■講演2「治療選択の迷いどころ、限局がんと転移がんの狭間を探る」
井上 貴博(三重大学医学部附属病院 腎泌尿器外科 教授)

■限局ガンの2~3割が再発
・転移が発見できない

■病理学的指標(再発しやすいガン細胞)
・Gribriformといわれる
⇒顔つき悪いガン細胞
・IDCP
⇒前立腺にガン細胞がさぁっと入り込む

■全摘手術前に既に転移
・IDCPありの再発率
⇒3年後:48.6%
⇒5年後:55%

■グレード5(グリソン分類)場合でも再発が高まる因子
・断端陽性
⇒前立腺の切断部の端部にガン細部がある
・生検ガン陽性率≧47.2%
⇒生検で10本の針の内5本がガン細部あり

■グレード5の予後不良比較
・断端陽性と生検ガン陽性率≧47.2%の両方の因子を持っている場合
⇒全摘手術前に転移を起こしていると推測される



■全身MRI(DWIBS)による検査事例(保険収載)

■全身MRI(DWIBS)ならガン細胞が発見できた
・従来の画像検査:骨シンチで発見できないガン細胞
⇒限局ガンと判断していた
⇒既に脊椎に転移していたのを見逃していた
※転移部には放射線治療に関する前向き臨床試験(三重大)


■PSMAとは
・ガン特異タンパク質
⇒ガンの診断に有効になる
⇒正常の前立腺では発現しない
⇒前立腺ガンになると発現する

■PSMAに狙いを定めた放射線薬品の開発

■PSMA-PET検査
・初期病気診断をより正確に
⇒再発部位をより正確に診断
・PSMA-PETによるPSAの値<0.5未満
⇒再発の発見率:約40%
注:再発の閾値(手術:0.2,放射線:2.0)
※PSMAーPETとは前立腺ガン特異タンパク質を検出するPET検査

■事例

■放射線治療の選択肢が取れる
・ガン細胞の部位が特定できる
⇒ガン細胞の部位が特定できなければホルモン療法になる

■手術後の補助放射線療法 vs 早期救済放射線療法 ランダム比較調査
・差は無かった
⇒PSAが上昇してきたら治療するとなっているが
⇒参加者に特性が雑多(放射線治療を必要とする/しない)な為
⇒整理された患者特性で比較調査する必要がある
※このランダム比較調査は海外の事例である

<参考情報>

■生検で中・高リスクと判定された場合の病期診断


■全身MRI(DWIBS)

・全身MRI(WB-MRI/DWIBS)
⇒保険適用
※全身MRI(WB-MRI/DWIBS)が出来る施設は極めて限られている。
・PSMAーPETは保険適用ではない
⇒従来分からなかったガンが確認できる
※PSMAーPETとは前立腺ガン特異タンパク質を検出するPET検査
⇒海外で普及している
出典:出典:講演1「これだけは知っておきたい、前立腺がんの診断と治療」 成田 伸太郎(秋田大学医学部附属病院 泌尿器科 准教授)
■転移ガン
・従来は全身治療=ホルモン治療の一択だったが
⇒より詳細に分析して適切な治療を検討

■転移・再発ガンは多様な集団
・自分がどのマトリクスに位置にいるかを知る必要がある

■去勢抵抗性ガンになる確率(左図)と生存率(右図)比較
・紫色:初診時から転移がある人
・根治治療後オリゴ(少数ガン細胞)転移と
⇒根治治療後多数転移では
⇒大きな差がある

■根治を目指せる人の可能性も(?)
⇒根治治療後オリゴ(少数ガン細胞:1個~2個)転移の人

■DNA解析
・WNTシグナルやDNA修復機能遺伝子の変異
⇒骨転移や臓器転移が多い

■転移部位への局所療法の意義
・転移の少ない人
⇒積極的に放射治療・手術を行う動きが出ている
⇒ホルモン療法の開始時期を遅らせる

■転移数が少ない(初診時転移あり)人
・従来はホルモン治療の一択であったが
⇒前立腺に局所的放射線治療による延命効果が期待できる



