出典:https://gendai.media/articles/-/171754 2026年10月17日 現代ビジネス
【Google AI概要】
豪雨の後に大地震が起きることで発生する複合災害は、地中に大量の水が溜まった地盤が弱まることにより、主に3つの甚大な被害をもたらします。
豪雨後の大地震が引き起こす3つの複合災害
- 斜面崩壊の急増
- 豪雨によって地中に水分が染み込み、土壌の強度が低下しています。そこに地震の揺れが加わると、わずかな振動でも大規模な土砂崩れや斜面崩壊が発生しやすくなります。
- 液状化現象の深刻化
- 地下水位が上昇し、地盤が水分を多く含んだ状態(飽和状態)で地震に見舞われると、砂利や砂の結合力が失われやすくなります。その結果、通常時よりも低い震度や短い揺れでも激しい液状化が起きる危険が高まります。
- 治水インフラ(堤防や石垣)の損壊
- 継続的な大雨によって地盤や堤防の内部に空洞や浸透が生じ、すでに構造が脆くなっています。この状態で地震の衝撃を受けると、河川の堤防決壊やダム・用水路などの治水施設が連鎖的に損壊します。
2026年(令和8年)の8月から9月にかけて、千葉県を中心に豪雨災害が相次いだ。まず、亡くなられた方々に深く哀悼の意を表すとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞い申し上げる。
相次いで襲った豪雨は、降雨の性質も被害のメカニズムも異なる「2つの異質な脅威」であった。8月13日から14日にかけて発生した「千葉豪雨」は、極めて強烈な短時間集中型であった。千葉市中央区で観測史上1位となる1時間雨量115.0mm、12時間で348.0mm、24時間で367.0mmを記録。線状降水帯の形成によって「バケツをひっくり返したような」という表現すら生ぬるく感じるほどの猛烈な雨が、狭い範囲に一気に降り注いだ。
■豪雨後に大地震が襲いかかるリスク
「水分を極限まで含んだ地盤」に対して強烈な地震動が加わった場合、単独の地震や豪雨では考えられないレベルの破壊的な複合被害が懸念される。具体的には、以下の3つの災害が顕在化する可能性が高い。
1. 斜面崩壊(崖崩れ)・盛土崩壊の多発
通常の乾いた斜面であっても、大地震時には崖崩れや盛土の崩壊が発生することがある。さらに、地中が地下水で満たされている状態では、土自体の重量が水の重さによって大幅に増加することなどもあり、各地で斜面崩壊(崖崩れ)が発生することがある。

過去の事例を見ても、2018年の北海道胆振東部地震では、厚真町を中心に大規模な斜面崩壊が同時多発的に発生し、各地の山肌を露わにし、山の下にあった住宅地を襲い甚大な被害が生じた。この原因には、地震動や地質的要因に加え、直前に台風が通過し雨水が含まれていたことが被害を拡大させたと指摘されている。
大きな崖や斜面がない土地でも、谷筋を埋めて造成された「谷埋め盛土」などの盛土造成地では要注意だ。崖崩れに加え、盛土地では大規模なすべり現象である「滑動崩落」が懸念される。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)でも、盛土宅地の崩落による甚大な被害が発生した。その後の地震においても、盛土造成地は周囲の自然地盤に比べて家屋被害が大きくなる傾向が報告されている。大規模な盛土については、各自治体が「大規模盛土造成地マップ」として公表しているので、ぜひ参考にしてほしい。
小規模な盛土については、地図を読むスキルは要るが昔の地図と比較、事業者や自治体で造成等の記録の入手、近隣地域での聞き取りなどで判明する場合がある。
■「液状化」と「側方流動」のリスク
2. 低地における液状化現象と側方流動の深刻化
湾岸部や河川沿いの低地、旧河道(昔の川の跡)などでは、地盤の液状化現象が深刻化する。液状化は、地下水位が浅く、ゆるい砂質地盤のある場所に大きな揺れが加わることで地盤が液体状になり、建物の沈下や傾斜等を引き起こす現象だ。家屋が傾き土中に埋まるだけでなく、道路や地下の上下水道管といったインフラも甚大な被害を受ける。
この液状化の発生リスクは、地下水位の深さに大きく依存する。地下水位が地表に近ければ近いほど発生しやすくなり、被害も甚大になる。
地表の冠水が引いたとしても、豪雨によって地下水が地表すれすれまで上昇している状態では、通常なら液状化を起こさない震度や、比較的強度の高い砂質土層であっても液状化が発生する危険がある。

さらに深刻なのが「側方流動」のリスクだ。液状化した地盤が、わずかな傾斜に沿って、または河川・水路の護岸を押し出すように横方向に滑り出す現象である。2024年の能登半島地震においても石川県内灘町や新潟県新潟市などで発生し、敷地境界ごと数メートルも移動して土地を引き裂いた。その復旧は土地境界の確定を含め、極めて長期間を要してしまう。
■「崩れる可能性がある」という認識
3. 治水インフラ・擁壁の損傷による被害拡大
9月21日の台風25号では、印旛沼で堤防の決壊が発生し、復旧工事が施されている。河川堤防においては、今後の豪雨発生時、堤防の決壊や水を超えることには至らずとも、水位が高い状態のまま大地震が発生する事態も想定しなければならない。
このタイミングで大地震が発生した場合、高水位の水圧に耐えきれず河川堤防が決壊し、都市部が甚大な被害を受ける可能性がある。決壊がなくとも、堤防の中や下から水が漏れ出てくるような現象もある。さらに下流部において津波が襲来した場合、堤防が健全であれば防げたはずの波を止められず、破堤や浸水が劇的に拡大する恐れがある。

くわえて、土砂災害や液状化によって避難ルートが寸断された状態で河川氾濫や津波が発生すれば、迅速な避難が阻まれ、多くの人命に関わる事態へ直結してしまう。
農業用のため池が多い地域では、満水時に地震で堤防が決壊した場合、下流域の宅地に甚大な被害をもたらす懸念がある。いつ造られたか分からない古いため池も存在するため、近隣にため池がある場合には自治体の「ため池ハザードマップ」などを事前に確認しておくことが望ましい。
また、台風25号では東京都目黒区で古い石積み擁壁の崩壊が発生した。過去の豪雨や大地震においても、同様の擁壁の損傷・倒壊は多数繰り返されている。関東各地の傾斜地にある昔ながらの住宅地には、こうした古い擁壁が無数に存在する。豪雨後に地中に水が溜まり、適切に排水しきれていない状況で大地震が起きれば、倒壊のリスクは跳ね上がってしまう。
擁壁のある光景が日常になりすぎていると、「崩れる可能性がある」という認識を持ちにくい。擁壁を所有している場合は、大きな地震や豪雨の後のセルフチェックに加え、定期的な点検や、異変があればすぐに専門業者へ相談することが不可欠である。
■複合的な災害への対策は?
これら複合的に発生する災害への備えとして強調したいのは、何を差し置いても「自分の住まいで想定される被害が何であるか」を具体的に把握しておくことだ。
複合的な災害であっても、まずは地震、あるいは豪雨によってどのような被害が想定され、どのタイミングで避難が必要になるかを個別に考えておくことが、結果的に複合災害に対する有効な備えとなる。
「うちは高台だから大丈夫」「川から離れているから安心だ」という単純な思い込みは危険である。高台であっても、そのへりであれば土砂災害、、擁壁崩壊盛土の上であれば滑動崩落や被害増大のリスクがあり、周囲より低い土地であれば内水氾濫のリスクが潜んでいることがある。
2026年8月の千葉豪雨、そして9月21日の台風25号。この2つの巨大な水害は、千葉県や神奈川県の大地に対してあまりにも大きな傷痕を残した。しかし、私たちが本当に恐れなければならないのは、目に見える濁流や浸水が去り、人々の記憶と警戒心が薄れかけた頃にやってくる「次なる災害」だ。
近年は「災害は忘れたころにやってくる」どころか、「災害は忘れぬうちにやってくる」「覚えがなくともやってくる」時代へと突入している。繰り返される被災、そして豪雨と地震の複合災害から、どうか我が家と家族を守ってほしい。
国や自治体によるハード面の対策や消防力の向上は進められているが、発災直後にすべての命を公的に救助することは現実的に不可能だ。適切な「公助」の拡充は必須だが、防災の基本はまず「自助」「共助」であり、その不足を公助で補うものだ。我が家で命が助かっていなければ、救助を受けることもできない。何はともあれ、「なんてったって自助」が基本中の基本であり、決して忘れてはならない鉄則である。
防災とは、ただ避難リュックを揃えることではない。自分の住む地域や我が家に「最悪の事態が起きたらどうなるか」を想定し、立地、家の耐震性、階高や階数、そして家族構成を踏まえて先手を打つことにほかならない。今回の出来事が、その鉄則を再確認する機会となることを強く願っている。
■■「1時間115ミリ」と「2週間止まらぬ湧水」…千葉を襲った異質な豪雨と「複合災害」の恐怖
■2026年、千葉県を襲った2つの異質な豪雨とは
2026年(令和8年)の8月から9月にかけて、千葉県を中心に豪雨災害が相次いだ。まず、亡くなられた方々に深く哀悼の意を表すとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞い申し上げる。
相次いで襲った豪雨は、降雨の性質も被害のメカニズムも異なる「2つの異質な脅威」であった。8月13日から14日にかけて発生した「千葉豪雨」は、極めて強烈な短時間集中型であった。千葉市中央区で観測史上1位となる1時間雨量115.0mm、12時間で348.0mm、24時間で367.0mmを記録。線状降水帯の形成によって「バケツをひっくり返したような」という表現すら生ぬるく感じるほどの猛烈な雨が、狭い範囲に一気に降り注いだ。

このとき主として生じたのは、都市部の排水処理能力を瞬時に突破する内水氾濫による冠水やアンダーパスの水没、中小河川の急激な氾濫といった「瞬発的な都市型水害」であった。
一方、9月21日に接近した台風25号に伴う豪雨は、全く異なる牙を剥いた。1時間あたりの最大雨量自体は習志野市で33.5mmなど、8月ほどの突出したピーク強度は見られなかったものの、台風の接近前から途切れることなく雨が降り続いた。その結果、21日までの48時間降水量は県内18観測地点のうち14地点で観測史上1位を更新する「長時間・積算雨量型」の長雨となった。
9月の月降水量は関東地方南部を中心とする気象台等の12地点で最多となった。この長雨は、印旛沼では堤防の決壊や高崎川の氾濫による浸水を引き起こしただけでなく、房総半島や神奈川県の三浦半島など各地で深刻な土砂災害を多発させ、人的被害や交通インフラへの大きな被害をもたらした。
■「複合災害」のリスク
10月を迎えた現在、台風25号の通過から2週間ほどが経過しているにもかかわらず、筆者の住む松戸市周辺では異例ともいえる現象が目撃されている。台地斜面や低地のへりにおいて、いまだに衰えることなく地下からの湧水がコンスタントに湧き出し続けているのだ。
通常であれば、大雨が止んで数日も経てば台地からの地下水の吐き出しは沈静化に向かう。事実、8月の千葉豪雨後の観測では、降雨後4日ほどで湧水は収束へと向かっていた。しかし台風25号は、接近前から雨が続き、通過後も追い打ちをかけるように雨が降り続いた。その結果、地中に極めて大量の水が滞留し続け、2週間以上が経過してもなお、場所によっては地盤に多量の水を含んだ状態が解消されていないのである。
近年は「気象の極端化」が懸念されており、これは多雨だけでなく少雨も含めての傾向である。「降るときにはとめどなく降る雨」は、浸水や土砂災害といった直接的な豪雨災害だけでなく、目に見えにくいもう一つの脅威を孕んでいる。それが、豪雨の後に大地震が襲いかかることで被害が飛躍的に拡大する「複合災害」のリスクである。