DWC3-3.身元保証人が担わされてきた役割を分解する~「身元保証」の壁と社会的解決への道筋~「金銭債務の保証」「緊急時の連絡先」「医療の意思決定支援」「死後の対応」

出典:https://www.dlri.co.jp/report/ld/556150.html  2025.12.19 後藤 博

4. 社会的解決への転換

「身元保証」の壁を打破するためには、民法上の扶養義務や従来の契約慣行が、現代の家族形態に追いついていないことを直視し、「家族依存」から「社会保障」へと舵を切る必要がある。

解決に向けては第一に、身元保証人が担わされてきた役割を分解することである。

「金銭債務の保証」

「緊急時の連絡先」

「医療の意思決定支援」

「死後の対応」

これらを一人の親族(または一企業)に丸投げするのではなく、機能ごとに社会的な代替策を講じる視点が求められる。

【注釈】

  1. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2024(令和6)年推計」。同推計では、2050年には全世帯の44.3%、高齢者世帯の半数近くが単独世帯になると予測されている。
  2. 総務省行政評価局「身元保証人等に関する行政評価・監視結果報告書」(2022年3月)。同報告書では「親族がいても疎遠等の理由で頼れない者」も支援が必要な層として定義している。
  3. 総務省行政評価局「身元保証人等に関する行政評価・監視結果報告書」(202年3月)を参照。
  4. 厚生労働省医政局医事課長通知「身元保証人等がいないことをのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(2018年4月27日 医政発0427第2号)。
  5. NHK「クローズアップ現代」等の報道によれば、表向きは「満床」などの理由で断られるが、実際には保証人不在がネックとなっている事例が報告されている。また、厚生労働省の調査「身元保証人等がいない場合の入院・入所サポートのあり方に関する調査研究事業」においても、保証人不在が入退院調整の遅延要因となっている実態が報告されている。
  6. 日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づく生存権の侵害に該当するとの指摘がある。
  7. 独立行政法人国民生活センター「身元保証等高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブル-『解約できない』『返金されない』などの相談が増加-」(2024年版)より。
  8. 現在、身元保証事業を直接規制する法律はなく、民法の契約自由の原則に委ねられているため、行政による監督権限が及ばない空白地帯となっている。
  9. 神奈川県横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」。2015年より開始された、所得制限を設けたうえで葬儀・納骨を安価に引き受ける自治体独自の事業。
  10. 東京都豊島区「終活あんしんセンター」。2018年開設。専門相談員を配置し、適切な民間事業者や専門家への橋渡しを行う相談支援モデル。
  11. 一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会: 2025年8月に設立された、身元保証等を行う事業者による日本初の業界団体。国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」に準拠した認証制度の構築や適正運営の促進を目的とする。特筆すべきは、会員事業者が経営破綻等で業務継続が困難になった際、他の会員が業務を引き継ぐ「補填・引継ぎ事業」を掲げている。これまで課題とされてきた「契約者の保護」に対する民間側からの具体的な解決策として期待されている。

■「死後の対応」

⑤-3-5.預託金なし「おひとりさま」終活支援に保険 東京海上日動が全国展開&『死後事務委任契約』

■おひとりさま終活に向けた主な仕組み

・約定履行費用保険:東京海上日動などが提供する、高額な預託金を事前に用意しなくても、月々の保険料や掛け金で火葬や死後事務の実費をカバーできる新しい枠組みです。

【Google AI による概要】

おひとりさまの終活保険とは、身寄りのない単身者が自身の死後の葬儀費用や死後事務手続きの資金を準備するための少額短期保険や生命保険・信託の仕組みです。

以下の出典:https://www.asahi.com/articles/ASV9J1GLZV9JULLI006M.html 朝日新聞 2026年9月19日

 東京海上日動火災保険は8月から、身寄りのない高齢者が、預託金を準備しなくても安心して「終活」を一任できるサービスを支援するための保険の全国展開を始めた。

 単身の高齢者が病気になったり、孤独死したりしたときに備えた「終身サポートサービス」を受けるには、一般的に高額な預託金が必要になるが、保険の仕組みを使うことでサービスを受けやすくする狙いがある。

 東京海上は昨秋から、愛知県の知多半島にある4市5町(半田市、常滑市、東海市など)で単身の高齢者らの支援活動を行っている知多地域権利擁護支援センターと提携し、この仕組みを試験的に導入している。

 センターは、単身の中高年住民を対象に「くらしあんしんサポート事業」を展開。基本プランでは、定期的な見守りや入院・施設入所支援に加え、死後の火葬も約束する。

 利用者は、加入時に預託金を支払う必要はなく、年齢・性別ごとに設定された月額利用料をセンターに支払う。40歳以上であれば加入でき、60~74歳で契約すれば月々の保険料相当額は終身で1千円台という。オプションで納骨や遺品整理などのサービスも追加できる。

 一方、センターは東京海上と保険契約を結ぶ。利用者が亡くなると、火葬などにかかった実費を保険金としてセンターから東京海上に請求する。

 60~74歳でサービス契約した利用者の場合、センターが東京海上に支払う一人あたりの保険料は、終身で月1千円台から(性別や支払い限度額による)という。

 東京海上はこの仕組みを全国展開している。一般社団法人「全国権利擁護支援ネットワーク」と連携し、加盟する180以上の事業者と保険契約を結べるようにした。東京海上の担当者によると、サービスの拡大に向け、厚生労働省や全国の社会福祉協議会などとも意見交換しているという。

 独身、離婚、死別などで一人暮らしをしている高齢者がいる世帯数は933万(2025年)に達する。死後手続きを含めた終活を任せられる「終身サポートサービス」のニーズは高まり、事業者は400社を超え、6万~10万人が利用しているとされる。

 一方で、高額な預託金をめぐるトラブルも相次ぐ。頼れる身寄りがなく、南関東で一人暮らしをする70代女性は2年前、先行きが不安になり、民間の終身サポートサービスと契約。入会金や年会費、入院入所の手続き支援や死後事務契約の預託金などとして計150万円を支払った。今年になって解約を申し出たところ、50万円分の返金に応じてもらえなかったという。

 国民生活センターに寄せられた終身サポート契約にまつわる相談件数は24年度に421件、25年度は406件と、16年度に比べ3倍ほど増えている。26年度も年間400件前後のペースで相談がある。

出典:https://www.asahi.com/articles/ASV9J1GLZV9JULLI006M.html

■約定履行費用保険:「おひとり様」

【Google AI 概要】

画期的なポイントや仕組みの概要は以下の通りです。

◆従来の課題と新制度の違い

従来の「終身サポートサービス(死後事務契約など)」では、本人が亡くなった後の火葬代や遺品整理費用として、数十万〜数百万円の「預託金」を事前に事業者に預ける必要があり、これが経済的な壁やトラブルの原因になっていました。

新制度では、この預託金を「保険(掛け金)」に置き換えることで、初期費用の負担をなくしています。

◆仕組み(ビジネスモデル)

個人が直接保険会社と契約するのではなく、終活支援を行うNPO法人や一般社団法人などの「事業者」と「東京海上日動」が保険契約を結ぶ形をとります。

・利用者の負担:まとまった預託金は不要。毎月の見守り・サービス利用料に加え、年齢に応じたわずかな掛け金を事業者に支払います(例:60〜74歳で契約した場合、保険料相当額は終身で月1,000円台〜)。

・事業者の役割:利用者から集めた掛け金を、保険料として東京海上日動に一括して納めます。

・もしもの時:利用者が亡くなった際、事業者が火葬や手続き(死後事務)を行い、そのかかった実費を東京海上日動に「保険金」として請求して補填します。

◆注目される特徴

・健康状態の告知が不要

通常の生命保険と異なり、持病や健康状態の告知義務がないため、高齢者や医療リスクを抱える方でも加入しやすい仕組みになっています。

・全国展開へ拡大

東京海上日動は、一般社団法人「全国権利擁護支援ネットワーク」等と連携し、この仕組みを全国の加盟事業者に展開しています。

「預託金の持ち逃げや倒産が不安」「まとまったお金がないけれど、死後の手続きを誰かに頼みたい」というおひとり様の不安を解消する、これからの多死社会・単身社会に適した先進的なセーフティネットとして注目を集めています。

出典:⑤-3-5.預託金なし「おひとりさま」終活支援に保険 東京海上日動が全国展開&『死後事務委任契約』

<参考情報>

全国権利擁護支援ネットワーク

出典:https://asnet-japan.net/

ライフエンディングに関する保険オンライン説明会

出典:https://asnet-japan.net/schedule/lifeending/

■「身寄りのない高齢者」を介護施設等で受け入れるときの主なポイント

令和 6 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)
「介護現場における身寄りのない高齢者等に対するサービス提供の実態にかかる調査研究事業報告書」付録

出典:https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/2504_mhlwkrouken_report_136_2.pdf 令和7年 3 月 株式会社日本総合研究所

1.本資料の背景と目的

平成 29 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「介護施設等における身元保証人等に関
する調査研究事業」において、介護施設等が身元保証人等に求める役割等の実態を調査した
結果が公表され、介護施設への入所時に本人以外の署名を求めている施設は 95.9%を占めて
いることが明らかとなりました。

その結果を踏まえ、国は、平成 30 年 3 月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議
において、「介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基
準省令においても、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできず、入院・入所希望者
に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」旨の周
知を行っています
。

加えて、今後は単身世帯の増加や、長寿化によって、高齢期の暮らしを身近で支えてくれる
人がいない、いわゆる「身寄りのない高齢者」が増えていくことが予想されます。今はそのような
利用者がいらっしゃらない施設でも、今後は何らかの形で身寄りのない方に対応する機会が生
じると考えたほうがよいでしょう。

日々の生活は、多種多様な問題解決を必要としています。特に高齢者については、年金受
給などの手続き、日常的な金銭管理、救急車への同乗や入退院時の手続きや世話、死後事務
などにおいて、身寄りのない場合に困難が生じることがこれまでの調査等でわかっています。

介護事業者・従事者は、業務の中でこれらの困難を把握することがあり、業務の範囲を超える
けれど見過ごせないという悩みを抱えることが少なくありません。また、実際に困難が生じてから
の対応は時間に猶予がないこともあり、そのような場合は施設の運営に支障をきたす可能性が
あります。一方で、身寄りのない高齢者を介護施設等で受入れるにあたっては、入所から退所
までの各段階において、どのように対応すべきかわからないことがあるという指摘もあり、介護事
業者・従事者に求められる場面ごとの対応について、参考となる対応策を示すことが求められて
います。

そこで、まずは現状について理解し、あらかじめ施設としての対応を検討しておくことができる
よう、本資料を作成しました。

■「身寄りのない高齢者」とはどのような人か、どのような困難を抱えうるか

(1) 「身寄りのない高齢者」の定義

実は「身寄りのないこと」の定義は明確ではありません。施設においては、入所時に本人以外
の署名を求めたり、緊急連絡先を求めるなどして、いわゆるキーパーソンを確保していることが
多いと思われますが、
実際は疎遠であったり、キーパーソンも高齢である、遠方に住んでいる等
によって、対応ができないことがあります
。

今回の調査では、高齢者の入所する施設では「身寄りがない(親族等の支援が難しい)」と受
け止めていることが明らかになりました。

① 保証人や緊急連絡先となる親族等がいないこと
② 保証人や緊急連絡先となる親族等がいても、連絡がつきにくいこと
③ 保証人や緊急連絡先となる親族等がいて、連絡はつくものの、(入院などの際に)
来ることができないこと
④ 保証人や緊急連絡先となる親族等がいても、支援が期待できない、あるいは対応を拒
否していること

(2) 「身寄り」に関する今後の見通し

2020 年時点の 50 歳時未婚率は男性が 28.3%、女性が 17.8%であり、20 年前に比べて男
性は 16 ポイント、女性は 12 ポイント増加しています(2000 年及び 2020 年国勢調査)。未婚率
の上昇に加え、子がいない夫婦の割合もやや増加傾向にあり、子がいない高齢者が急増する
ことが見込まれます。婚姻の傾向などをもとに推計すると、子がいない高齢者は 2024 年の 459
万人(人口の 12.7%)から
、2050 年には 1,032 万人(同 26.5%)へと増加することが見込まれ
ます。

未婚者の場合や、夫婦でも子がいない場合には、法定相続人になりうる甥や姪を頼りにする
こともありますが、今後はそういった親族のいない人も増える見通しです
。三親等内の親族がい
ない高齢者の割合は 2024 年の約 8%から 2050 年には 11%超に増えるとみられ、その数は 286
万人から 448 万人へと5割以上増加する見通しです。甥・姪や遠い親戚に連絡をとってなんと
か保証人になってもらう、という方法が、
今後は難しくなってくる可能性が高いといえます
。

(3) 「身寄り」が果たしてきた役割

①身元保証や身元引受とその内容

入所施設等が保証人や引受人に求める役割は、これまで様々に整理されています【注1】。
少しの違いはありますが、保証人・引受人に求められる役割はおおむね以下のことに集約されま
す
。

1 緊急の連絡先
2 入院費・施設利用料の支払い代行
3 本人が生存中の退院・退所の際の居室等の明け渡しや、退院・退所支援
4 入院計画書やケアプランの同意
5 入院中に必要な物品を準備する等の事実行為
6 医療行為(手術や検査・予防接種等)の同意
7 遺体・遺品の引き取り・葬儀等

注1 .厚生労働省「成年後見はやわかり」HP より(https://guardianship.mhlw.go.jp/)

②施設入居・入所中、身寄りのない方の生活支援に困難が生じる場面

今回の調査では、現在施設に入居・入所している方について、身寄りがないために発生する
支援やそれにかかる時間を明らかにしました。調査の結果、発生頻度が高く、要する時間も長
い支援としては通院支援が挙げられていました。それ以外に、多くの施設で発生していたのは、
介護保険給付サービス以外の支援(片付け、嗜好品の買い物など)、救急車への同乗、行政手
続きの支援でした
。

死後事務の対応は、発生は少ないものの、支援にかかる時間は多いことがわかりました。

身元保証人や身元引受人に求められる役割は入院と死後の場面への対応でしたが、施設で
の生活の中でも、「身寄り」がいないことによって困難が生じています。

通院支援に関しては、移動手段の提供や院内での付き添いにかかる時間的な負担、また何
か事故があった場合のリスクに関する実務的・心理的な負担が生じます。

死後事務については、亡くなった後の火葬までの時間が限られている中、親族等への連絡
や自治体への連絡などを行わねばならず、負担が重いものといえます
。さらに個人によって火
葬・葬儀納骨の意向は異なりますし、その後の財産処分(施設利用料や医療費の支払い、遺留
品の取り扱いなど)も個人によって様々ですので、親族等がいない場合にこれを施設が代わり
に行うことはかなり難しいといえます
。そのため、本資料の「3.身寄りのない方の支援に備えて
施設ができること
」以降を活用し、本人の意思決定を促し、地域との連携によって解決するため
の体制を整えておくことがよいでしょう。

判断能力が不十分な方については、成年後見制度を利用することによって、保証人・引受人
がいる場合と同様に入居・入所を受け入れる施設も多くありますが、後見人等のできることには
限りがあります。
(図表 3 参照)

<参考情報>

⑤-3-4.「死んだはずの人」がATMで振り込み?高齢者を食い物にする「身元保証サービスの闇」~甚野博則著より転記~ & 『成年後見制度』を悪用し爆益…後見人の合法詐欺スキームに注意せよ~不動産Gメン滝島~ &『家族信託』によるオーダーメイドの財産管理

3.身寄りのない方の支援に備えて施設ができること

現在は、入居・入所時点で保証人・引受人を確保することによって、支援に困難が生じないよ
うにしている施設においても、たとえば保証人・引受人が入居・入所者よりも先に亡くなる、要介
護状態になるなど、長期の関わりの中で親族等から期待したような支援が受けられない場面に
直面することがあります。少子化・高齢化・長寿化といった背景をふまえると、いつでも来られる
家族がいることを前提とするよりも、利用者の親族等が支援を提供できないことをあらかじめ想
定しておくべきでしょう
。

静岡県熱海市 『「身元保証等」のない方の入院・入所ガイドライン』には、次のようなフロー
チャートが掲載されています。このようなものを参考に、施設での対応方針及び各段階での対
応策を定めておくことも有用です
。

施設において、検討するポイントを以下のようにまとめました。

(1) ご本人に関する情報整理

身寄りがない、あるいは今後親族等の支援が期待できなくなりそうな方について、特に以下の
情報を取得しておきましょう
。入居・入所前に行うことは難しいものも含まれますが、自治体の担
当部署や地域包括支援センター等と連携し、できる限り多くの情報を得ておくことが、その後の
対応に役立つと考えられます
。

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/2504_mhlwkrouken_report_136_2.pdf