出典:https://www.sankei.com/article/20260915-3EGRUKERPZLQVCPXAGZE5WCGNE/ 産経新聞 2026年9月15日

今回は、Ⅱ期前立腺がんで手術をした50代後半の男性の今後の治療について、男性の妻からの相談です。再発が不安だと言い、適切な方法を模索しています。がん研有明病院の副院長で泌尿器科部長の米瀬淳二医師が答えます。
手術後に悪性度のスコアが上昇?
令和4年、会社の健康診断でPSA(前立腺特異抗原)値が前立腺がんの疑いのある4と判明。徐々に上昇し7年7月に7.2となり、10月に受けた前立腺生検で針十数本中3本から、がん細胞が見つかりました。悪性度を示すグリーソンスコア(GS)は7でした。今年2月、ロボット支援下で前立腺の左右を走る勃起神経のうち片側を温存して前立腺を全摘する手術(神経温存前立腺全摘除術)を受けました。
「前立腺の手術後は尿失禁や性機能障害が問題になりやすいですが、早期がんで勃起神経や周囲組織を丁寧に温存できると、こうした術後の障害が減り生活の質を保ちやすくなります」
──術後の病理検査で腫瘍は前立腺の片側の2センチ大、リンパ節転移や遠隔転移はなく、病期はⅡ期。ただGSは9に上がりました。主治医は問題なく手術できたと言いますが、こんなことはあるのですか?
「GSは、採取したがん組織の構造を病理医が顕微鏡で調べて判定します。術前は針で採取できた前立腺の一部だけを見るため、術後の病理結果でスコアが上下することはあります」
──分かりました。
全摘後にPSA値が測定される例も
「術後のPSA値は?」
──術後1カ月は0.059、3カ月後0.033、5カ月後は0.032です。
「術後およそ6週間で血液中のPSAは排出され、最低値となります。現在PSA値は0.03と低値を維持しており、再発していないと判断します。ただ術後の患者さん全てに言えることですが、半年後にPSA値が低値であっても、もしも体内に小さながんが残っていた場合、PSA値は徐々に上昇していくので、今後も慎重にPSA値の経過を見る必要があります」
──前立腺を全摘するとPSA値はゼロになると、何かの情報で見ました。夫の場合、どうして数値が測定されるのでしょうか?
「前立腺を切除したのに0.2以下でPSA値が測定できる原因は、尿道の周りなどにがんではない良性の前立腺の組織が少し残っている▷前立腺の周りに染み出した小さいがんが残っている▷リンパ節や骨などに画像にうつらない小さな転移がある─などのパターンが考えられます」
数値が0.2超なら追加治療検討を
──PSA値がどれくらいになったら治療をすればいいですか?
「PSA再発の基準は0.2です。これを超えるとPSA値は上昇し続けることが多く、良性の前立腺組織の残存では説明しにくいためです。治療開始の時期は患者さんの年齢やがんの悪性度、PSAの上昇速度などにより総合的に判断します。もしも持続的にPSA値が0.2を超えれば、50代と若く、がんの悪性度も高いので、追加治療として、根治性の期待できる救済放射線療法を早めに受けることをお勧めします。ちなみに放射線療法はPSA値0.5以下で始めることが推奨されています。また悪性度の高いがんではホルモン療法併用の有効性も報告されていますので、もしも再発した場合には検討してください」
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