇒その患者の転移の場所とか転移の数によって
⇒リスク分類で分けて行く
・転移の数が多い高リスクの場合は
⇒アビラテロン(ザイティガ)を含めた4つの薬が全て使える
・低リスクの場合は
⇒第二世代の抗アンドロゲン薬の使用になってくる
※これらの治療を出来る限り継続していくが、
⇒これらの治療が効かなくなった場合、次(去勢抵抗性前立腺がん:CRPC)に示す



【ステージ分類とTNM臨床分類】





■去勢抵抗性前立腺がん:CRPCの治療アルゴリズム(手順)
・一次治療で使用された薬剤によって
⇒二次治療に使える薬剤もほぼ決まってくる
⇒これをふまえて一次治療をどうするかが大事になってくる
⇒同じ治療を同じ段階で違う治療を選ぶ事ができないので
⇒治療を選ぶ段階で
⇒後先の事を良く考えて選択する必要がある


■最初の治療(CSPC)が効いている期間と生存期間の関係
・日本から2019年度の報告

■去勢抵抗性前立腺がん:CRPCになってからの生存期間
・生存期間については
⇒最初の治療(去勢感受性前立腺がん:CSPC)が効いてくる期間とはあまり影響されない
※最初の治療をどれだけ長く効かせるが大事になってくる

■一次治療(去勢感受性前立腺がん:CSPC)から二次治療(去勢抵抗性前立腺がん:CRPC)にかけて
・アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)を切り替えた場合(下図の左図)
⇒効果は非常に限定的(4%の方しか効果がない:下図の一番右側図)


■治療効果(予想)
・治療の奏功期間
⇒ほとんどは一次治療で決まるので
⇒最初の一次治療をどれだけ慎重に決めるかが大事になってくる


■イメージとしての前立腺がん
・非常に同じ塊に見えても
⇒中の細胞は非常にバラエティーに富んだがんである
⇒実際、治療中にはこのがん細胞の組成は
⇒より複雑に変化していく
・下図の一番左側図の未治療の前立腺がんの場合
⇒紺色の細胞は
⇒アンドロゲン除去療法が効く前立腺がん細胞
⇒しかし、一部この濃茶色の細胞のように
⇒最初からアンドロゲン除去療法が効かない細胞があったりす
・治療を進めて行くと(真中図)
⇒アンドロゲン除去療法やアンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)を使うと
⇒紺色の細胞については減っていくのであるが
⇒濃茶色の細胞は残り、
⇒生き残つた紺色の細胞が変異を起こして緑色の細胞になり
⇒アンドロゲン除去療法に抵抗性というものを獲得していく
・緑色の細胞(抵抗性)が大多数を占め、濃茶色の細胞も増える(右図)
⇒去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)になる











<参考情報>

<参考情報>


<参考情報>








・新規ホルモン治療薬の薬価は非常に高い割に効果は少ない現実(第1世代:数千円と第2世代:数万円の違い)
⇒ヴィンテージ治療からアップフロント治療













